~幻想花~
知識が乏しかった。
心臓が早鐘を打ち鳴らすように脈打つ事も、体中の水分が抜けていってしまったと錯覚させる、咥内の嫌な乾きも。
君と向かい合うだけで、
君が微笑みかけるだけで、
きっと、これが恋。
愛情なんか微塵も知り得なかった僕が。親に愛されず、見放され、孤児院で育ったこの僕が。
『奈緒ちゃん。僕ね、』
同じ孤児院で出会ったその少女は、花を咲かせたように芳しく笑う子で、飛び抜けて可愛い訳でも、飛び抜けて人気がある訳でも無かった。
それでも、誰にでも裏表の無い所だとか、気さくで明るい所には、酷く惹かれていったのを覚えている。
後で知ったのだが、彼女の前歯が少し折れていたりしていたのは、孤児院に来る前実の両親から虐待を受けていた証拠だったのだという。
ひとつも見せなかった彼女の過去が、今になって徐々に紐解けていくのは妙な気分だが、なにしろ表に匂わせない性格であった為、彼女は頑として教えてはくれなかったのだ。
『私の過去なんか、翔太にあげない。これは私の。私が分かっていればいい事なの。』
『じゃあ、僕は奈緒ちゃんの事、なにも知らないよ?』
『…そんなの、これから知っていけばいいことじゃない。いい?私たちはまだ子供よ。どんどん大人になって、色んな事を経験していくの。』
『大人…?』
『だから、私の過去はあげないけれど、その代わりに。………』
彼女は暫くの後、孤児院を去った。
里親のおじさんとおばさんは良さそうな人に見えたから、僕は院長先生に必死に頼み込んで、なんとか彼女の引き取り手の連絡先を手に入れる事が出来た。
原則では禁止のはずのそれを、相手側はさほど気にも留めずに僕に渡したのは、多分、彼女と僕の気持ちを読み取ってくれたのだろうか。
いつか、孤児院を出れる時が訪れた時。
真っ先に彼女に会いに行く為に。
『…その代わりに。私の未来をあげるわ。』
『未来、』
『早く大人になって、私に会いに来てちょうだい。』
『僕が?』
『たまには翔太の顔を見たくなったっていいじゃない。』
『なら、………奈緒ちゃん。僕ね、』
『絶対に、迎えに行くから。そして、奈緒ちゃんをお嫁さんにする。』
***
「それじゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。気を付けて。」
妻に軽く見送られて、例年の通りに隣町まで車を走らせた。
小高い丘に吹かれるあの場所で行うのは、僕にとっての大切な、大切な行事。
今年の花には、何時もに増して大きな百合を選んだ。
最後の別れに。
僕の節目として。
「……やあ。元気にしてた?」
スーツの皺を整えて、花を提げてから微笑んだ。
「綺麗な百合だろう?……今日はね、お別れを言いに来たんだ。」
跪いて、そっと花瓶にそれを挿してやる。
百合が、小さく頭を揺らす。
「三枝は……、別に君とさよならしなくても良いと言うが、もうそろそろ、自分にけじめを付けようと思ってね。」
頷くかのように、
百合が、小さく頭を揺らす。
昔と変わらない。
花が咲いたように笑う彼女。
瞼の裏に映るそんな君が、見えた気がした。
「……。」
そして眼前の冷たい石に触れる。
今はこれが彼女の姿。
新しい線香に火を灯して、それを供えた。
君と約束した日から、
すでに15年が経っていた。
彼女はもう、いない。
話の意味が分からなかったら、すまそ
ww恋愛小説なんか((←
と馬鹿にしてた私が、んだ。コレw
ま、
結局、シリアス展開に持ち込むのが私流orz
……本当、なにがやりたいんだかw
