火葬場の予約が取りにくい。


 義母が亡くなった時は6日間待った。


義父の時は7日間。


その間、

 遺体は葬儀場の霊安室に安置される。


費用は一日につき、

税込一万千円。




懐が、地味に痛い。


……


母に、その話をすると、

こう言った。


『昔は亡くなった翌日がお通夜で、

翌々日が葬儀になることが多かったよねえ。

今はなんで、そんなに待たされるんだろうねえ。

葬儀屋さんが儲けるためかねえ』


私も、

そういう可能性(葬儀屋の策略)もなくはないんじゃないか、と思っていたので、

母の言葉に、ウンウン、と頷いた。



……


夜、帰宅した夫に聞いてみた。


『なんで火葬が こんなに先になっちゃうんだと思う?』


夫は言った。


『高齢化社会だからだろ。

ここのところ、寒かったしな。』



そうか。

そうだった。

しかも、戦後のベビーブームに

生まれた人々が、

お亡くなりになる時代に突入したのだ。


そりゃぁ、火葬場は大混雑だよな。



夫の言葉に納得した私は、

心の中で、

葬儀屋さんにごめんなさいをした。


……


母と私は、思考回路が似ている。


自分に不都合があるとき

(今回の場合、余分な支払いが生じたこと)、

事実を見ずに、

相手を疑いにかかる。


そして、

『葬儀屋の策略に違いない』と

思い込んで

相手との関係をぶち壊していくのだ。


……


騙されること、

カモにされることを

過剰に心配するのは、

自分が傷つくのが怖いからだ。


【もっと事実をちゃんと見てから、

自分の考えを固めよう】


いつも、そう思っているのに、

ついつい物事を斜めから見てしまう。


……


当日、

火葬場は、ちゃんとフル稼働していた。



私は、もう一度、

葬儀屋さんにごめんなさいをした。