それはある日突然、何の前触れもなくやってきた。



『カタン』



玄関のポストから音がした。




掃除をする手を止めて玄関に行く。




公共料金の手紙やダイレクトメール…




『ん?』




縦長の茶封筒があった。




宛先は旦那だが




送り主は書いていなかった。





しばらくテーブルの上において眺めていたが妙に気になり手に取った。





宛名は力強い男性の字で書かれていた。





よし。




私はハサミを取り出し開封してみることにした。





ハサミで切り中を見ると手紙が1枚。




カサカサと音を立てて開かれた手紙に目をやると……






『お前に貸した50万円を今すぐ返えせ。



返さなければヤ〇ザを送り込むぞ!      






『何これ?』




  借金返済はわかった。




しかし後半は………脅迫じゃないの?




余りにも衝撃的な内容に言葉を失った。      




借金はいったいどのくらいあるのか。



どこから借りているのか…




全てを知らなきゃいけない。じゃなきゃこの状況は変わらない。





とは言え、今回のはまた違う。




旦那が帰ってきたら聞くしかない。




私は手紙の前に座り何も手につかないまま時間だけが過ぎた。






『プルルルル…プルルルル…』




ぼーっとしながら電話に出る。




『もしもし』



『もしもし。ご主人いらっしゃいますか?』



『おりませんが』



『手紙は届きましたか?』




ゾクっとした。



この人手紙の送り主だ…



『…はい。』



『そう、でお宅の旦那が借りた50万全然返済されないんだけど。』




『私は全く知らないのですが』




『知らなくても嫁でしょ?払ってよ。じゃないと手紙にも書いたけど


ヤ〇ザ送り込むよ!?』





なんなんだろう…


無性に腹が立ってきた。


私は脅される筋合いなどない。



その時私に電流が走ったようにシャキッとした。



次の瞬間、私は冷静に口を開いた。




『大変申し訳ございませんが、妻である私に借金をお支払いする義務はございません。


法律的にもです。このことは主人に伝えますのでお待ちください。



それからあなたのしていることは脅迫です。何か我が家に危害を加えた場合


手紙を警察に提出させていただきます。




それから今お電話で話していた内容は全て録音しております。



すぐにでも警察に持っていけますがいかがいたしましょうか?』      




『ふざけんな!!』      




『お借りしているお金の件は主人にキチンと伝えて返済させます。


では失礼いたします。』  





カチャ…




私は受話器を置いた途端に床に座り込んだ。