◎前回のお話



幼稚園に入園し、お試し保育期間を経て無事に嫌がることなく通園することが出来た。


幼稚園に行くと女の子や年上のお兄ちゃんお姉ちゃんがお世話をしてくれる様子。


幼稚園での出来事をうまく説明は出来ないが笑顔で帰ってくるなら楽しく通えているんだろう…そう思い安心し送り出していた。


息子の担任は私の中学時代の先輩で、何かあればすぐに相談できた。


本当にありがたかった。


夏休みにはプールを出し、知り合いの子達も呼んで利用が出来た。



近所の友達も誘い一緒に遊ばせた。



この時期3歳児検診に参加する。


言葉のことや不器用さを心配していることを相談したが



『そう…お母さん心配だったわねぇ…でももう少し様子見てみませんか?小学校に入ってからでも遅くないですよ。』



『はぁ…』



納得の行かない回答ではあったが、だから何をしたらいいか分からず


【とりあえず幼稚園に行ってるし…】とあまり考え込まないようにした。




二学期を迎え秋の運動会の季節。


人数は少ないが、とてもアットホームな運動会だった。



場所取りの心配もなく秋の空気を感じながら爽やかに行われた。



冬は雪遊びや発表会、クリスマス会。


全てが穏やかでアットホームで『あぁ、入れてよかったなぁ』と思った。



そんな時に入院中だった祖母が亡くなった。



入院中、ますます認知症は酷くなり最後は息子のことが分からなくなってしまった。


それでも話を合わせ『うん、そうだよ。〇〇くんだよね。』と話をした。


息子がおもちゃの車を渡すと


『〇〇くんのだからいいよ。』と、全てを忘れてしまっても優しさだけは残してくれた祖母…。



死因は窒息死だった。



徘徊中に頭をぶつけ脳梗塞を引き起こし、内科の病棟で治療を開始した矢先だった。


寝ている時に吐いたものが詰まって窒息…。



悲しい最期だった。




祖母の葬儀は葬儀場で行った。


遺体を棺に入れ最初の晩、母と棺の横に寝た。



亡くなった祖母、母、私と三世代が一緒に寝ることなんて初めてだったかもしれない。




『ねぇ…お母さん。』



私から口を開いた。



『何?』




『私ね…息子のこと叩いちゃってたの…』




母は何も言わない。




『息子を生んだこと後悔した日はないの。



でもね…自分が思い描いてたみたいな成長じゃなくて、つい周りと比べちゃって


気が付けば怒鳴って叩いてた…


旦那に【気付いて!この苦しさに気付いてよ!】って気持ちから怒鳴っちゃったり


なんで本に書いてある通りに成長しないの?どうして!?って…


周りの子達にもどんどん追い越されてく息子を見てるとはがゆくて…』




私は布団に横になりながら溢れる涙を止められなかった。



『せっかくこんな機会だから聞いて欲しかったんだ。


私がもう叩かないように…』



『ばぁちゃんが話す機会をくれたんだね…』



そう母が言った。



『うん。』



祖母の葬儀は無事に終わり、息子は三学期を迎えた。


卒業の季節。



少ない人数の年長さんを送り出す。


息子は仲良くしてくれた年長さんが卒園してしまうことをよく理解しておりボロボロ涙をこぼして泣いた。



1年間で心が成長した息子。


ゆっくりでいい。ゆっくりでいいから成長して欲しい…



そう思っていた矢先



『私、3月で園を辞めるの。』



『え!??』




息子の担任の先輩の言葉にびっくりした。



『凄く安心して預けられたのにどうして??』



急に不安になってきた。



先生が変わって環境が変わったら息子の成長はどうなるのか…



そして先輩はなぜ急に幼稚園を辞めてしまうのか…



いろんな不安を抱えたまま息子の年少期は終わった。




束の間の春休みを楽しみ、息子は年中さんになった。



先輩が辞めた後、教員は増えず完全家族経営のような形になった。



果たして大丈夫なのだろうか…



この後不安は的中する。