「川崎中1殺害事件」の闇の部分を考えるブログの3回目のテーマは、「実名報道とネット私刑(流失)」です。

  先日、発売された「週間新潮」の3月12日号に、川崎中1殺害事件の主犯と思われる18歳の少年の氏名と写真が掲載されました。(一緒に逮捕された17歳の2人については、匿名で顔写真もぼかしを入れています。)


  少年法61条は、「少年または少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住所、容ぼう等により、その者が当該事件の本人であることを察知できるような記事又は写真を、新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」と規定しています。
しかし、この法律は、戦後すぐの1948(昭和23)年にできたもので、罰則規定もありません。

13歳の少年を、17~18歳の3人の少年たちが殺害したのではないかと言われている今回の事件で、容疑者の氏名や顔写真を公表しないことに、疑問を感じる人も多いと思います。
しかし、法律を1つの雑誌が勝手に解釈して破るのも、どうかなとも思います。

一方で、現場検証に18歳の少年を立ち合わせるのに、ビニールシート製の箱やテント状のもので、18歳少年の体ごと覆って隠すような光景も奇妙に映りました。
顔を隠すのはわかりますが、警察署に入る時にすでに映っていた全身まで隠す必要はないと思います。

選挙権も、まもなく18歳から与えられそうなので、少年であっても18歳以上で、殺人などの凶悪事件で有罪が確定し(または起訴され)たら、顔や名前を公表するなどの法律改正をするのが、妥当ではないのかなと、私は思います。

<写真:上村遼太君殺害現場の多くの献花と現場検証>



  実名報道は第1次的にはマスコミの問題ですが、「ネットによる情報流失とネット私刑」については、私たちネットを利用する者に、直結する問題です。

ネット上に容疑者の顔写真や氏名があふれた一つの原因として、上村遼太君の友人たちが、「上村遼太君がかわいそうだ。何としても18歳の少年たちが犯人であることを知らせたい。」という、正義感のために顔写真や氏名を一斉にネット上に掲載したという噂があります。

百歩譲って、容疑者情報をネットにアップするのは、「警察やマスコミへの情報提供だった」としても、それはネット上でむやみにするのではなく、直接、情報提供するべきだったと思います。

 しかも、今回ネットに出たのは、逮捕された3人の容疑者の顔写真や氏名だけではありません。

未成年の兄弟・姉妹を含む3人の容疑者の家族の写真や氏名、住所、学校名、勤務先、18歳少年グループの逮捕されていないメンバーと思われる氏名や写真など、呆れるほどいろんな情報が出ています。
中には、被害者家族の構成、氏名、仕事など、プラベートな情報まで流失しています。

これらは、ネット流失を越えて、「ネット私刑」という言葉で言われています。
上村君へのあまりに残酷な殺害方法は許せないとしても、それを家族やグループメンバーなどに拡大して、「私刑」を行うのは、やりすぎだと思います。

さらに、一部のマスコミ報道やネット上で、18歳少年の母親がフィリピン出身であることが報じられたことで、「フィリピンへ帰りたい」との落書きが、少年の家の塀に赤ペンキで大きく書かれました。
ネット上の「私刑」が、バーチャル世界にまで及んできています。

殴られても蹴られても、警察や学校にちくりもせず、仲直りを信じて沈黙を守っていた上村遼太君は、きっと、ネット私刑を望んではいないと思います。

自由な情報を各自が発信できる手段であるネットは、「私刑」の凶器にもなることを、みんなで再認識する必要があります。
ネットが強制的に規制されて、「不自由なもの」にならないように、使用しなければ本当の自由は守れないのではないかと思います。


<故・上村遼太君が小学校時代を過ごした「島根県隠岐諸島・西ノ島」の風景>