「前回の優勝者、真希さんはどこの国からも徹底的にマークされ身動き取れない事も多々有った

それに敵はライバルチームだけじゃなかったのだ、パプアニューギニアと云う独特な風土が俺達の行く手をさえぎった

ウッソウとしたジャングル、未知の病気、止むことのない雨、足元は常に泥でぬかるんでいる、そんな状態で敵に遭遇すれば

正に泥死合だ、サポートチームは自分の事で精一杯で、真希さんへのサポートもままならない

どの戦いも常に乱戦だ、ファッションセンスを競うバトルとはほど遠いい、命を削り合うだけの消耗戦

しかも草木が生い茂るジャングルのせいで視界をさえぎられ、なかなか試合相手を見つけられない

何しろジャングルに関しては皆素人だ

大会中どのチームもほぼ迷子の子犬状態だった、自然と戦いの進行ぺースも遅くなる

そんな地獄の様な戦場で大会が長引けば、食糧と武器であるコーディネート用の衣装の補給もままならない状態になる

本来なら予備選で落ちたサポートメンバーは大会本部に詰めて、チームからのオーダーを聞いて、補給物資の手配をするものだが

今回、大会本部の用意した連絡用トランシーバーは不良品で全く繋がらない

それにせっかく持参した衣装も泥と雨で一瞬で見る影もない、どこのサポートチームも完全に機能不全に陥り

雨、飢え、病、恐怖、何人も精神を蝕まれた

ライバルチームではファッションリーダーが、プレッシャーに押し潰され錯乱し自分のサポートチームである

ファッションコーディネーター達を次々に半殺しにする事件が続出し、沢山のチームが戦わずして自滅した

正に地獄の"黙示録状態"ベトナム戦争で狂った上官が部下を惨殺し、最後ら辺で沼からヌッと顔を出す、あの怖くて気色悪い映画ソックリだ

そんな中でも俺達のチームは真希さんを中心に耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び何とか終盤まで生き残っていた

そこまで生き残れたのは全部、真希さんのお陰だ、俺達のサポート力のなさを真希さんが1人で補ってくれた

はじを曝す様だが…

持って行った衣装は全て常夏の国、ハワイのリゾートをイメージしたものばかりで、完全なリサーチミス

当時サポートリーダーのドン小東が『南国と言えばワイハだよなアップアロハとブーケとサーファーとゴルフだろう』と中年オヤジに在りがちな、話を聴く耳を持たず決め付けとゴリ押しが取り柄の男だった

サポートチームは若者と女性が多かっから、高圧的ないかついおっさんは苦手だったのだ

因みに何故ドン小東がサポートリーダーに選ばれたかと言うと

前回初優勝で好景気に沸く我が国のファッション業界は、イケイケドンドンに成り

ファッション上層部でさえ『イケんじゃね~アップ!?』状態に陥ってしまい

才能は在るがイケイケドンドンでドン繋がりのドン小東がサポートリーダーに選ばれたらしい

因みにドン小東は本戦初戦でベトコンチームに両足のアキレス腱を截断バサミで切断され半殺しにされて、すぐ本国に泣きながら帰った…

そんな苦戦の続く中、真希さんはある秘策を編み出した

それは正に闘神が乗り移った様な革命的ファッションスタイル!!

ある日、戦いの疲れを癒す為、貴重なビールを浴びるように飲んでいた真希さんは急にツマミの入った皿をジーと見つめ

何かを思い付いた様に『アロハとハサミと針と糸を急いで持って来て!』と叫び『あ!後ダイヤモンドもね』

アロハシャツとビーフジャーキーを使ってジャングルの王、ターザンスタイルに仕立て直してしまった

皆驚いたよ『こんなものが服なのか!?』と

しかしいざ真希さんが戦いでその衣装を着ると、あまりのカッコ良さに、ライバルチームでさえ見とれていた

戦いの中、1人でジャングルを縦横無尽に駆け抜け、ツタに掴まり『アッア!ア~~~~!』と雄叫びを上げながら宙を舞う、ターザンプリンセス

下品なのに品格があり、ワイルドなのに可憐、決して混じり合わない要素のはずなのに

確かに目の前に存在している、ジャングルの中だけに存在を許された"美"

