病棟の広い空間と静寂。
病棟の広い空間や静寂性は薬物療法に影響を与えていると思う。
ひとつ言えるのは、大都会などの人口密集地は田舎に比べ病状が不安定になりやすそうに見えること。
実際、統合失調症の発症は、人口100万以上の都市においては人口密度と相関があるらしい。
その関係は人口50万以下では弱くなり、1万以下ではみられないという。
大都市では社会的ストレスがたぶん危険因子を助長するのであろう。
東京などの大都市圏で、これはと思うほどの抗精神病薬大量処方が見られるのは、このような要因もあるのかもしれない。
また、病棟の広さや静寂性、その他の設備やどのようなタイプの患者さんが入院しているかはけっこう重要だと思う。
かつて精神科病院の病床オーバーが許容されていた時代があった。
なんと定床の20%以上のオーバーでさえ許されていたこともあるらしい。
許されていたというより、相対的に病床が足りないので黙認されていたのに近いと思う。
当時の様子を年配の精神科医に聞いたところ、廊下で肩が触れたくらいで忽ち喧嘩になり病棟全体が落ち着かなかったという。
このような状況ではどうしても薬物量が増えると思われる。
病棟の生活空間が相対的に狭いことが悪影響を及ぼしている。
病棟の広さや静かさ、設備の充実は薬物治療の困難さを緩和すると思われる。
現在、愛知県では少しずつ病院が建て替えを終えており、新しい病棟が多くなってきている。
細かいところでは多少の違いがあるが、どの病院も施設面では大きな差がない。
地方の精神科病院は大都会に比べ病院の内部蓄積が大きく病棟の建て替えがし易かったことがある。
また、地方の精神科病院は広い運動場や田畑を持っていたことも大きい。
そのような余剰スペースがないと立て替えができないからだ(建設の間、旧病棟を残しておかないと患者さんの居場所がない)。
実は昭和40年代、精神病院を新規に建てる際に、田や畑などを自前で持っていないと認可されなかったらしい。
病院本体でも大変なのに、他にも土地を確保しなければならなかったのである。
当時、国や県は精神科病院にどのような医療を期待していたのかが窺えて興味深い。
なぜ地方病院では内部蓄積が大きいかだが、人件費が大都会より低い上に、食事などの材料費(たとえば肉、野菜など)が安価なので利益が出しやすかったことがある。
診療報酬は、地方による物価差を考慮せず一律に決められているからだ。
このようなことから大都会の精神医療は、地方に比べやや条件が厳しいことがわかる。
都会の精神病院の方が処方されている薬物が著しく大量だったり多剤併用のため評判が悪いのは、このような社会的要因も関係していると思う。