【理想の老後の暮らし方は?】


今日は老後の日らしいので、いつも何らかの日があるんだね…

自分が願う老後の話を。


長いですよ真顔

そして真面目だ。





まだ俺が介護も送迎もやってなくて
完全専業主夫だった頃の話。

仕事から帰ってきたクソヲタRちゃんが、
はじめて来た利用者のばーちゃんの話をしてくれた。


施設にはじめて来たそのばーちゃんは、認知がかなり進んでて、
話すことが支離滅裂だったり、意識が過去と現在を行ったり来たりして突然自分が子供になっちゃったりする人らしかった。

そのばーちゃんが、「○△(地名)に帰れる?送ってくれる?」ってなんども聞いてくるそうだ。

○△というのは、施設からは結構遠い場所で、しかもばーちゃんちの現住所とかでもない場所だった。

Rちゃんが、
「その場所に何かあるの?」
と話を聞いてやっていると、
○△はばーちゃんの実家がある(あった)場所で、
女学校がどうの、紡績工場がどうの、と色々話をしてくれたらしい。

だが、今はその場所には女学校も紡績工場もすでにない。

そもそもばーちゃんが帰りたがってる○△には、もうばーちゃんの親族は誰も住んでいない。

たぶん若い頃の思い出がいっぱい残ってる場所なんだと思う。

Rちゃんが、
「ちゃんと送ってあげるよ。連れて行ってあげるよ」って言ったら(もちろん本当には連れていけない)、ばーちゃんは泣きだしたそうだ。

「ありがとうね、ありがとうね、うれしい、うれしい」
って言って、Rちゃんの手を握って泣いた。

Rちゃんは、自分がついた嘘でばーちゃんが喜んじゃったことが心苦しくて、やるせなくなってしまったらしい。

ぬか喜びさせたっていう罪悪感と、ばーちゃんに対する痛ましさ。
握ったばーちゃんのしわしわの手とか、きっとあっただろう楽しかった記憶や哀しい歴史とか。
昔ばーちゃんがそこで過ごした青春の日々とか、老いた今、そこに帰りたいって思うような現状とか。

そういうのを想ったら、胸が苦しくなっちゃうんだよ、あいつは。
俺には素っ気ないけど、本当は優しいやつだから。
 

ばーちゃんはその後ちょっとうたた寝して、
起きたらもう、
Rちゃんと話した○△の話も、女学校の話も紡績工場の話も、ぜんぶ忘れちゃってたらしい。

人間は、忘れられるから生きていけるって何かに書いてあった。
悲しいことぜんぶ覚えてたら生きていけないんだって。

これからもばーちゃんは、思い出すたびに何度もRちゃんに
「○△に帰れる?送ってくれる?」
って聞いてくると思う。
そのたびにRちゃんは、連れて行ってあげるよって嘘をつく。

認知症の人に対しては否定をしてはいけない。
そうだね、大丈夫だよって肯定してあげなきゃいけない。
でもその肯定は、Rちゃんにとっては嘘になるわけで。

俺は、その一瞬だけでもばーちゃんが幸せになれたなら、Rちゃんがついた嘘は悪いことじゃないと思ってる。

けど、Rちゃんはたぶん、
嘘をつくたびに傷ついて、ばーちゃんの手を握って、かなしそうに笑うんだろう。


俺も、客が喜ぶ嘘なんて数え切れないくらいついてきたけど、
それは、Rちゃんがばーちゃんにつく嘘みたいに、悲しい嘘じゃなかった。

Rちゃんはばーちゃんが可哀想だって言ったけど、
俺には、そう言ったRちゃんのほうが可哀想に見えた。



俺が将来ジジイになって、もしボケて介護施設とかに入ったら、
足腰立つうちは男女問わず可愛い職員を口説くつもりだ。
「ワシは若い頃スーパーイケメンでモテまくったんじゃぞ」とか言って。

そのうちヨボヨボになって動けなくなったら、Rちゃんとこに帰りたいって言うかも知れない。
その時に、ウソでも、Rさんとこに連れてってあげるよって職員に言われたら、俺はきっと嬉しい。

それが嘘でもさ、そう言ってほしい。

それとも。
もうめんどくせーから一緒に入るか、老人ホーム。
そうすれば、
「やぁねKおじいちゃんは、Rおじいちゃんなら隣のお部屋にいるでしょう?」
って笑って言ってもらえるんだろう。


俺とRちゃんは将来を約束したことなんてないけど……
まあそんな未来も悪くはないかな、って思わない?




これ、愛の告白。


だからRも、
そう思ってくれていたら、嬉しい。






照れくさいからやっぱ消そうかな笑






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