◎前回のお話



葬儀前後、控え室でお茶を出したり挨拶をしたりしながら過ごした。


その度に義母が

『うちの息子の嫁です。』


と言った。



頭を下げながら


もうすぐ嫁じゃなくなります…と心の中で付け加えた。


『あら!感じのいいお嫁さんね。』


と言ってくれる方もいた。


葬儀中、旦那が横にいたかは思い出せない。大して話さなかったかもしれない。


覚えているのは葬儀場の庭で


『やりなおす?』


と私が聞くと


『やり直さない。』


と言われたことだ。



火葬場で義父の骨を拾い終わるまで私は妻の仕事をした。


全て終わりSちゃんにも挨拶をした。


『お世話になりました。』


『お疲れ様でした。またお茶でもしよう!』


『そうだね。』


『ねぇ、桃ちゃん…なんかあった?』


『どうして?』


『なんかホントに変わったから…』



私は離婚をすることを打ち明けた。



『そうなの…。でもまだ分からないんでしょ?』


『うーん…でもほぼほぼ決定かな…』


『私は桃ちゃん応援する!』


『うん。ありがとう。』



そう話してSちゃんと別れた。



その後旦那の実家に行き、旦那が2人が離婚する話を義母に伝えた。


私は『あの嫁』と言われた。



あの嫁か…


浮気され…借金され…


確かにろくな嫁じゃないけど…




私はまた旦那の車に乗り家に帰った。


息子は両親に連れて帰ってもらったので2人きり。



『あ…』



帰り道、毎年一緒に来ていたお花見会場の横を通った。



『ねえ!寄ろう!』



『あ、うん…』



喪服姿のままピンク色の夕暮れの中に吸い込まれるように入り込んだ。



『毎年楽しかったね。』



『うん。』



『もう来年は別々だね。』



『…うん』



私が手を出した。



『最後だから…』



『うん…』



2人で手を繋いた。



涙が溢れてきて景色がピンク一色になる。




『さようなら。』