新しく始めたバイト先では僕は接客係なので、割と
真剣に接客の事を考えなければならない。
今の中華屋でキッチンの僕が、たまにホールを手伝って
いるのとは訳が違う。正真正銘ホールとして働いているのだ。
そもそも僕は、接客に向いている性格ではない。
人見知りするし、口下手である。
しかし将来自分の店を持つ、というのが夢である以上、接客
というものは避けては通れないものである。
新しく働いている店は、自然食品を使って調理したものを提供
している店である。食材一つ一つに、〇〇さんが自然栽培で
育てたもので、それにはこういう苦労や努力があり、なんてストー
リーが存在するのだ。店長がそうした農家の人をゲストに呼び、月に
2回ほど有料で講習会をしている。お店の常連さんが多くそれに
参加しているという。
こりゃ、まずい。
新入りの僕なんかより、はるかにお客さんのほうが店に詳しい。
今日は、店が発行しているニュースレター(講演会の内容なんかが載
っている)を取りに遥々店まで行ってきた。
全部で10冊ほどもらった。早速帰りの電車で読んでみた。
そこには店の基本的な理念から、様々な経験談、調理レシピなど、多種
多様な事が書いてあった。
うむ、全て読み終えるうちには、お客さんに何か聞かれてもちゃんと答え
られるようになるかもしれない・・・・、と少し安心した。
後は基本的な接客技術だな。要スマイル修行。
新しく始めたバイトの影響で、中華屋で働く事が少なくなってきたのだが、
それを見て同僚の女の子がこんな和歌を送ってきた。
故郷をば
捨てた心の悲しさや
石田に会ひて全て忘るる
故郷というのは中華屋で、石田に会ひて、というのは新しい店に石田ひかり
が来た事を自慢した事だろう。さすが日本文学部。しかしこの人も留年生・・・・。