戦闘狂でなければ誰だって

戦いたくはありません。


たいていの軍人は

戦闘が好きではありません。


真っ先に弾に当たるのは

自分たちですから。


国の舵を取る人
つまり、


エリート層だけが

実際に戦争を防ぐための

駆け引きをすることが

できるのです。




私立エリート中高一貫校の
補欠合格を辞退した
りくの小学校時代のクラスメイトは

6年後に東の○大に進学した。
ちなみに、彼は二人姉弟

5学年ほど上らしいその姉は

公立くじ引き中高一貫校、
開校初の西の●大合格者
であったらしいが  

エリート中学の
受験経験者であったか否かは不明である。

ご両親の学歴を聴取したことはないが
噂によれば

噂にならない程度であるらしい。

○くんとりくは
結構仲良しだったと思う。

小学校時代は参観日や行事ごとで
一緒に過ごす様子が観察されているし

大学入試共通テストの休憩時間に
偶然トイレで
ばったり会ったのだそうだ。

惹かれ合う二人

そこに、運命とかは
別に関係なかったと思うが


ユニークな○くんのことは、
我が家で時々話題になった。

中でも、私の両親が2人で出向いた
りくの参観日のときのことは
今もなお、なにかの拍子に話題にあがる。

その日は算数の授業で


こういった単元だったのだそうだ。


画用紙で展開図を作る。

偶然、うちの両親のすぐ近くに
○君の席があった。

○君が、とても楽しそうに 
展開図を作っていたから

うちの両親は、先生の話を聞かずに
他人である○君の手元に
釘付けになっていた。


すると、意外にも

○君は、突然
先生から注意を受けたのだという。

「言う通りにやっていない」
「順番が違う」
「先生の話を聞いていない」

両親は口を揃えて「とても残念だった」と悔しそうに私に話した。

先生の話なんかより
○君の試行錯誤のほうが
ずっと面白かったのだという。

ときに、精巧なのか失敗なのか
一面が足りなくなったりも
したらしいが

「そこはテープでくっつければいい」などと勝手な助言を耳打ちしたりもしたという。

その心は
共犯。。。だったのかもしれない。


そんな私の父もりくが
小学低学年の頃に
火災報知器を鳴らせた事件の時は

いつになく厳しい注意をし
私にも「よく言い聞かせるように」助言をした。

当時のことを、つい先日
りくに聞いてみた。

「なぜ、あんなことに。。。」







りくは、答えた。

「火事のときには、強く押してください」と書いてあったから

「火事じゃないから、弱く触れたら音がなった」


鳴らぬなら
鳴らせてみせよう
火災報知器




ふたりの出会いは、
別に運命というほどではないし

共通テスト会場が同じなのは
まあまぁ必然であるし

トイレで会ったのは
まずまず偶然であろう。


というのは、

こんなことを
「できすぎた作り話」に
するわけにはいかないからである。




小学5年生のクリスマスに
りくは私に言った。

「欲しい本がある」

「○君が、最近
休み時間にいつも読んでいる本があって、それがとてもおもしろいと言っている」


その本とは





「生きて、 

必ず生きて帰る。

妻のそばへ、娘の元へ」


涙を流さずにはいられない

男の絆、家族の絆。

「俺は絶対に特攻に志願しない。

妻に生きて帰ると約束したからだ」


「真珠湾に参加するとわかっていたら、結婚はしませんでした」


「零戦はかつて無敵の戦士でしたが、今や――老兵です」


「私には妻がいます。妻のために死にたくないのです」


「私は帝国海軍の恥さらしですね」



「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」


そう言い続けた男は、

なぜ自ら零戦に乗り

命を落としたのか。


終戦から60年目の夏、


健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。


天才だが臆病者。 

想像と違う人物像に戸惑いつつも

1つの謎が浮かんでくる――。


記憶の断片が揃う時、

明らかになる真実とは。