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香港電影紹介第31回は、ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン、池内博之共演の「イップ・マン 序章(葉問 IP MAN)」です。


<あらすじ>
1930年代、広東省佛山。
この土地の名家に生まれ育った葉問(ドニー・イェン)は、武術の鍛練に勤しみながら美しい妻(リン・ホン)と幼い息子の3人で静かに暮らしていた。
そんなある日、彼の元に武術館の師範がやってきて手合わせを申し出る。
あっさりと彼を負かすと葉問の噂は瞬く間に佛山に広まり、佛山一の武術家として知られるようになる。


1937年7月、日中戦争勃発により佛山は日本軍に占領されてしまう。
葉問家も邸宅を奪われ廃屋に追いやられ、その日の食料も確保できない荒んだ生活となった家族を助ける為、葉問は炭鉱で働くことにする。
そこで、葉問の卓越した技を見た日本軍将校の三浦(池内博之)は、日本軍の兵士たちを訓練するように命じるが、その命令に断じて従わない葉問は、空手の名手である三浦と公開決闘することになるのだった・・・


これはドニーさんの作品の中でもベストワークといってもいいんじゃないでしょうか?
いままではどちらかというと暴力的な刑事みたいなイメージが強かったけれども、こんなに落ち着いたドニーさんの重厚な演技(実在の人物というのもあると思います)を見れるというのは貴重ですね。
功夫アクションも“詠春拳”ならではの手技中心の攻防や棒術をスピーディかつ精彩に見せてくれますし(ただし、今回はドニーさんのダイナミックな蹴り技はありません!)、最近の過度なワイヤーアクションではなく、リアルなアクションが素晴らしいですね。
アクション監督はサモ・ハン・キンポーです。


前半は中国人の日常生活とルイス・ファン率いる道場破りの功夫対決(ここのドニー・イェンVSルイス・ファンの少しコミカルな対決は面白いです。なんかルイス・ファンが伊武雅刀に見えてしかたがなかったよ(笑))をメインにカラフルな映像で描き、後半、日本軍に占領されてからはセピア調のシリアスな映像(中国人の心情を表している)とのコントラストも見事だ。

見所は武術マニアの三浦将校が、白米と交換で空手家と中国人を勝負させるシーンでのドニーさんのアクションは必見だ。
映画の前半でドニーさんと対戦した武術師範が殺され、怒りをあらわにする葉問が10人の空手家相手に闘うシーンでの詠春拳の攻防は素晴らしく、流れるような美しさ、かつ力強い動きで見応えあります。
ドニー・イェンという本格派とサモ・ハンのタッグだからこそ、生まれた名シーンでしょうね。


他にも、日本軍の通訳をするラム・カートンも好演だし、三浦将校を演じた池内博之も空手黒帯保持者ということで様になってましたし(スタントダブルはありますが)、最近、香港映画でお馴染みになりつつある川井憲次さんのテーマ曲も素晴らしく、是非とも日本でも劇場公開して欲しいところ。(日本語字幕で観たいですね~。)


たぶん、日本で劇場公開されないのは権利が高いという事以外にも、日本軍が徹底して極悪非道な軍人として描かれているのも大きな理由なのでしょうね。(天皇の名前もでてきますし)

個人的には「スピリット」よりもこちらの作品の方が好みでした。
パート2はサモ・ハンも出演しているんですよね~。