アキネトン(タスモリン)。
一般名:塩酸ビペリデン
抗精神病薬の錐体外路系副作用に処方される代表的抗パーキンソン薬。
ジェネリック製品もたくさん出ている。
剤型は1mgと細粒と注射液剤がある。
半減期は18.4時間と言われており1日1回投与が可能である。
内服の場合、せいぜい6mgまでの範囲で処方されることが多い。
内服の場合、肝臓で代謝される。
○効能・効果
向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジア。
特発性パーキンソニズム。
その他のパーキンソニズム(脳炎後、動脈硬化性、中毒性)。
① 急性ジストニア
② パーキンソン症候群
③ アキネジア
④ アカシジア
のいずれにも効果がある。
抗精神病薬に対する錐体外路系副作用に対し、日本ではアキネトン、アーテン、ヒベルナのいずれかが処方されることが多い。
ずっと以前は、ブチロフェノン系の抗精神病薬にはアキネトンかアーテン、フェノチアジン系にはヒベルナ(=ピレチア)が良いなどと言われていた。
しかし、その後リスパダールなどの非定型抗精神病薬が発売されるに至り、以前ほどこれら抗パーキンソン薬は併用されなくなってきている。
この3つのうち、アキネトンとアーテン(=セドリーナ)はともに抗コリン性パーキンソン薬といわれ作用機序が似ている。
この2つは線条体のムスカリン受容体(M1)の阻害作用により効果を発現する。
アキネトンとアーテンの違いであるが、アキネトンの方が中枢のムスカリン受容体に選択性が高くそのため末梢性の副作用が出にくい傾向がある(臨床的にはそこまでの差がない)。
抗パーキンソン薬の評価が変化してきたのは、非定型抗精神病薬の出現と遅発性ジスキネジアなどの副作用が問題になってきた当時からだと考える。
これら抗パーキンソン薬は、現代社会では「使わないで済むならその方が良い。抗パーキンソン薬の併用はできるだけ避ける」と言った感じになっている。
抗パーキンソン薬の併用をしなくても良い処方を心がけないといけないのである。
アキネトンは、
この点についてはアーテン、ヒベルナも同様である。
ヒベルナは上記の症状に効果があるもののアキネトン、アーテンほどの効果はない(ヒベルナは作用機序から少し異なり、ヒスタミン受容体とムスカリン受容体への効果を持つ)。
アキネトンは注射剤があり、筋注すると内服するよりはるかに劇的に急性ジストニアやアカシジアが改善する。
こういう治療を受けたことがある人も読者にはいるかもしれない。
なぜここまで注射剤が効果的なのかというと、内服の場合、消化管から吸収され門脈を経て肝臓でなにがしか代謝を受けた後に脳にいくのに比べ、筋注の場合は心臓、肺を経ていきなり脳に行くことが大きい(肝臓を経ずに脳に行く)。
アキネトンは副作用として多幸感、高揚感があるので、筋注だとそれが出すぎて好ましくない。
薬物依存になりやすい人はアキネトン依存にもなりやすいので注意を要する。
内服の場合はそこまでの作用を感じない人が多い。
これらの副作用はアーテンにも見られるが、アーテンは注射薬がないので、そこまでの作用を感じない面はある。
アキネトンは本来抗精神病薬の副作用止めであったが、次第にこの副作用止めの副作用に注目されるようになった。
アキネトン、アーテンなどの副作用
① 尿閉
② 便秘、麻痺性イレウス
③ 抗コリン性の精神症状
(せん妄、妄想、急性錯乱など)
その他、高揚感、多幸感による依存性や認知面の副作用もみられる。
ずっと以前、抗コリン性抗パーキンソン薬が遅発性ジスキネジア発生の危険因子であるという意見が出るようになったが、その後に反対意見もみられ、これは確定したものではたぶんない。
しかしもう出現してしまった遅発性ジスキネジアは抗コリン剤は悪化させるようには見える。
遅発性ジスキネジアは、今まで服用してきたトータルの抗精神病薬が多いほど出現しやすいのである。
急に抗精神病薬を中止したときも離脱性に出現する場合もある。
こういう出方からも単純なものではないことがわかる。
一般に遅発性ジスキネジアは老齢、女性などがリスクファクターと言われるが、統計的には日本では性差はそれほどではないらしい(欧米では女性に多い)。
これは臨床的な実感に一致していない。
これらの遅発性ジスキネジアには人種差があるらしく黒人に多く、アジア人種には比較的少ないと言われている。
このようなことから、アキネトンやアーテンなどの抗パーキンソン薬は使わなくて済むならそうした方が良いのである。
しかし、どうしても旧来の薬物を使わざるを得ないケースやリスパダールの多めの量を使わないとうまくコントロールができないケースで、無理やりこれらの薬物を服用しないのはナンセンスであると思う。
理由は本人の苦痛が大きいことと、そういう錐体外路系副作用を放置するほうがむしろ悪いと言うことがある。
そういうこともあり、必要ならもちろん抗パーキンソン薬を内服する方がいいと考える。
このあたりは治療の柔軟性が必要と思っているのです。