◎前回のお話




コンビニのATMにカードを入れると、融資可能額が増えていた。

ボタンを押すまでに時間がかかる。

押すことを躊躇しているのか心臓の音が耳まで届く。


怖い…

怖い…


でもこれが無かったら制服が買えない…



【ご利用ありがとうございました】


と、ATMの画面に表示される。


まだ心臓の鼓動は止まらなかった。


目眩がするような感覚がした。


出てきたお金を財布に入れるのがなんだか嫌で、横にあった封筒を手に取りその中にしまった。


その封筒を抱え車に戻ると大きなため息が出た。


借りちゃった…


いつ返し終わるだろう…

そんな不安な気持ちと

これで制服を買ってあげられる

という安堵した気持ちが入り混じって


車のシートに体をゆだねる。



何はともあれお金は手配できた。

次は普通級にするのか支援級にするのかを選ばなければいけない。


この2年間で息子のIQは確実に上がっていた。


まだ言葉がたどたどしかったりもするが

支援級の先生のお陰で小6までの学習も出来ていた。


『先生のおかげです。

ここまで来れたのは。』


心から感謝していた。


『息子さん、きっともっと出来ます。』


『本当ですか?』


『支援学校に行ったら優等生です。』


『…?

支援学校に行ったほうがいいってことですか?』


『違います。

行かない方がいいです。

行っちゃったら優等生で終わってしまいます。』


『もう少し上を狙えるってことですか?』


『もし支援学校を選んでしまったら成長することをやめてしまうかもしれません。』


『じゃぁ中学は普通級を選んだ方が良いんでしょうか?』


『中学も支援級を使うことをおすすめします。』


『何故ですか?』


『もし、心にゆとりがなくなった時息子さんはパンクしてしまいそうになるかもしれない。

そのクッションの役割が支援級です。

中学はもっとやる事が高度になります。

そんな時駆け込める場所があった方がいいと思います。』


ああ、この先生が息子の先生でいてくれてよかったな…

そう思った。


どんな時も子どもたちの目線で考えてくださる先生に感謝しかなかった。


『分かりました。支援級を希望します。』


『ちゃんと申し送りもしっかりさせていただきますね!』


『先生には2年間本当にお世話になりました。

もっと早く出会いたかった…』


『中学に行っても何かあれば相談してください。』


先生のおかげで未来に光が見えた。


『ちゃんとみんな大きくなって免許も取れて社会人になりますよ。大丈夫。』


未来のことを考えても何も見えなかったのに

先生に出会って先が楽しみになった。


息子も私の心も救ってくれた先生だった。


卒業まであと少し…