◎前回のお話





息子のことでいろいろありつつも、私の国家試験の受験日も刻々と近付いていた。

空いた時間は小さな問題集に赤いフィルムを挟んで繰り返し読んだ。

一緒に受ける友だちも休み時間に勉強した。

受験場所は全く別の所になってしまったがお互い一発合格出来るよう必死だった。

同僚のTちゃんも母子家庭。2人の男の子のママだった。

休みが会うと一緒に遊んだりしていた。

同じ母子家庭同士、子ども達の学校の悩みも話したりしていた。


お互いお金が無いのは同じ。

早く国家資格を取って正社員になって生活を安定させたかった。


職場はと言えば利用者も増え毎日が忙しかった。

何だかんだ私も3年働いた。


最初の施設はたったの2ヶ月しか続かなかったが、やはり何でも『向き不向き』があるんだなぁと思った。


3年も働くと私も新人指導や実習生指導にあたる。

デイサービスでは実習生指導の方が多かった。

資格取得の為に来る人から、教員免許を取るために実習に来る人もいた。

ちょうどその頃からか教員免許取得の人の老人ホーム実習が始まったんだと思う。

やはり増えつつある発達障がい者への理解や配慮なのだろうか。


しかし今まで教員免許を取得しようとしていた人が急に老人ホームへ行け!と言われても…

実習をしながら戸惑いも見られた。

ただボーッと見るだけになってしまう人もいればたくさんコミュニケーションを図る人もいる。

『普通に動ける人も、声も出せない人もコミュニケーションを図れば反応してくれるよ?
やってみて。』

そう声をかけやってもらう。

最初は返事の返ってこない利用者さんに声をかけることに苦戦していたが、徐々にちょっとした表情の変化がわかるようになってくる。


『最初、どうして実習先が老人ホームなんだろうな…と思ってました。』

と言う実習生もいた。

『そうだね。でもここを教室だと思って見てみて。
ちゃんと自分の気持ちを伝えられる利用者さんもいれば、それが出来ない人もいる。

その中でいざこざがおきたりもするの。

声掛けで両方を守ってあげなきゃいけないし中立でなきゃいけないの。

これって勉強にならないかな?』

そう言うと頷いてくれた。


『そして何よりどんな失敗も笑って許しちゃう心を養って行ってね。
子ども達が失敗を恐れないように育てて挙げられる先生になってね。』

実習の終わりにそう声を掛けた。


『はい。ありがとうございました。』


そうして実習を終えていく。


あの頃携わった実習生達はみんな頑張っているだろうか。


これは今の話だが先生の仕事はとても大変だと聞いた。

授業の他にも部活、授業の用意、繁華街の巡回、提出書類…そして40人程の生徒を1~2名で見ていかなければいけない。

休みもない。

そして上下関係もあり、長いものには巻かれろ精神になってしまう人も多いだろう。

前にも書いた気もするがまず40人を1人で見るなんて無理だ。

そしてちゃんと休みが取れる体制を作って行かなければいけないと思う。

良い教育を提供するための改善は今成されているんだろうか。