◎前回のお話






『は…はい』

私と相方は事務所の中へ招きいれられた。
中にはもう一人男性が居た。



こんな中途半端に芸を手を出した自分ははたして
受け入れてもらえるんだろうか…。



ダメでもこの気持ちだけは届いて欲しいと思った。



ただの主婦だった自分が何かを発信できる人間になりたい。
強い母親になりたい。
そして同じように悩む世の中のお母さんとそのお子さんに笑顔になって欲しい…。


『○〇〇の柏崎桃子です!よろしくお願いします』



何度もネタ見せをしてきた。
でもその時が一番緊張したかもしれない。



すでに35歳。芸人のオーディションではもう対象外。


どうしたら一歩進める?
どうしたら何かを変えられる?
どうしたら?




『はい、ありがとうございました。』

1回も笑ってもらえなかった恐怖のネタ見せが終わった。

『では、後で結果をお知らせします。お疲れ様でした。』

『あ…はい。 ありがとうございました』




あっけないオーディションだった。




帰り道、相方と『ダメだったのかな?…そうかな?』
と、肩を落として帰った。




ダメだったら息子に何て言おうか…。
何歳までやろうか…。本当に一喜一憂…。




お茶でも飲もうか?とカフェで静かにお茶を飲んでいると
ふとケータイの着信に気付いた。しかし私の
ケータイは切れてしまった。
すると次は相方のケータイが鳴る。
『はい…。え!?』
私は相方の顔をのぞき込んだ。

『はい!はい!よろしくお願いします!!』

『どうした?』

『さっきの事務所の人!!所属に向けて前向きに
 検討しますって!!
 よく分かんないけど…受かったっぽい!』

さっきまでのどんよりした空気は相方の笑顔で
一瞬にして変わった。




その後 私達はもう一度事務所に呼ばれ
『預かり』と言う形で5月1日から仮所属になった。




私達の『芸歴一年目』の始まりだった。




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