私は今まで、患者さんに

『私は癌患者です』

と言うことを躊躇してきました。

 

その理由としては…

・看護してもらう看護師は元気で健康なイメージがあるのではないか

・患者さんに余計な心配をかけたくない

・癌患者である前に、私は今看護師だという想い

 

正直、忙しすぎて患者さんとゆっくり話をできない時もあります。

復職してから、癌患者の方や同じ治療をした方、抗がん剤治療中の方のカルテを確認すると、胸がぎゅっとなって、その患者さんへの対応に思いが溢れてしまうことはありました。

けど、復職して3ヶ月間・・・患者さんに私もよーとは言えずに来ていました。

 

最近、年齢の同じくらいで同じ乳がんで、私がした術前の抗がん剤治療をしている方のジーラスタ注射を担当しました。

「体調どうですか?」

の私の言葉に、彼女は不機嫌そうに「食べられないし、良い訳ない。」とぼそっと話してくれました。

思わず初めて私は

「私も去年同じ治療をしていました。だから、その辛さはわかります。人によって症状は多少違うだろうけど、でも経験して乗り越えてきたからこそ痛いほどわかります。このお注射(ジーラスタ)の痛みも、この後出る副作用も、経験しているからわかるんです。」

と伝えました。

その患者さんの表情はすぐに変わり、飛びつくように

「何食べてました?こんな時どうしてました?」

と質問をたくさんしてくれました。

表情も笑顔で、目がキラキラしていて、前のめりで私に色々話してくれました。

色々話しをしたあと、

「なんか元気になりました。自分だけとか、自分ばかりとおもう日々でしたが、看護師さんもこうして経験して働いていると思うと頑張れそうです。また、話聞いて下さい。」

と笑顔で帰られました。

 

あー話してよかったな。

今の私だからこそできた『看護』だったのかも知れない。

健康の時の「その気持ちわかるよ」と話してきた言葉が、すごく薄っぺらく感じて、今なら本当に気持ちがわかってあげられると少しだけ思いました。

病気をすることが良いことではないし、みんななりたくてなっているわけではない。

でも、こうしてこの職業であったおかげで、私の経験が誰かに活かされたり、誰かの頑張りに少しでも繋げられるのなら、大変な経験だったけれど無駄にはなっていないなと今は思っています。

 

『私に出来ること』

『私にしかできない看護』

をこれからもしていけたらいいなと改めて思いました。

 

看護師でよかった…。