糖尿病の一般的な概念
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が正常値(空腹時80~110mg/dl)より高い状態が持続する病気です。例えば食後2時間以上経過しているのに血糖値が200mg
/dl以上あれば、糖尿病と診断されます。
糖尿病の発症には膵臓が関係しています。膵臓は長さ12~15cm、幅が3~9cm、重さ65~100gの臓器で、外分泌機能と内分泌機能という2つの働きを持っています。
・外分泌:外分泌細胞・膵管上皮細胞が消化酵素を含む膵液を分泌します。
・内分泌:ランゲルハンス島からインスリンなどのホルモンを分泌して血糖を調整します。
食事から吸収された糖分は、各組織・細胞に運ばれて利用されます。ほかに、筋肉・肝臓に運ばれグリコーゲンとして貯蔵され、血液中の糖分が少なくなると、ここから運び出され、エネルギーを供給します。したがって、血液中の糖分が常に適当な濃度に保たれるのです。
食べ過ぎ・運動不足・肥満などが原因で膵臓に負担がかかり、インスリンの分泌が不足するか、インスリンが十分でなくなると、糖分代謝のバランスが崩れてしまいます。
症状は、のどが渇いて、水分を大量に摂る・良くお腹がすいて、きちんと食べていてもだんだん痩せてくる・排尿の回数・尿量が増える・体がとてもだるくて疲れやすい、などがあります。
さらに、手足が痺れる、痛みが出る、目のかすみ、立ちくらみ、できものが出来やすく、化膿しやすい、治りにくい、昏睡状態も陥ってしまう、などの症状でた場合、糖尿病が進行している場合があります。特に注意が必要なです3大合併症で、①網膜症、②腎症、③神経障害があります。
糖尿病の中医学的概念
『消渇(しょうかつ)』
中医学では糖尿病は『消渇』に属しています。症状としては、三多一少(多飲・多食・多尿・消痩)、疲れやすい、または尿に甘みがあり、泡立ちやすいなどが現れる。
消渇と関係の深い臓腑は肺・胃・腎で、主症となる三多一少のどの症状が比較的重いかによって上消(肺)・中消(胃)・下消(腎)の区別があります。
上消:多飲症状が顕著、のどが渇き、水分を大量に摂りたがる。
中消:多食症状が顕著、いくら食べても空腹感を覚え(消殻善飢)、次第に痩せてくる
下消:多尿症状が顕著、排尿の量、回数ともに増えます。
糖尿病の病因病機
中医学では陰虚の体質は消渇病の最も大きな発病の内在素因となります。また、飲食不節・ストレス・房室過度・運動不足などは消渇病を引き起こす主な原因になります。
飲食不節:食べ過ぎたり、飲みすぎたりすると、脾胃運化の失調を招き、食積と燥熱が相結して、津液を消耗します。
ストレス:ストレスや、過度の緊張、不安により肝気鬱結となり、長期にわたると、肝火が生じて、肺、胃の津液を消耗して、燥熱により消渇になります。
房室過度:過度な性生活により精血を消耗され陰虚火旺となり、さらに津液を消耗して消渇となります。
中医学で考える消渇の主な病機は陰虚と燥熱
陰虚が本であり、燥熱が標となります。本症の初期は燥熱が主となる事が多いですが、病が長期化すると燥熱・陰虚の症状がともにみられ、慢性化すると陰虚が強く現れます。
関係の深い臓腑は肺・胃・腎であり、これはお互いに影響を及ぼし合っています。例えば、肺は気を主り、水の上源で、津液の散布を行っています。もし肺が燥熱を受けると津液の散布作用が低下して、津液が直接尿として体外に排泄されてしまいます。すると五臓を潤す働きも弱くなり口渇の症状が目立つようになります。また、胃熱が旺盛になると水穀の消耗が進み、気血の本である水穀精微の生成不足となります。水穀精微が筋肉と四肢を養わなくなって痩せてきます。また、肺・胃の津液を焼き尽くしてしまいます。腎の陰陽も消耗し、腎気不固となり、排尿の回数や尿量も増えます。腰膝がだるい、体が乾燥して痩せる、などの状態に陥ります。よって最終的に肺燥・胃熱・腎虚の症状である三多一少の症状が現れます。