◎前回のお話




『おはようございます。今日から宜しくお願いします。』

デイサービスに繋がるドアを開け、利用者を迎える準備をしながら動いていたスタッフさんたちがコチラも見た。


『よろしくお願いします。』


何となく独特の空気を感じた。


『よろしくね!』


明るく話しかけてくれた女性スタッフもいた。


『はい!』


『この時間はお昼寝用の布団を用意したり、お昼に使うお絞りを用意したりするの。』


テーブルの上で濡らしたタオルをくるくると巻き、お絞りを温める機械に入れる。

他にも前日乾かしておいた浴用のタオルを畳んだりしている。


見様見真似で横についてやっていると


『次は送迎行きます。』

『は、はい!』


ワゴン車に車椅子を積みスタッフ2人で乗り込む。


初回は覚えるためもう1人乗ってくれた。



1件目の家に着くまでいろんな質問をされた。


『ねーねー、柏崎さんは介護の経験ある?』

『あ、初めてです。』

『そうなんだー。』

『体重何kg?』

『え?』

『いや、動けるかなー?と思って。』


クスクス笑いながら聞いてきた。


なんだか嫌な感じだなー…


それが最初の印象だった。


送迎車は全介助の利用者さんの家に入っていった。


『おはようございます。』


利用者さんの家族に声をかけた。


『あら、元気なスタッフさんね。よろしくお願いします。』


そう言われ笑顔になった。


一緒に介助に入るスタッフさんが縁側から利用者さんのいる部屋に入った。


利用者さんの家族が居なくなるとこう言った。


『あー、この人嫌なんだよなー。』



私は二度見した。


利用者さんは寝たきりで言葉はうまく話せない。

でも目でコチラを見て


『あー!あー!』と言う。


完全に聞こえている。


理解している。


なのに…



なんなの!?この人!!?


とは言え、私はこの利用者さんを施設に連れていくこともままならない未熟者。


『あー…めんどくせー…』


耳を塞ぎたくなるような言葉を聞きながら

その人を車に乗せる方法を教わる。



覚えるまで…覚えるまでの我慢…。


『いってまいりますー』


そう作り笑顔で言うスタッフに背筋が寒くなりながら、その利用者さんの横に座り手を握った。


利用者さんはコチラを見るとホッとした顔をした。



スタッフさんたちはとてもイライラせかせかしているようで

利用者さんの目線から隠れる場所ではピリピリしていた。


とんでもない所に来てしまったのでは…



私は転職初日で介護業界に入った事を後悔した。