◎前回のお話




私はクリーニングされた制服を取りに行くとすぐに県内で一番大きな支店に向かった。

そこは私が以前スクーリングに来ていた場所…

夢と希望を持っていたあの時の感情を思い出すと腹立たしかった。


『お疲れ様です。』

事務所に入ると女性スタッフが座っていた。

『〇〇支店で働かせていただいていた柏崎と申します。もうあそこには行きたくないのでこちらに制服をお届けにきました。

私を辞めさせてください。』

女性スタッフはビックリしたようで

『まずはお話聞かせてもらっていいですか?』

『はい。』

私は女性スタッフに制服の入った袋を手渡そうとして押し返された。

『何があったんですか?』

『何があったんですか?って…
なんの報告もないんですか?』

『〇〇支店ですよね…』

『はい。あるスタッフが利用者を叩きました。』

『え?誰ですか?Eさんですか?』

『いえ、Dさんです。』

『え?』

私はセンター長への不信感も増大した。


『たしかにEさんにもいびられました。

でも辞めたくなった一番の理由はDさんです。

そうゆう報告も行かないんですね。良くなるはずないですね。』


スタッフは眉を八の字にして

『本当に申し訳なかったです。

柏崎さん、これだけハッキリ言える人辞めたら勿体ない。続けてもらえないですか?』


また同じ事を言われた。


『大変申し訳ないんですけど、上が変わらなかったら何も変わらないと思いますよ。

そしてここには夢を持って高いお金を払って勉強をしに来る人がいるんですよ。

これでいいわけないですよね。

必ず改善した方がいいと思います。』


私は無理矢理制服を預け事務所を出た。


マナーモードにしておいたケータイにはセンター長から何度も電話番号が残されていた。


さて、ここまま無職というわけにはいかない。

私はすぐに介護職をしているMちゃんに連絡をした。


私が施設勤務が決まった時に

『なんでうちに来てくれなかったのよー!』と言われたからだ。


『もしもし、M?私、仕事辞めちゃった!』

『えー!?』


Mちゃんはすぐに事務の人に私が面接したいことを伝えてくれた。


『Mの働いてるとこはいい雰囲気?』

『うん、いいよ!給料は安いけどみんないい人。』


その職場はそのへんでは利用者が多いことで有名だった。


『安くても全然いいよ!ちゃんと仕事が出来たらそれでいい。』


利用者をいじめたりスタッフをののしったり

そんな異常な職場じゃなければ文句なんてない。


数日後、履歴書を持ってMちゃんの働く施設へ面接に向かった。


『よろしくお願いします。』

私は面談室のような小さな部屋に通された。


事務長さんは履歴書を手渡すと静かに封筒を開け見出した。


私の顔をチラッと見る。

『Mさんの知り合いなんですか?』

『はい。昔からの…』

『資格は…ヘルパー2級ですね。

…と、デイサービスは2ヶ月?』

『あ、はい…いろいろありまして…』

また履歴書と私の顔を目が行ったり来たりする。


『…とりあえずは施設を見学してみますか?』

『はい!』


事務長さんのあとをついて施設内を見学した。


たしかに利用者の人数が多い。

でもスタッフが怒鳴る様子なんて見られなかった。とても穏やかだった。


一通り見て『どうでしたか?』

と、聞かれた。


『とても雰囲気がよくていい感じでした。』


『では結果はお電話でお知らせします。』


『はい!よろしくお願いします!』



玄関先にはMちゃんが下絵を書いた貼り絵が飾ってあった。


私も明るくMちゃんと働きたいな…そう思いながら家へ帰った。


2日後、その職場から電話が入った。

『もしもし!』私は明るい声で電話に出た。


『もしもし、柏崎さんのケータイでよろしいですか?

面接の結果なのですが…』


『…はい………はい。…………そうですか…』




不合格だった。




例えどんな施設であろうが、たった2ヶ月で辞めてしまうなんてありえないし

そんな人間は雇えない…

そんな答えだった。


正直この世界は引く手あまただろうと思っていた。


『仕事…どうしよう…』


シングルマザー…無職……


最悪のシュチュエーションが出来上がった。