◎前回のお話




息子との仲は少しギスギスしつつも仕事をしなければ食べていけない。

養成所も始めたからには結果を出さなければいけない。

その時私に出来る最大限の約束。


◎しっかりお金を稼いで学校に通わせる

◎私が夢を諦めないで、息子に頑張る意味を教える

それだけは守りたかった。

何をしても『自分は出来ない』と諦めてしまう息子に、諦めなければ夢は叶うことを見せたい…
そう思うようになっていた。


最初に叶えたかった夢にどんどんいろんなものがプラスされていった。



今は伝わらないこともたくさんあるだろう。

それでも始めたことはやり続けよう。

結果が出るまで。


息子が自分から話さなくても挨拶だけはお互いするようルールを定めた。




『行ってくるからね。』


日曜日、養成所に行くのに家を6時前には出ていく。

『…いってらっしゃい…』


ベッドの中から眠たげな息子の声が返ってくる。


だいたい日曜日はサッカーがあるのでお弁当を作っておくかお昼代を置いておくかにしてあった。


養成所があるので週の完璧な休みは1日。

サッカーの当番が回ってくると全く休みはなかった。


目が回るような日々。


私が頑張る姿勢を見せたからか、はたまたそんな時期なのか

息子も頑張りを見せるようになってきた。


絶対に無理なんじゃないかと思っていた英検5級に合格した。時期が微妙に思い出せないが英語に興味を持ち始めてまさかの結果。


そして駅伝の選手にも選ばれた。

息子も息子なりに自分の中で頑張れることを見つけ始まったように見えた。


私はいつまでも息子を助けてあげられない。

生きてく力は自分で身につけていかなきゃいけない。


私の教え方は人とは違うけど少しだけでも伝わっているような気がして嬉しかった。


益々私も頑張れた。

お笑いの仕組みは全くわからなかったがどうにかかじりついた。

前期はオーディション形式でネタ見せをして選ばれた者のみがライブに出ることが出来た。

私たちは勝ち上がれなかった。


勝ち上がるためにはどうしたらいいんだろう…


授業で教わっても全くわからなかった。


ネタ見せの授業で大学生のコンビのネタが凄く面白くて、相方とお願いしてネタの作り方を教わった。

息子も頑張ってるんだから私もちゃんと結果を出して見せてあげたい!


大学生コンビ曰く

例えば桃太郎をネタにしたら物語の所々でおかしなことを挟んでいけばいいだけ!と教えて貰った。なんだかそれが凄く脳内でしっくりきた。


初めて納得のいくネタが書けた。

正解か不正解かはわからないが相方も大学生コンビも『いい!』と言ってくれた。


養成所に通い始めて半年ほどで中間審査会がある。

後半は全員ライブを行うため先生達にネタを見てもらいランク付けされAとBに分けられる。


Aは夜の部のライブに出ることが出来、Bは昼間のライブに出る。


もちろん夜の方がお客さんも呼びやすい。

上位に行くほどトリに近付く。


それを決める審査会だった。



今まで何をやっても笑いがわからなかった私たち。


でもその日は違った。


周りが笑っていた。


審査会終了後順位が張り出された。


私たちは限りなくAに近いBだった。


階段で教務に声を掛けられた。


『桃鍋面白かったよ!

次のライブ頑張れば上がれる!

俺は桃鍋行けると思うんだよね。』


凄く嬉しかった。


頑張れば光は見える。


それを実証するぞ!!


息子とともに私はまた壁を1枚乗り越えようと必死だった。