◎前回のお話




息子が中学に入って3度目の春。
先生の配置は変わることはなく3年間そのままだった。

毎年この季節は担任や支援級の先生の異動をチェックする。

新学期最初の保護者会で支援級を選択しているお母さんと顔を合わせると

『今年も変わらなかったね…』とため息をついた。


職場には同じ市内で違う学校に通わせているお母さんもいる。
仕事の休憩中には子どもの話になる事も多い。

家庭教師をつけたのも職場の同僚の体験談を聞いたからだった。


『えー!その理解ない先生また担当なの?』

『そう。結局3年間変わらなかったわ。』

休憩室でお茶をすすりながらそんな会話をする。


『うちの子どもの通う学校じゃそんな先生すぐに飛ばされちゃうよー!』

『そうなの?』

『うん!親が言うもん!』

他の同僚は

『うちの子どもが通う学校はみんな理解あって、障がいのある子も楽しく部活やってるよ!』

同じ市内でも子どもを取り巻く環境はこうも違う。

実際に本当かは分からないが、同じ公立の学校にも地域によってランクがあると言う。

保護者が強い地域には評価の高い先生が配置され、そうじゃない地域には…。

『こっちの学校に来れたらよかったのにね?』

『そうだね…。』

小学校からの流れで決まってしまう義務教育の格差とでも言うべきか…


この1年は息子の進路が決まる大切な期間。

保護者会も面談も授業参観も欠かさず行き続けた。


息子の新学期が始まると、私の養成所も月に一度ライブの週が始まる。

毎週日曜日の稽古と月のうちの1週間だけライブ中心の週がある。

今まで以上に時間の調整が大変になってきた。


仕事、息子の学校行事、ライブ…

ちょっとした時間が出来るとウトウトしていた。


息子のサッカーのお茶当番の合間にもお日様がポカポカしていると眠くなった。

同じ当番の仲良しのママさんは

『休んでていいよ!』と気を使ってくれることもあった。

その分、やれることはやるよ!と試合後のトイレ掃除などを手伝った。

息子も相変わらずうまく溶け込まない場面も見られたが私がいると少し安心しているようだった。

それはのちにもそんなふうに話していた。


『正直、嫌なことの方が多かった。

でもお母さんがいてくれたから助かった。』


そうか…。

『ならよかった。』


忙しくても行事や当番だけは欠かさないようにしていた。

シングルマザーの意地だったのかもしれない。


それに息子だって頑張ってるんだ。

私は正直サッカーを見ていて顧問や副顧問の態度にイライラしていたのでどちらかと言えば行きたくない気持ちの方が強かった。

でもそんな環境で少しでも頑張ろうとしている息子の為に出掛けていた。

最後まで見守ろう…


そんなある日、とあるママと二人きりでしゃべる機会があった。


車の中で二人になるとそのママは急に目に涙を浮かべた。