りくは?
おいてきた
え??どこに??
長男 小学1年生
次男りく 4歳
ふたりではるばる図書館に行き
大量の本を借りて
帰る途中
あまりの重さに音を上げて
長男が次男を置き去りにした
事件である。
結局、次男りくは
知らないおじさんに助けられ
本と共に帰ってきた。
らしいが、私は
外を探し回っていたところだったので
いまだ、このおじさんが
どこの誰なのかわからない。
それから、14年ほどがたち
18歳になったりくは
駅の階段をキャリーバッグとともに降りようとしていた、ご年配の女性に声をかけてお荷物をお預かりの上
一緒に階段を降りただけの
1分程度の出来事について
学校にお喜びの声が届いたために
多くの人々からの
称賛を浴びた。
担任男性教諭は
「〇〇高校の株がだいぶ上がりました」
と私に言った。
株主は誰なのだろう。。。
さんざん称賛を浴びたその出来事を
1年経っても
しつこく話題にする私と母(祖母)に
りくが言った。
「あれなぁ。。。
なんか、電話をくれたから
すごいことしたみたいな話になってるけど。」
「それは、
誰も見てなかったからだよ。」
「ほんとうは俺は、
そのおばあちゃんの
荷物を持って
いつも通りに
階段を降りただけなんだ。。。」
年末年始に帰省していた長男に
私はまた凝りもせずその話をした。
そして
「りくはね、小さいときに
図書館の帰りに知らないおじさんに本を持ってもらったことがあったから」
「そういうことを覚えていて
おばあちゃんに声をかけたんじゃないかと思うんだ」
すると
食事の後、席を立つと同時に
食器洗いを始める長男が
いつもどおりの水音を
BGMにして話しだした。
「その話なぁ
りくは、俺があとから迎えに来るって言ったって言うけど」
「俺な、言った覚えないんや。
『自分で持てんなら、借りんなよ。そんなに』とか思いながら置き去りにしたからな。」
「お母さんもそう思うよ。だって、逃げるように2階に行って布団に入ってたもんね。
だけどね、りくには
そのこと、いまだに言ってないよ。
にいちゃんは、りくのヒーローで。
自分を置き去りにするなんてことはあり得ないって、今でも思っているんだから。
兄ちゃんが自転車を取ってくるって言ったけど、待っている間に泣いていたら
知らないおじさんが助けてくれたっていうエピソードなんだよ。
助かったって思ったから
覚えてるんだって。
だから高校生の時
知らないおばあちゃんのキャリーバックを、持ってあげようと思ったのかなと思って。
りくは、そんなすごい話じゃないって言ってたけどね🤭
ただ、いつもどおりに
階段を降りただけなんだって🤣」
当然のように
食器から目を離すことなく
長男が言った。
「それはそうやろ。
だって
知らない人に対する
親切って
そういうもんやろ。」
「する側にとっては、たいしたことないねんて。
それが、たまたま
される側にとって助けになったときに
親切になるってことやろ?」
「そういうもんやろ」
そういうもんか。
なるほどね。
と思ってから2週間。
長男と入れ代わりのように
大学の学期末試験を終えたりくが
帰ってきた。
いつもどおりに、いつもの駅の
その階段を降りてきて
後部座席のドアを開けながら
「寒いねぇ。こっちは」
と言った。
暖冬とはいえ
夜はマイナス気温
「向こうは日中
20℃近くなることもあったから
まだ、冬だってこと忘れてた。
コートは着てきたよ。
着てきたけど
スニーカー、履いてきちゃった。」
時が経つのは早い。
とはいえ
まだ、2月である。