◎前回のお話



翌日、朝から洗濯機を回しベランダに干しながら

息子のいないぽっかりと穴の空いたような感覚にとらわれていた。



『変な感じだね?』


と旦那に言うと


『そうだなぁ。早く帰ってこれたらいいな…』


と、言った。



面会時間は午後の2時から。


私は自転車に乗り病院まで向った。


病室へ行くとまだ点滴してベッドに横になっていた。



『来たよー』と声をかけるとベッドの上で立ち上がり柵から手を伸ばして喜んだ。


柵を下げ抱っこするとナースさんが来た。



『昨日はご迷惑おかけしませんでしたか?』


と声をかけると


『最初は仕方ないですよー。でもその後はぐっすりでよく眠ってましたよ。』


と言われた。


頑張った、頑張った。偉いねと頭をなでた。




それからしばらく、点滴のと吸入で治療しながらの入院が続いた。



私はぴったり2時から8時まで毎日付き添った。


息子もだんだんとその中での生活に慣れてきて同室の子ども達と遊ぶようになっていた。



ある日は面会へ行くとベッドにおらず、ナースステーション前の面会室でかくれんぼをして遊んでいた。


『こらー!病気で入院してるのに何やってるのー!!』


と怒ると


『キャーーーーー!!!』と子ども達同士で狭い物置に入ってキャッキャしていた。



すっかり元気になったなー…と息子を見ながら笑顔になった。


夜、面会時間ギリギリになると、ナースステーションでフーと空気を吹き込んでピンポン玉を持ち上げる訓練をする。


息子もお兄さんお姉さんにまざって一緒にやっていた。


『ママ、トイレ行ってくるからね。』そう言うと帰ってしまうのが分かるのだろう。


1度やるのを止め付いてこようとする。


『これ頑張ってやらないと退院できなくなっちゃうからフーフーして?』と促し、ナースさんに任せて帰宅した。



ナースステーションの後から帰るのが見えないように出ようとすると赤ちゃんを抱えたお母さんがいた。


『ひとりでもお泊まり出来ちゃうからいいですね?』


と声をかけられた。


『最初は大泣きだったんですよー』


『今は元気に走り回ってたりしてますもんね?』


『ですねー。みなさんに迷惑かけてないかヒヤヒヤですよー』


『いえいえ、元気でいいですよー』


お母さんは赤ちゃんをゆっくり揺らしながら話を続けた。



『小さいと苦しいとか辛いとか痛いとか分からないから大変ですよね。』


『そうですね、赤ちゃんは特にね。ママ大変だ。』


『 今日も寝てくれたら私も一緒に寝ます。』


そう言い疲れた笑顔で笑った。


『無理しすぎずにね。』


『はい。ありがとうございます。』


お母さんはしばらく廊下で赤ちゃんを抱っこしながらあやし部屋へ戻って行った。



ナースステーションのすき間から息子を見ると同室のお友だちと楽しそうにピンポン玉を吹いていた。


2歳って急に成長するんだなぁと見ながら思った。



それから数日後、無事に退院になった。


同室のお友だちは寂しそうにしていたがその子ももうすぐ退院する予定のようだった。



入院の費用は足りないところは親に借り支払った。




私たちも親として成長しなければ…


早く借金を返し終わらせて貯金しなければ…



これからやってくる入園、入学、進学…



願わくば2人目。



1つ1つクリアしていこう。



新居に引っ越して最初の試練はこうして幕を閉じた。