19911114njのブログ

19911114njのブログ

ブログの説明を入力します。

Amebaでブログを始めよう!
キャスト
男性2人 女性1人

語り…男性
彼女…女性
彼…男性

………………………………………………………………
「語り」
前提として、この少女の精神状態はまともではないものとする。語る上であり得ない事を口にする事も多々あるがそれは彼女がまともではない故。肝に銘じ、拝聴願う。
彼女は都内私立の高等学校に通う17歳。特技はこれといってはなく部活にも所属していない。
しかし、彼女を一言で表すのならば誰もが口を揃えて言うのだ。"嫌われ者"と。
彼女がその場にいるだけで彼女を知る者達の眼は変わる、それはそれは獣の様にギラギラと光る。彼女は毎日その視線に耐え、そして1日を終えて家へと帰っていく。
自室、それは彼女にとって唯一の安らぎの場。誰にも睨まれず誰とも接する事のない殻であり、城である。そこから彼女の物語は始まる。

「彼女」
また、ここに…

「語り」
人は己を写したる鏡を持たない。己を醜く感じる者は尚更である。彼女はいつの間にか迷宮に閉じ込められている。錆びた鉄で作られた床と壁、天井は黒い網で塞がっている。

「彼」
また来たのか

「語り」
と、どこからか男の声がする。

「彼」
懲りもせず、よくもそんなに頻繁に自問自答できるものだ。気づいているのだろう?ここはお前の中の迷宮だと。それに気付いたのは昨日今日ではなかったはず。それなのにここへ幾度となく現れるお前は何がしたい。

「彼女」
分からない

「彼」
質問を変えよう。どうしたらここに来るのをやめてくれる?

「彼女」
分からない

「彼」
来たくて来てるのか?

「彼女」
分からない

「語り」
分からない。彼女は何度も口にする。彼女は男の声を無視しそのまま迷宮を歩きだした。軋む音が響く。

「彼」
いいだろう。いつも通り鏡を探すがいい。それが出口だ。だが鏡は1つではないぞ。

「彼女」
今日は…。そうだ、まずは靴の中に虫の屍骸。机にコンドーム。カバンの中に生ゴミ。ノート隠し。トイレの水。そして絶えずに死ねってメール。
なんでだろ、なんでなんだろ、なんでなんでなんでなんでなんで

「語り」
彼女は耳から手を突っ込みグチャグチャと音を立て中身を掻き回す。手を引き抜くとその手には黒い石がいくつか握られており彼女はそれを地面に叩きつける。硬い音が先の見えない道の先にまで残響。石は砕け散る。

「彼女」
ま、どーだっていいんだけど。
前はよく一緒に帰ったのにな。どうしてあんなふうになっちゃったのかな。誰かが悪いんだ。きっと。
私かな。私が悪いのかな。私が悪いから私のこと嫌いになっちゃったのかな。
ま、どーだっていいんだけどさ。

「彼」
どうでも良いことはないだろう。そう思うのならばここへは来ない。

「彼女」
しつこいね。あなたは私の何なの?

「彼」
それこそどうでも良いこと。もう一人のお前、お前の中のジミニークリケット、お前の記憶の中の人物。何とでも理由をつけて決めつけて納得すればいい。

「彼女」
それじゃ嘘っこじゃん

「彼」
お前が真実を欲するというのか。

「彼女」
言うのだ………ウソ、ごめん。やっぱ言わないで本当のこと。鏡は自分で見つけるから。

「彼」
毎回同じ鏡を見てよく飽きないものだ。

「語り」
彼女は男と言葉をかわしつつも歩みを止めない。道はいくつも別れてはいるが彼女は決して迷う事なく先へと進む。始めは彼女は人の姿をしていたが進むにつれて彼女の皮膚はただれ、髪は抜け落ち、その姿はまるでボロ雑巾。

「彼女」
あーあ、こんなんになっちゃった。
どうしてこんなんになっちゃったんだろう。

「彼」
どうしてあの女と一緒にいる。そんな姿になってまで一緒にいたいのか?あんな女と。

「彼女」
友達だから

「彼」
友達だと、冗談じゃない

「彼女」
ああ、冗談じゃねえぞ

「彼」
ならば何故…

「彼女」
見つけた

「彼」
何?

「語り」
彼女の目の前の壁には小さな汚れた鏡がかけられていた。彼女は小走りにかけよるとその鏡を覗き込む。
そこに写るものは紛れもなく彼女自身。

「彼女」
ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…

「彼」
行き着く先を知り得た迷宮は迷宮ではない。結局お前は悩んでなどいない。毎回毎回悩むふり考えるふり反省するふり。それが免罪符だと思っているのか。違うぞ。迷宮は迷える者の為の試練だ。もがき苦しむ事は悪ではない。迷う事は悪ではない。弱い事も、泣くことも、前に進めないことも悪い事ではない。
お前自身が悪なのだ。それを忘れるな。
言え、思い出せ、今日は何をした。

「彼女」
あの子の靴の中に虫の屍骸入れた

「彼」
そして

「彼女」
あの子の机の上にコンドームまき散らした、あの子のカバンの中に生ゴミ入れた、あの子のノート隠した、あの子にトイレの水飲ませた、あの子に死ねってメール送った…送りまくった

「彼」
何がしたい

「彼女」
分かんないよ。仕方ないじゃん、本当に分かんないだから。いじめる理由?そんなのないよ、だってただムカつくんだもん。前は仲良かった、一緒に遊んだ、でもあの子のヘラヘラした顔見るといじめたくなる、壊したくなる。仕方ないじゃんそういうものなんだから。

「彼」
お前死ねよ。皆がそれを望んでるぞ。

「彼女」
考えたことないと思う?毎晩毎晩考えてるよ。自殺する勇気があったらまともに生きてるよ。私は臆病なの、弱虫なの。いじめないとあの子との繋がりが保てないの。分かんないかな。
私はあの子といたいの
「彼」
もういい。帰れ。そしてまた来い。何度でも罵ってやる。

「語り」
彼女はもはや口を開かない。己を写したる鏡は時としては己を偽る。鏡が悪いのではない見る者が真実を捻じ曲げる。彼女は他者を迫害することの理由を欲しているのだ。ただ単純に道徳という言葉では納得できずに己が醜い事の誰もが納得する、誰もが同情する答えが必要なのだ。
彼女は迷宮を抜け、そしてまたいつもと同じように1日を過ごしていく。

彼女はいつまでも気づくことはない。刃を振り回す者の葛藤など誰も気にはとめないことを。

end