「僕は自分の行きたい方向に向かっていっただけ。僕から見たら、nonさんたちが僕の人生のレールからいなくなっちゃったって感じだよ」
10代から20代の前半にアニメの自主制作集団にいて、今は声優として活躍をしている友人の言葉。
私は書き手として、彼はアフレコで参加していた。
25年ぶりに再会したときに「ずっと役者の道を目指して実現させてすごいよね」と言った私への答えだった。
しばらく、その言葉は私の心に残った。

アニメーターの夢も、役者の夢も現実の波に飲まれてひとつずづ消えていった。
自分を貫き通したものなんて何もないんだなあって、急に寂しくなった。

でも、彼が某講演会で参加者から
「kさんはどうして声優になろうと思ったんですか?」との問いに、会場の隅にいた私をさして
「僕が声優になるきっかけを与えてくれたのは....nonさんなんです」と彼が答えて、マジに腰が抜けるほどびっくりした。
「あのころ、まだまだ力のない僕に、「kならきっと声優になれるよ」って言ってくれたんですよね。そうやって背中を押してくれたから僕は頑張れたんだと思います。」
と、彼は笑った。
そんな話、25年たって始めて聞いたぞ!
おかげでしばらく私はkのもと彼女で、劇団の人と思われたじゃないかー!

だけど、kの言葉はすごく嬉しかった。
そんな風に人の人生に自分が関わったなんて思っても見なかったから。

テレビからkの声が聞こえるたびに、なんだか不思議な感じがするけど、少し誇らしい私です。
私の人生のレールもまんざらじゃないよなって。