ビフォー・トゥデイ/アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティ

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 以前のアリエルピンクの作品は、アリエル・ローゼンバーグという宅録マニアが、様々なジャンルのポップスにヴァイナルエフェクトをかけたような古臭く、雑な音源の詰めこまれた売れ残りの福袋にしか思えなく、何かを伝えようとする意思を感じられなかった。チルウェイブのゴッドファーザーとしてもてはやされていたが、アリエルピンクの音楽自体が何かを生み出すという気はしなかった。
 名門4ADに移籍し初めてバンドとして発表した「BEFORE TODAY」は過去の古臭さを受け継いでいるが、より音像はクリアになり、意図も明確である。
 それはタイトルからもわかる通り、人をノスタルジーに浸らせるための音楽。例えるなら物置部屋の隅っこで埃を被った思い出の詰まったアクセサリーとか服とかフォトアルバム、どこかで見たことがある風景、嗅いだことのある匂いなど、とにかく人をノスタルジックにさせるものだ。それは混乱を巻き起こすのではなく、人に不可思議な気持ち、そして同時に楽しい記憶をも呼び起こさせるポジティブさに溢れている。
 GIRLSやDEERHUNTERには後れを取ったが、親玉がとうとう本格的に動き出した。ピッチフォークで9.0という高得点を獲得したという象徴的な事件からもそれは明らかだ。