歌舞伎俳優で、テレビや映画でも活躍した十代目・坂東三津五郎さんが、平成27(2015)年2月21日、インフルエンザがきっかけで、すい臓ガンが悪化し亡くなられました。歌舞伎俳優としては、これからの59歳でした。
2月25日に東京・青山葬儀場で行われた告別式には、尾上菊五郎さんをはじめ、市川海老蔵、山田洋次監督、木村拓哉さんなど、約5000人が参列しました。
最近、歌舞伎界の俳優さんの不幸が相次いでいます。
ネット上では、これは歌舞伎座を建て替えたことによる「歌舞伎座の呪い」だとの噂が出ています。
<写真:2013年4月に完成した第5期歌舞伎座(東京都中央区銀座4丁目)>
東京・銀座にある新歌舞伎座(第5期)は、老朽化のため平成22(2010)年5月に閉館した、第4期歌舞伎座を建て替え、平成25(2013)年4月に開場しました。
劇場は第4期歌舞伎座と酷似していますが、背後には29階建の「歌舞伎座タワー」がそびえたつ斬新なつくりです。
しかし、この建て替え前後から、歌舞伎界では不幸な出来事が続き、「歌舞伎座の呪い」という言葉まで一部で出ています。
最初は、平成22(2010)年11月に、市川海老蔵さんが暴走族グループとのトラブルに巻き込まれ顔面に大けがを負ったのがきっかけでした。
平成23(2011)年1月には、人間国宝の五代目中村富十郎さん(享年81歳)が直腸がんでなくなり、3月には東日本大震災が起こり、10月には人間国宝・中村芝翫さん(享年83歳)が肝不全で亡くなりました。
平成24(2012)年には、2月に四代目中村雀右衛門さん(享年91歳)が肺炎で死去し、12月には中村勘三郎さん(享年57歳)が急性呼吸窮迫症候群のため亡くなりました。
さらに、平成25(2013)年に入ってからは、歌舞伎座こけら落とし公演に出演予定だった市川團十郎さん(享年66歳)が2月に肺炎のため急死されました。
そして平成27(2015)年2月に、十代目・坂東三津五郎さん(享年59歳)が、すい臓がんのため亡くなりました。
これで、 歌舞伎座の建て替えが始まって以降、死亡した有名歌舞伎役者は、実に6人を数えます。
「歌舞伎座の呪い」がささやかれるのも、わかる気がします。
呪いの理由については、「後ろに高いビルができて、舞台の神様が降りてこなくなった」とか、「新歌舞伎座のこけら落としが、2013年4月2日(死にの日)だった」とか、「歌舞伎座を守っていた銀杏の木を切ったから」等々、諸説あります。
<写真:平成22年取り壊された旧歌舞伎座(第4期)>
実は、平成22(2010)年に閉館した第4期の歌舞伎座を建設した時にも同様のことが起こっていました。
東京大空襲で第3期の歌舞伎座が焼失した昭和20(1945)年から、昭和26(1951)年に建て替えが完了するまでにも、5人の大物役者が相次いで亡くなっているのです。
・15代目市村羽左衛門(享年70)
・12代目片岡仁左衛門(享年63)
・7代目松本幸四郎(享年78)
・7代目澤村宗十郎(享年73)
・6代目尾上菊五郎(享年63)
の5人が、病気などで立て続けにこの世を去ってしまわれたそうです。
中でも、片岡仁左衛門は、見習い人に薪割り用斧で一家もろとも惨殺されたそうです。
当時は、ファンや梨園(歌舞伎)関係者らの間で、歌舞伎座に棲む魔物の呪いで、
5人が人柱となったと囁かれたということです。
昭和・平成と、歌舞伎座建て替え時に相次ぐ訃報を前にすると、偶然では片づけられないような気がします。
亡くなられたみなさんの冥福をお祈りし、あとを継がれるみなさんの舞台での御活躍に期待したいと思います。