◎前回のお話




筆記テストが合格すると、今度はすぐに実技の勉強に取り掛かった。


筆記の合格発表から実技テストまでの時間は約2週間程しかない。


私はすぐに先輩からもらったビデオを見た。


3年間いろいろな利用者さんを見てきたからどう身体を動かしたらいいかはある程度分かると思っていたが、実技テストは声掛けが難しいと言う印象だった。

ビデオを見る限り1つ1つの介助に『気分はどうですか?』『めまいはありませんか?』と、聞いている。


職場の同僚は実技試験免除の講習を受けていたので、同じデイサービスで受けるのは私ともう一人の先輩。

同僚に手伝ってもらって仕事が終わった後に練習をした。

家に帰ると息子にも手伝ってもらう。


過去問の内容を見て『今年は車椅子介助かな?』と受けるスタッフと予想しながら練習しているうちにあっという間に実技試験の日が来た。


私は再び東京に向かった。

今度は都内の中学校で試験だった。

学校に着くとまず携帯電話を預ける長蛇の列に並んだ。


試験が終わるまで一切携帯電話に触れないのだ。

携帯電話を預け終わると今度は体育館の中に入った。

その中も人だらけだ。

受験番号順に割り振られ並ぶ。


まだ3月頭で体育館の中は寒かった。


並んでいる間、頭の中でどんな問題が来てもいいようにシュミレーションした。

何が来るんだろう…

まさかシーツ交換とか来たら嫌だな…

とか思いながら、多めに練習しておいた車椅子介助を思い返す。


そろそろ試験の時間…。

女性は体育館の舞台裏あたりに仕切りがありそこでジャージに着替えた。

私も職場で着ているジャージとナースシューズを履いた。


着替えたら試験…。


どんな場所でどんな事をするんだろう…。


出来れば一発合格したい!


『それでは移動します。』


受験番号順に並べられた私はよく分からないまま試験官のあとについて行く。

そして教室に入れられた。


ここで何をするの?


すると1枚のプリントが手渡された。

どうやら実技の問題らしくそれを覚えてくださいとのこと。


確か時間は10分程度。

そんな短時間に!?

気持ちは焦る。


そして私語厳禁…


この時の課題はこんな感じ。


片麻痺のあるAさんは一部介助で歩行も可能。

テーブルに移動してもらい、書道か塗り絵のレクリエーションを行ってもらう。


【車椅子じゃない!】

予想をだいぶ外れた問題にビックリしながら、新たな脳内シュミレーションをした。

『では、試験会場に移動します。』


またここで数人に分けられ教室前の椅子に座らされた。

一人目の人が入っていくが中は見えないし、ドキドキで声もまともに聞こえない。


ちゃんと問題記憶した?

大丈夫?

わからなくなったらどうしたらいい?


そんな事を考えている間にあっという間に前の人は終わり、私の番が来た。


教室のドアを開けると真っ先に目に飛び込んできたのは壁の白さだった。