◎前回のお話




運動会が終わると進路相談が始まる。


ひと家庭20分の持ち時間で先生と子どもと親で受験する学校を偏差値や子どもの意見をもとに決めていく。

かくかくしかじかいろいろあって家庭教師までお願いした我が家だ。

先生と話したくない気持ち120%で三者面談に向かう。

とは言え学校を通さないと受験は出来ないのでそこはぐっと堪えて学校に向かう。

3年生の教室の並ぶ階はとても静かで三者面談に来た保護者のスリッパが床に擦れる音だけが響く。

息子は先に教室の前で待っていた。

廊下に2脚並んだ椅子に座り順番を待つ。


時間になっても前の面談が終わらないようで少し待った。


しばらくすると静まり返った廊下に『ガラッ』と教室のドアが開く音が響いて私たちは立ち上がった。


『おまたせしました。』


面談は普通級の先生がしてくれた。

私たちは教室の真ん中に向かいあわせで置かれた椅子と机のところまで行き先生に頭を下げて座った。


『じゃぁ息子さんの進路なんですが…』


先生は以前話していた私立単願だと思っておりその話を進めようとしていて私はそれを遮るように話した。


『実は県立高校も受験させてみようと思うんです。』


『え?県立ですか?』


先生は驚いた顔をした。


『受かるか受からないか分かりませんが本人も受けたい気持ちがあるのでやらせてみようと思います。』


先生は少し黙って


『県立高校は確実に受かるって言う保証はありませんよ?』


『その時はその時で入れる学校を探します。』


先生は息子の普通級で受けている成績表を見せた。
息子は私にテストを見せることは全くなかった。
『ちゃんと見せなさいよ!』と言っても見せる前に机の奥深くに沈める。

点数は見事に赤点。


まぁ…こんな感じだろう。

先生としては私立単願推薦で確実に合格するルートを辿らせたいようだった。

それでも選ぶのは息子であり高校に行くのも息子だ。高校に行ってからの道は息子のものだ。


『もし落ちたとしてもその後のことは家族でどうにかします。なので私立は滑り止めとして受験させてください。』


先生は『…本当にいいんですか?』と聞いてきたが

『やるだけやってみようって話したので』と笑顔で返した。



帰りに普通級の子どもたちが使っている問題習を聞き帰宅した。
学校の教科書を使う書店に注文をして家庭教師の授業の時に使ってもらうことにした。


息子にどのくらいの力があるんだろうか。


私立が一般受験になったことで息子は今まで見たことがないくらい机に向かうようになった。