◎前回のお話






『はい、もしもし。』


お母さんが電話に出た。


『あ、〇〇さんのお母様ですか?

いつも桃子がお世話になっております。


へ??』



へ?


何やら様子がおかしい。



『…はい。



……はいはい。』



『どうしたの?』



お母さんは険しい顔で後ろを向いた。



『…で、怪我の具合は?』


怪我?



『ねえ!怪我したの?』


受話器を取ろうとした手をお母さんが払い除けた。



『そうですか。…その旨は桃子に伝えます。


ただ、別れる別れないは本人たちですので。


お大事に。』



カチャ。



お母さんが受話器を置いた。



『怪我とか

別れるとか…何?』



『あちらのお母さんが、〇〇さんが桃子との付き合いに悩んで事故おこして鎖骨とあばら骨1本ずつ折ったって。

別れてくださいって。』


『え?』


頭が真っ白になった。



急いで彼にメールを送る。



【今、お母さんから電話が来て

骨折したって…大丈夫??

それと別れるって何?】


返事はすぐに返ってきた。


【仕事中にミスして事故った。

別れてはそのまんま。】



【急過ぎて頭ついていかないんだけど…

あ!借りてるDVDとかはどうするの?】



【全部好きにして。さようなら。】



あまりにあっさりした最後だった。



ソファーに座りながら全く涙が出ない私を見たあ母さんがこう言った。



『あんたさ…全然幸せそうじゃなかったよ?』


『へ?』


『彼と会ってる時心から笑ってなかったよ。』


お母さんはちゃんと見ていた。



私はこの3年間、ひたすら再び【母親】になることを望んで生きていた。


好きとか嫌いとかじゃない。


息子の為に幸せな家庭が欲しかった。



でも旦那との離婚から自信をなくし


お互いのズレや気の合わない部分を見付けても


彼に強く言えないでいた。



『あんたが旦那との居た時、なんで結婚許したと思う?


あんたが幸せそうな顔してたからだよ。


結婚はあんたが幸せだと思わなきゃしちゃダメ。』



お母さんに言われた言葉が胸に突き刺さった。



『私、ホントに自分に自信がなくなってたの。


彼との合わない部分が見えてもきっと我慢してたらいつか合う時が来るって…


息子が好きでいてくれるなら私も好きになれるって…』



とはいえ、息子に別れたことを伝えなければ…


家に帰り息子に伝える。



『ごめんね、お母さん〇〇とお別れしちゃった。

もう会えないんだ…』



『えー??

そうなのー???』



息子はあっさりとこの程度。


拍子抜けしてしまった。



私は今まで何を頑張って来たんだか…


そもそもこの始まりは旦那か…



真夜中、やたら旦那に文句が言ってやりたくなって


旦那のケータイの番号を押した。