◎前回のお話





入学式前、クラス分けや教科書の配布の為のオリエンテーションがあった。

息子は近所の友だち数人と新しい自転車に乗って学校へ出掛けた。


私が通っていた頃はまだ4クラスあったが

息子の時には2クラスになっていた。


クラス分けでは友だちと同じクラスになることが出来、本人安心した感じだった。


『教科書持ち帰ってきたでしょ?

名前書くから貸して!』


『もう書いたー!』


『え!??』


教科書の裏を見ると息子の大きさバラバラの名前が油性マジックで書かれていた。


あぁ〜…とは思ったが


『ま、いっか。自分のだし。』


と息子に返した。


『先生は?』


『女の先生。』


『どんな感じ?』


『うーん…若い。』


若いかぁ…。初かもしれないな。


でも若いからこそ一生懸命かもしれないもんな!


『入学式には見れるもんね?』


私も息子のジャージに名札を縫い付けたり

雑巾を縫ったり、入学の準備をした。


入学式の日


息子が学校へ出掛ける前に実家に制服姿を見せに行った。

庭で写真を撮ると元気に自転車を漕いで行った。


私は式に合わせて後から車で学校へ出掛けた。


校庭に車を停め体育館へと歩く。


昔、友人達と過ごした学校に息子が入学する。


私たちが歩いた廊下を息子も歩く。


私たちが楽しくて毎日がキラキラしていたように

息子もここでたくさんの思い出を作って欲しいと思った。


体育館の入口で名簿に丸を付け


『本日はおめでとうございます。』


と、先生に言われた。


『ありがとうございます。』


と頭を下げる。


スリッパを履き後ろに用意された椅子に座った。


『あ、柏崎さん!』


『こんにちは。』


友だちのお母さんと挨拶をする。


息子の通う中学には、息子の通っていた小学校とその他3つの小学校から生徒が集まる。


他の3つの学校も子どもの数は少ない。


並べられた保護者席も余裕があった。


10時を回ると式が始まる。


入学する生徒も卒業式の2倍だと探すのも大変だ。


探せた頃にはもう斜め前だった。


一人一人名前を呼ばれその場に立つ。


1組の先生はベテランの男性の先生。

息子の2組の先生は

確かに息子の言う通りの若い細身の女性の先生だった。


全員がお辞儀をしまた椅子に座る。


それが終わると教員紹介だ。


息子の普通級の先生は分かった。


私は支援級の先生の紹介を待った。


支援級の先生の紹介は最後の頃にやって来た。


年配の体育会系の女性の先生だった。


小学校の支援級の先生とはまるで雰囲気が違う。


どんな先生かな?


すると隣に座っていた息子の友だちのお母さんがコッソリと言う。


『あんまり評判よくない。』


『え?』


友だちの娘さんは既に中学を卒業していて、中学校の中の様子を少し知っているようだった。


『でも…』


【私が校長のIです!】


大丈夫!きっと大丈夫!


だって校長は


私の恩師だもん!


この時、校長になっていたのは私が中学の時お世話になった先生だった。


どんなに荒れようがグレようが不登校になろうが


体当たりしてくれてた先生だもん!


私が子どもの頃、先生はまさに聖職だった。


その先生が校長だから大丈夫!


きっと楽しい3年間になるよ。


カチカチになる息子の背中を見ながら

私はこの中学生活に希望を持っていた。