脂質は、体にとって本当に大切な成分です。その一方で、摂りすぎると肥満やさまざまな疾病の引き金にも。
脂質にはさまざまな種類があり、それぞれ性質も異なるので、そこをしっかり理解することがポイントです。
脂質の種類
脂質は、まず単純脂質、複合脂質、誘導脂質の3つに大別されます。
単純脂質は、
脂肪酸とアルコールが結合したもの
複合脂質は、
単純脂質にほかの成分が結合したもの
誘導脂質は、
単純脂質や複合脂質が加水分解されて生じたものです。
脂質の構造
食べ物に最も多く含まれる脂質がトリアシルグリセロール(中性脂肪)です。
※ちなみに、トリアシルグリセロールはトリグリセリドとも呼ばれます。
トリアシルグリセロールは、グリセロールに脂肪酸が3つ結合した構造をしています。
化学構造はこんな感じ。
多くのテキストに、
「単純脂質は、脂肪酸とアルコールのエステル」と書かれていると思います。
脂肪酸はカルボン酸、
グリセロールはアルコールの一種です。
カルボン酸とアルコールが脱水縮合する反応をエステル化といい、その反応の生成物をエステルといいます。
つまり、脂肪酸(カルボン酸)とグリセロール(アルコール)がくっついたものなので、エステル。ということです。
トリアシルグリセロールは、どの脂肪酸が結合しているかで性質が変わります。脂肪酸については、また別の記事で詳しく紹介しますね!
脂質の働き
体内での脂質の主な役割はこちら。
①エネルギー産生
②エネルギー貯蔵(体脂肪)
③細胞膜の構成成分
④ホルモンの材料
⑤胆汁酸の材料
⑥神経細胞の髄鞘の成分
①エネルギー産生
炭水化物やたんぱく質が1gあたり4kcalのエネルギーを産生するのに対し、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを産生。効率の良いエネルギー源となります。その分、脂質の摂り過ぎは肥満のもとに。
②エネルギー貯蔵
食事から吸収した過剰な脂質は、体脂肪として貯蔵されます。脂肪を貯蔵する場所は脂肪細胞で、貯蔵されるのは主にトリアシルグリセロール(中性脂肪)です。体内で過剰になった糖(グルコース)も、中性脂肪に変換されて脂肪細胞に貯蔵されます。
貯蔵された中性脂肪は、空腹時や運動時に分解され、エネルギーの産生に利用されます。絶食しても水さえあればしばらく生きていけるのは、この貯蔵された中性脂肪からエネルギーを産生できるおかげ。
ちなみに、体脂肪には臓器の保護や体温の維持などの役割もあります。
とはいえ、エネルギーの過剰摂取が続くと、脂肪細胞が中性脂肪を大量に溜め込んで肥大していきます。これが「太る」ことの正体。
正常な脂肪細胞は生理活性物質を産生して肥満や糖尿病を防ぐ働きがありますが、肥大した脂肪細胞は生理活性物質の分泌パターンが変わることで、さまざまな生活習慣病を引き起こしやすくなります。まさに肥満は万病のもと。
③生体膜の構成成分
細胞膜などの生体膜は、脂質二重層と呼ばれる構造でできています。体は細胞の集合体なので、その細胞のすべてが脂質の膜でできていると思うと、脂質の大切さがわかりますね。
ちなみに、生体膜の構成成分となるのは、グリセロリン脂質やコレステロールです。
④ホルモンの材料
ホルモンにはさまざまな種類がありますが、ステロイドホルモンはコレステロールから合成されます。
主なステロイドホルモンには、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロン、アンドロゲン、副腎皮質から分泌されるコルチゾールなどがあります。
脂質を制限しすぎると、女性ホルモンが正常に分泌されず、月経が止まってしまうことも。
⑤胆汁酸の材料
胆汁酸は、肝臓で作られ、小腸に分泌されるもの。主に脂質の消化に関わります。
胆汁酸の材料になるのがコレステロールです。食事から摂取したコレステロールとともに、小腸に分泌された胆汁酸も再吸収され、肝臓に送られます。
⑥神経細胞の髄鞘の成分
「髄鞘」とは、神経細胞の軸索をおおう膜のようなものです。髄鞘にはスフィンゴリン脂質が多く含まれています。
脂質は電気を通しにくいため、神経細胞で生じた電気信号は、髄鞘を避けて伝達されていきます。その結果、神経の伝達速度が大幅にスピードアップ。この神経伝達のことを、跳躍伝導といいます。(髄鞘がない神経細胞もあります)
ちなみに、髄鞘に含まれる脂質はスフィンゴミエリンといい、髄鞘はミエリン鞘とも呼ばれます。このあたりは生理学でも学ぶと思います。
以上、脂質の種類と体内での主な働きでした!
次回は脂肪酸についてまとめる予定です