1ビットコインの価格が1万ドル(約110万円)を突破した。専門家によるとさらに高騰する可能性がある模様だ。世界で最も人気のある仮想通貨によって、銀行やクレジットカード会社、もしくは第三者の介在を必要とせず、誰もが商品やサービスを購入したり貨幣に両替したりすることができるようになる。
ビットコインはこれまで、ハッカーによる身代金の要求や違法薬物のオンライン取引に悪用されるなど、曖昧で微妙な経緯をたどって今日に至った。しかし、最近では、従来とは異なる類の人たち、すなわち、投機的な取引に積極的な投資家たちの間で人気が高まっている。
ビットコインの価格が上昇を続けている今、ビットコインの概要に目を向けてみよう。
◆ビットコインのしくみ
ビットコインはいかなる銀行や政府にも関連づけられていないデジタル通貨であり、ユーザーは匿名でお金を使うことができる。ユーザーがビットコインを採掘(マイニング)することで、ビットコインは新たに発行される。マイニングとは、他のユーザーの取引を検証するためにコンピューターの計算能力を貸し出すことである。つまり、コンピューターの計算能力を提供してくれたユーザーへ、その見返りとしてビットコインが支払われる。ビットコインは米ドルや他の通貨との両替も可能だ。
◆ビットコインの価値は?
ビットコインの価格を監視しているウェブサイトであるコインデスクによると、2016年11月末には11,000米ドルを越える価格で取引されていたが、その日の後半にはおよそ9,800米ドルにまで価格が急落した。2017年の初め、1,000米ドルにも満たない価格で取引が開始された時に比べ、およそ10倍もの値上がりを記録している。
しかし、ビットコインの価値は著しく高騰したり急落したりする。ビットコインの価値は11月の初頭、わずか3日間でドルに対し22%も落ち込んだ。
◆ビットコインに人気が集まる理由
基本的にビットコインはある所有者から別の所有者に移動するたびにデジタル署名されていくコンピューター上のコード行だ。ビットコインを使った取引は匿名で実施することができ、自由主義者、ハイテク愛好家および投機家の間で人気となった通貨であり、時に犯罪者によって悪用されたりもした。
◆ビットコインでの取引は本当に匿名なのか?
ある程度はそのとおりだ。取引とアカウントは追跡可能だが、アカウントの所有者が誰であるかは必ずしもわからない。しかし、ビットコインが通常の貨幣に換金される時、調査員は所有者を特定することも可能ではある。
◆誰がビットコインを使うのか?
ビットコインに関するマスコミの報道が過熱するさなか、その勢いに乗じて一部の企業はビットコインによる取引を始めた。Overstock.comがビットコインによる支払いに応じるようになったのはその一例だ。米国金融先物取引場のCME Groupグループは昨年10月、規制当局の承認が得られ次第、年末までに先物市場を開設する予定である、と述べた。ビットコインの人気は現金やカードに比べてまだ低く、多くの個人や企業はビットコインによる支払いに対応していない。
著名な銀行幹部の中にはビットコインに反対を唱える者もいる。JPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモン氏はビットコインのことを「詐欺」と呼んでいる。
とは言うものの、JPモルガンは、ビットコインの背後にあるブロックチェーンとして知られる基盤技術を、銀行が取引や資産をより正確に追跡できる方法として利用し始めている。
◆ビットコインを所有するべきか?
個人がビットコインを購入したいと思う基本的な理由が2つある。1つは新しい支払い方法とするため、そしてもう一つは、価値の保存を目的とした投資を行うためだ。
現在、主流となっている商取引においては、ビットコインの流通はまだ限定的なものだ。マイクロソフトは、XboxとWindowsストアのプラットフォームにおいてビットコインを支払い方法として認めている。Overstock.comもビットコインに対応している。しかし、ウォールマートやアマゾンでビットコインが使えるようになるのは望み薄だ。
仮想通貨は投資家の間でも議論の対象となっている。ダイモン氏や億万長者のマーク・キューバン氏のようにビットコインに強く反対を唱える人たちもいるが、ビットコインを熱心に支持する人たちもいる。ウォールストリートでは、ビットコインを取り巻く様々な商品が生み出されつつある。より堅実な投資家たちは、ビットコインを非常に投機性の高いものとみなし、金、商品、もしくは伝統的な通貨とは違い、誰もが全財産を投じたりするべきではないリスクの高い投資であると考えている。
◆ビットコインの安全性の確保
ビットコインのネットワークは、集団の利益のために個人の欲求を利用することで機能している。採掘者(マイナー)と呼ばれる技術に長けたユーザー達のネットワークは、コンピューターの計算能力をブロックチェーンに注入し、ビットコインのすべての取引をグローバルに集計することによってこのシステムを公正かつ透明に保持している。ブロックチェーンは不正行為を働こうとする者が同一のビットコインを2回使うことを防止し、採掘者たちは自らの努力に対し、時折ビットコインが贈与されることで報酬を受けている。採掘者たちがブロックチェーンを安全に保っている限り、偽造の恐れはないと考えて良い。
◆ビットコインの生い立ち
ビットコインの起源は謎に包まれている。ビットコインは、「サトシ・ナカモト」と名乗る人物もしくはグループによって2009年に提唱され、開始された。そしてビットコインを熱狂的に支持する一部の小さなグループが運用を開始した。その後、ビットコインが広範な注目を浴びるようになって、ナカモトサトシは人知れず姿を消した。しかし、ビットコインの支持者は、それは大きな問題ではない、と言う。通貨は、それぞれ独自の内部論理に従う。
オーストラリアのとある起業家は昨年、「我こそはビットコインの創始者である」と名乗りを上げたが、何日か後になって、自分がナカモトサトシであるという証拠を提示する「勇気を持つ」ことができなかった、とのみ告白した。