◎前回のお話





次の日、私は時計を見ながら9時になるのを待った。




2、3分だって長く感じた。




まだかな…




早く今思っている数々の不安を解消したい…




電話の前に座り今までの事を思い返す。どう説明するかを頭の中でシュミレーションした。




ふと時計を見ると9時を過ぎていた。




受話器を持ちドキドキする気持ちを落ち着かせた。



『よし…』電話番号を確認しダイヤルを押した。




【プルルルル……プルルルル……】



呼び出し音が鳴る間も鼓動が止まらなかった。




【はい。〇〇市〇〇課です。】



『あっ!あのっ……』



ドキドキし過ぎて声が上擦る。



『あのっ……子どもの発達についての相談がしたいのですが…』



【お子さんはおいくつですか?】



『5歳です』



【どこが変なんですか?】





は?





待て?



私はこの質問に違和感を感じた。





『あのー…』





【はい?】




『私、今思い悩んでやっとの想いでコチラに電話したんですよ』





『その気持ちを【どこが変なんですか?】って言葉でへし折られました。』




その時1番聞きたくない言葉だった。




【普通】【変】【バカ】【人と違う】




もうウンザリだった。





『すみません。コチラでは相談しても何も解決しない気がします。



専門の病院を教えてください。』






【え?いいんですか?】




『はい。結構です。』




対応してくれた市の職員は戸惑った様子だったが、その時の私には言葉一つ一つがキツかった。




【県内に発達に関する病院は2つあります。】



私は2件ともの連絡先を聞き



『よりよく調べてくれる病院はどちらか分かりますか?』




【そうですね…。専門でやっている病院は大田原市にあるK大学クリニックにある言語聴覚センターかと思います。】




『分かりました。ありがとうございました。』





そう言い受話器を置いた。




次はその病院に電話をする。




【はい、K大学クリニックです。】



『すみません、そちらに言葉や発達に関する科があるとお聞きしてお電話したのですが…』



【言語聴覚センターですね?受付にお繋ぎいたしますので少々お待ちください】



丁寧な応対で安心感を感じた。



【はい、お待たせいたしました。言語聴覚センターです。】



『あの、息子の言葉の発達のことで是非1度そちらで診ていただきたいのですが…』



【お子様はおいくつですか?】



『5歳です。』



【少々お待ちください。】



保留中の音楽が鳴る。



【もしもし、代わりました。】



今度は男性が出た。



【お話はお聞きしました。検査にあたりまして注意が2つあります。】



『はい?』



【まず、検査には2日間かかります。お住まいの地域はどちらですか?】



『〇〇市です。』



【ですと、お近くのC病院にも小児発達に関する科がありますがどうでしょうか?】



『いえ、私はこちらの病院で診ていただきたいです。』



【分かりました。ではもう1つ。



検査の予約が最短で3ヶ月先にしか取れませんがよろしいですか?】




『え?そんなに?』




【そうなんです。今、かかるお子さんがとても多くなっていまして…】




今すぐ何かが変えられるんじゃないか…そう思っていたのに3ヶ月待たなきゃいけないのか…



でも話し方の雰囲気はかなり良く、私は



『待ってもいいです。予約させてください!』




と、すぐに返事をした。




【では3ヶ月後の〇月〇日、お待ちしております。】




『はい!よろしくお願い致します。』





私は静かに受話器を置いた。




息子が伸びるなら


息子を伸ばす方法が分かるなら何でもしよう。



待つんじゃなくて動こう。




私はカレンダーをめくり3ヶ月後の予約日にマルを付けた。