「……え?」
「あ……いえ。すみません」
動揺したように、時江さんは手にしていた絵を初江さんらしき女性へ差し出した。
「ありがとうございます」
初江さんは姿勢を正し、丁寧に頭を下げる。
「……っ」
その姿を見つめたまま、時江さんは言葉を失っていた。
「……あの、何か?」
不思議そうに首を傾げる初江さん。
時江さんが何も言えずにいると、代わるようにセンター長が口を開いた。
「申し訳ありません。あなたは……渡部初江さん、でしょうか?」
「ええ……そうですけど。あなたたちは?」
「ええ、実はですね……」
センター長は一瞬だけ言葉に詰まった。
そして、時江さんへちらりと視線を向ける。
「こちらの女性の娘さんが、以前、初江さんにとてもよくしていただいたそうでして。そのお礼を伝えたいということで、ずっと探していたんです」
……センター長、若干焦ってないか?
おそらく、咄嗟の出まかせだ。
大丈夫なのか……?
「えぇっ? そんなこと、あったかしらねぇ?」
初江さんは困ったように笑いながら首を傾げる。
「ごめんなさいねぇ。私、覚えてないわ」
「いえいえ! 相当前のことですし、それに、ほんの一瞬の出来事だったそうなので! 覚えていなくても当然ですよ!」
「そう……?」
「ええ、そうです! はは……」
……いや。
もうこれ以上しゃべると、逆に怪しくなるぞ、センター長!
俺は内心のヒヤヒヤが止まらなかった。