バイト先の中華料理屋、料理長が変わってからとい うも
の、何かとごたごたが続いている。やれ食材が 無いだの
仕込んでないだの料理が出るのが遅いだの ・・・・・・。
今日はそんな店の現状を象徴するかの様な、印象的 な
事件が起きた。
僕が夕方の6時に入ると、鍋場の様子がおかしい。
普段は2箇所で鍋を振っているのに、今日は一箇所 しか
使っていない。話によると、ガスの具合が悪く 一箇所使え
ないようだ。必然的に鍋を使った料理は 2倍の時間を要
する事になる。
おまけに今日は日曜日。狂ったような客足の多さで ある。
鍋のオーダーはどんどん溜まっていく。
すると何を思ったか料理長、スープを沸かす巨大な 寸胴
をどけて、何とそこで鍋を振ると言い出すのだ。 ガス台の
高さは膝の高さくらいしかない。苦肉の策 とはこういう事
を言うのだ。
この大移動の間にも餃子、前菜、麺飯のオーダーは 溜ま
りまくり、7時前にして厨房は早くも修羅場と 化した。
必死でオーダーをこなす僕、膝の高さのガス台で鍋 を振
る料理長、孤立無援の鍋振り社員。料理の遅れ や食材の
不在、全てのダメダメ要素が絡まり、スタ ッフと客のストレ
スが臨界点に達したその時、それ は起きた。
何と我が店は完全に停電したのだ。
キッチンもホールも。完全に・・・・。
ロウソクを付け客席に配るホールスタッフ達。 店長はビル
のメンテナンスに連絡をする。ホールは 忙しそうだが、キッ
チンの大半は、ただ立ち尽くし ていた。
そう、店のブレーカーが落ちた時、我々の心のブレ ーカ
ーも落ちたのだ・・・・・・・・。
約5分後、店は明かりを取り戻したが、致命的な傷 跡を残
した。洗浄機と、茹で麺機が動かなくなった のだ。
ここから先のキッチンは見るに耐えないものがあっ た。い
つもは偉そうな料理長が3分の1ほどに縮ん でしまうし、ブ
レーカーが落ちたままの我々は崩壊 寸前の厨房で、抜け
殻のようにただ虚しくオーダー をこなすのである。
それはあたかも一つの生命の終わりを感じさせ、い っそう
虚しさを増幅させた。
9時になると、店長が店を閉めた。ノックアウトで あった。
駅ビルのレストランフロアの一角である我 が店が、営業時
間内に店を閉めるというのは前代未 聞である。きっと明日
は、まず駅ビルの偉い人に怒 られ、その後会社の人にた
っぷり絞られるんだろう。 気の毒・・・・・・・・・・。
早く帰れるのかと思っていたが、全部手洗いの為結 局終
ったのはいつもと同じ11時。疲労感だけはい つもの3倍
残った。 最後にビールを飲みながらさっきの
「そう、店のブレーカーが落ちた時、我々の
心のブ レーカーも落ちたのだ・・・・・・・・。」
というセリフで笑いをとった事が、この事件の唯一 のプラ
スであった。(って言うか明日は営業するのか?)