◎前回のお話




入学式も終わり息子は小学校へ通いはじめた。


朝は登校班の集まる場所まで連れていく。


『行ってらっしゃい』


と送り出し手を振る。


それが終わると家に入り布団に潜り込んだ。


無気力で何も出来ない。


目をつぶると嫌な思い出が甦って呼吸が早くなる。


布団の中で丸まり眠ることで抑えようとした。


『ただいま!』


午後になると息子が帰ってくるが起き上がれない。


『おかえり…』


『お母さんどうしたの?』


『何でもないよ?ごめんね…
ただちょっと具合が悪くて…

ばぁちゃんとこ行ってご飯食べてきてくれる?』


『わかった!』


そう言うと宿題を持って実家に向かった。



私はただ天井を見つめて過ごす。


ただただ動けなかった。


何も食べたいとも思わなかったし


睡眠欲しかわかなかった。




『お母さん』



真っ暗な部屋で電気も付けず


ただ真っ暗な天井を見つめていると


息子がドアをあけ光が一筋差し込んだ。



『お母さんご飯!』



私の頭の上に母が作ったお弁当を置いた。



『大丈夫だよ。お母さんは平気。

あんただけちゃんと食べればいいの。』



そう言うと


『食べなきゃ元気にならないよ』


と、顔の横に持ってくる。



『ありがとう…じゃぁおにぎり一つね?』



そう言って無理に口に入れた。


そうすると笑顔になる息子。



残りはラップをして息子の朝ご飯にした。




心配する両親もちょくちょく食材を冷蔵庫にいれてくれた。


でも食べられない。



私が太っているから違う人を好きになったのかもしれない…


私が醜いから…


鏡を見るのも怖くて


陽の光が怖くて…


布団にこもることしか出来なかった。



私が1人になった事を知った友達が外に連れ出してくれることもあった。



『何で泣かないの?』



と、友達が泣いてくれた。



友達といる時間は楽しいからだよと説明した。


でも帰ると涙が出て


吐き気がして


倦怠感が止まらない。



それでも息子は私にご飯を勧めてきた。



『ありがとう。』



息子の優しさがはがゆくて



どうして私はこんなお母さんなんだろう…と苦しくなった。



旦那と会わなくなって10日程過ぎた頃だろうか。



フラフラになりながらトイレに入った。



用をたし紙で拭くと違和感があった。



恐る恐る拭いた紙を見る。




紙の中にウミガメの卵のような白い玉があった。


そこには白いヒモが繋がっていて


長いヒモの先には手のひらより小さい塊が付いていた。




『何…これ…』



怖くなった私はそれを紙に包み袋に入れた。



布団に戻りさっきのは何だったのか…




よく考えた。



そして旦那にメールをした。




【私、妊娠してたかもしれない】と…。