◎前回のお話




9月終わり。

私の特養勤務が始まった。

初日は日勤から。事務所でタイムカードを押しドアから出て真っ直ぐ進めばデイサービス。

右に曲がれば特養。

寂しい気持ちで右に曲がる。


『おはようございます』

早番や夜勤明けのスタッフ、利用者さんと挨拶をして寮母室に向かった。


寮母室に行くと日勤のスタッフが寮母室内の掃除をしていた。私も教わりながら掃除をする。

8:30になると朝礼が始まった。

いつもならば送迎に出る時間。

本当にこっちの人になっちゃったのか…と少し寂しい気持ちになっていた。


朝礼が終わると、私の指導係のスタッフと顔を合わせた。

『ももちゃん大変だと思うけど頑張ってね!』

『はい、よろしくお願いします。』


いつまでも寂しい気持ちでいるわけにもいかない。

【特養は無理!】と言われたこと。

絶対に覆すつもりでやってやる!

そう思った。


私がなぜ急に特養異動になったかと言えば、辞めるスタッフが出たからだった。

そのスタッフは利用者さんに対して強い口調で関わって居るのを何度か目撃したこともあり、評判も良くなかった。

『柏崎さんの明るさを特養にも!』と主任に言われ異動に同意した。


まずは仕事を覚えない限りは良くするにも何も出来ない。


『1ヶ月で夜勤デビュー出来るように覚えますから。』

それから私は出勤する度にやった事を家に帰ってからメモして書き起こした。

8:30  朝礼

8:45  申し送り

9:00  居室のオムツ交換
〇〇さん褥瘡あり

こんな感じで気づいたことや気になることを全て書いて次の日に備える。

家に帰ってからやる事も多く、ご飯はスーパーのお惣菜になることも多かった。

お米だけは炊いておいて簡単に食べられるものを冷蔵庫に入れておく。

洗濯物も夜のうち。


スタッフも利用者さんもガラッと変わり疲れるせいか早く眠くなる。

家事が終わると『先に寝るよ』と息子に声を掛け布団に入った。


早く覚えて生活リズム整えなきゃ…

10月に入る前に少しでも覚えておかなきゃ…


約60名いる利用者さんの名前や特徴も家に帰ると復習する。

名前と顔が一致しないと食事の配膳ミスも仕兼ねない。

個人情報保護の為、いちいち利用者さんの持ち物など見えるところに名前はない。

特徴のある利用者さんの名前はすぐに頭に入るがほぼ自立している利用者さんの名前は入りにくい。

なのでこれもノートにテーブルの配置を書いていつも座る場所に名前を書いていった。


家のテーブルを挟んで息子と勉強する。


離婚してから思えばこんな事が何回かあるなぁと思った。

女手一つで育てるのに資格を取ってまた上の資格を取って、異動して勉強して。

いつになったら落ち着くかなぁ…。


不安と言うわけでもないが

いつも何かに追われているような…


突っ走ってる感と言うか…。


とにかく前を向いて走っていた。


『疲れた』と言って止まるのがなんだか怖かった。