陰虚証とは 

 陰虚証とは、臓腑の機能が低下し、津液、精、血など陰液が足りなくなる証候。そのため体内の陽の働きを制御できなくなったり、滋潤・需養作用が低下したりする虚熱の証候で、虚証・熱証の性質を持っています。

 陰虚証では、津液・精・血のような陰に属する物質の虚損により体の内部から熱の症状が現れると同時に、陰陽学説から陰虚により陽が旺盛になり熱の症状も現れます。

 陰虚証は気虚・血虚・陽亢・精不足・津液不足とともに現れることが多いです。陰虚は進展すると陽虚(陰陽両虚)・亡陰となることもあり、また内風・気滞・血お・水停など病理変化を起こすこともあります。陰虚証に密接に関連している臓腑は肺・心・肝・腎と胃・大腸です。

 

 

陰虚証の原因 

①体質が虚弱・先天の不足

②塩辛いもの好んで食べる、あるいは温熱 の性質を持つ薬の服用。食べ物の過食などにより陰液が不足するか、消耗をする。

③ストレスにより肝気鬱結・肝火上炎になり、陰液を消耗する。

④房事過多により陰液を損傷する。

⑤慢性病により陰液を損傷する。

⑥過労により陰液を損傷する。

⑦熱病の後期(高熱・糖尿病・甲状腺機能亢進症など)で陰液を消耗する。 

 

糖尿病の一般的な概念

 糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が正常値(空腹時80~110mg/dl)より高い状態が持続する病気です。例えば食後2時間以上経過しているのに血糖値が200mg

/dl以上あれば、糖尿病と診断されます。

 糖尿病の発症には膵臓が関係しています。膵臓は長さ12~15cm、幅が3~9cm、重さ65~100gの臓器で、外分泌機能と内分泌機能という2つの働きを持っています。

 

・外分泌:外分泌細胞・膵管上皮細胞が消化酵素を含む膵液を分泌します。

・内分泌:ランゲルハンス島からインスリンなどのホルモンを分泌して血糖を調整します。

 

 食事から吸収された糖分は、各組織・細胞に運ばれて利用されます。ほかに、筋肉・肝臓に運ばれグリコーゲンとして貯蔵され、血液中の糖分が少なくなると、ここから運び出され、エネルギーを供給します。したがって、血液中の糖分が常に適当な濃度に保たれるのです。

 食べ過ぎ・運動不足・肥満などが原因で膵臓に負担がかかり、インスリンの分泌が不足するか、インスリンが十分でなくなると、糖分代謝のバランスが崩れてしまいます。

 症状は、のどが渇いて、水分を大量に摂る・良くお腹がすいて、きちんと食べていてもだんだん痩せてくる・排尿の回数・尿量が増える・体がとてもだるくて疲れやすい、などがあります。

 さらに、手足が痺れる、痛みが出る、目のかすみ、立ちくらみ、できものが出来やすく、化膿しやすい、治りにくい、昏睡状態も陥ってしまう、などの症状でた場合、糖尿病が進行している場合があります。特に注意が必要なです3大合併症で、①網膜症、②腎症、③神経障害があります。

 

 

糖尿病の中医学的概念

 

  『消渇(しょうかつ)』

 中医学では糖尿病は『消渇』に属しています。症状としては、三多一少(多飲・多食・多尿・消痩)、疲れやすい、または尿に甘みがあり、泡立ちやすいなどが現れる。

消渇と関係の深い臓腑は肺・胃・腎で、主症となる三多一少のどの症状が比較的重いかによって上消(肺)・中消(胃)・下消(腎)の区別があります。

上消:多飲症状が顕著、のどが渇き、水分を大量に摂りたがる。

中消:多食症状が顕著、いくら食べても空腹感を覚え(消殻善飢)、次第に痩せてくる

下消:多尿症状が顕著、排尿の量、回数ともに増えます。

 

 

  糖尿病の病因病機

 中医学では陰虚の体質は消渇病の最も大きな発病の内在素因となります。また、飲食不節・ストレス・房室過度・運動不足などは消渇病を引き起こす主な原因になります。

飲食不節:食べ過ぎたり、飲みすぎたりすると、脾胃運化の失調を招き、食積と燥熱が相結して、津液を消耗します。

ストレス:ストレスや、過度の緊張、不安により肝気鬱結となり、長期にわたると、肝火が生じて、肺、胃の津液を消耗して、燥熱により消渇になります。

房室過度:過度な性生活により精血を消耗され陰虚火旺となり、さらに津液を消耗して消渇となります。

 

 

  中医学で考える消渇の主な病機は陰虚と燥熱

 陰虚が本であり、燥熱が標となります。本症の初期は燥熱が主となる事が多いですが、病が長期化すると燥熱・陰虚の症状がともにみられ、慢性化すると陰虚が強く現れます。

 関係の深い臓腑は肺・胃・腎であり、これはお互いに影響を及ぼし合っています。例えば、肺は気を主り、水の上源で、津液の散布を行っています。もし肺が燥熱を受けると津液の散布作用が低下して、津液が直接尿として体外に排泄されてしまいます。すると五臓を潤す働きも弱くなり口渇の症状が目立つようになります。また、胃熱が旺盛になると水穀の消耗が進み、気血の本である水穀精微の生成不足となります。水穀精微が筋肉と四肢を養わなくなって痩せてきます。また、肺・胃の津液を焼き尽くしてしまいます。腎の陰陽も消耗し、腎気不固となり、排尿の回数や尿量も増えます。腰膝がだるい、体が乾燥して痩せる、などの状態に陥ります。よって最終的に肺燥・胃熱・腎虚の症状である三多一少の症状が現れます。

 

 

 

 

 

 

 TODAY'S
 
1979年、世界保健機関(WHO)では、次に揚げる疾患に鍼灸治療が、適応であることを認めています。

 

 

・神経系

 神経痛(三又、肋間、坐骨など)、頭痛、歯痛、ヘルペス、顔面神経痛、しびれなど

 

・運動器系

 五十肩、むち打ち症、頚肩腕症候群、腰痛症、ぎっくり腰、椎間板ヘルニア、変形性膝関節症、関節炎、リウマチ、肩こり、寝違い、筋肉痛、捻挫、テニス肘、腱鞘炎など

 

・消化器系

 胃炎、胃下垂症、胃酸過多症、胃痙攣、胃・十二指腸潰瘍、口内炎、慢性肝炎、胆石症、慢性腸炎、便秘、下痢、痔疾など

 

・循環器系

 高血圧症、低血圧症、心臓神経症、動悸、浮腫、冷え性など

 

・内分泌系

 糖尿病、甲状腺機能障害

 

・呼吸器系

 風邪、扁桃炎、咽頭炎、気管支炎、喘息、咳など

 

・泌尿器系

 慢性腎炎 膀胱炎、ネフローゼ症候群、前立腺肥大など

 

・感覚器系

 眼精疲労、仮性近視、白内障、鼻炎、副鼻腔炎、耳鳴り、メニエール病、めまいなど

 

・婦人科系

 生理痛、月経異常、乳腺炎、更年期障害、冷え、のぼせ、つわりなど

 

・小児科系

 小児喘息、夜尿症、夜泣き、かんの虫、消化不良、虚弱など

 

・その他

 自律神経失調症、不眠症、ストレス性疾患、心身症、アレルギー、アトピー性皮膚炎、慢性疲労、成人病の予防