金魚鉢の中で舞う最上級の金魚の様な神ファッション

ある対戦チームのファッションリーダーは、こんな言葉を残している

『私達は幻を見ているのか?…そうだ幻にまちがいない

幻に勝てはしない…何故なら幻はこの世の者ではないのだから…ギブアップ』

それからの俺達チームの戦いは、常に圧勝だった

ジャングルに適応した真希さんのファッションは、見る見るうちにバラパゴス島の動植物の様に独自の進化をとげて行った

正に美の探求者、ある時は錦蛇を体に巻き付け衣装に見立てたアナコンダプリンセス

ある時はワニを背負って沼からヌッと頭を出す、アリゲータープリンセス

まるで"地獄の黙示録"その者で、マジで皆殺し殺されると思った対戦チームと俺達サポートは『ギブアップ!』と叫びながら、その場を蜘蛛の巣を散らず様に逃げ惑ったりもした

なんやかんやで結局ターザンプリンセスに戻したりもした、対戦の方は、それでなんの問題も無かった、がしかし…

当然、真希ターザンでもカッコだけなのでサバイバルのスキルはなく、食糧は何故か衣装に使いきり

ジャングルの葉っぱサラダばかり食べていた、なにしろファッション業界の人間はヘルシー志向なやつらが多いからな

葉っぱサラダは食い放題だ、それでも腹は減ってしまい、いつもお腹はグーグー

しかも異常な量の食物繊維の取りすぎでピーピーにも成っていた、グーグーピーピー、ジャングル大合唱祭だ

そんな中でも真希さんだけはいつも一人で、綺麗なキノコを採って来て

『ファッショナブルな松茸だわ』と自画自賛しムシャムシャと野獣の様に食いちからし貴重なビールを浴びるように飲んでは

何かに取り付かれた様にヘラヘラ笑っていた、そんな真希さんの元気さと笑顔に、皆勇気付けられもした

そんなある日、ジャングルの中で殆ど機能しなかった大会本部との連絡用トランシーバーが、奇跡的に繋がり

ガリガリくんの食い過ぎでダウンし回復していた雅さまから朗報が届いた

『ザザ…私、雅だけど真希聞こえる?』

『俺、猪狩矢です』

『ザザ…通信がいつ切れるか分からないから捲し立てるわね、よく聞いて

うちのチームを入れて残りは2チームよ、しかも決勝戦の相手は、今年初めて本戦に出場出来たホンジャマカ自治国て言う、聞いた事もない小国のチームで、本戦では奇跡的に一度も戦わず、ズッとジャングルで迷子に成ってたたらしいわ、辛抱強いのだけが取り柄って感じね

大会運営本部もこれ以上大会期間を引き延ばしても意味が無いので、本部から案内人を付けて互いのチームを引き合わせて戦わせるって、今、千人体制で大会運営委員がそちらに向かってるわ、二三日後にはそちらに到着しそうよ、真希なら楽勝ね、もう優勝したも同然よ

相手のファッションリーダーのイシズカてのはオーバーオールしか着ないデブでブサ…ザザ…ザザ』

『きれたかな?…よし!優勝がやっと見えて来た!』俺は天にも昇る気持ちに成った

サポートメンバーも喜んび『やっと帰れる!』『地獄から解放されるわ』皆、口々に喜んだで、中には泣き出す女の子も何人か居た

そんな事があった日の夕方

慢性化したピーピーで静かに横に成っていた真希さんは、狂喜乱舞する俺達サポートメンバーを優しく見守り

俺と眼が合うと『良かったわね猪狩矢くん』口元は笑っているのに悲しい表情、何かを感じた俺は

『真希さん何か在ったんですか?』

真希さんは『どすこい!』と起き上り『ようをたしてくる』と言い残しジャングルの茂みに1人で入って行った…」

猪狩矢は目を潤ませ悔しそうな顔をし手を握り締プルプルと震え、一呼吸する

「そして…そのままチームに二度と帰って来なかった…

すまない亜希!俺がアノ時、後ろから付いて行き、茂みから覗いていたら、こんな事には成らなかったんだビックリマーク

確かにファッションリーダーの真希さんはとても魅力的な女性だけれど…」

苦悶の表情を浮かべる、猪狩矢

「俺はあの当時、同じ年頃のサポートチームの女の子にしか興味無くて…」

猪狩矢は泣いていた

「その子達のトイレ姿しか覗いてなくて…せめて真希さんが…真希さんが

今の亜希ぐらいの歳だったら…悔やんでも悔やみきれないよ~本当にすまん」

猪狩矢は亜希に泣き顔ですまなそうに頭をさげる

「しょうがないっすよ先生、トイレは覗いちゃいけないモノです」

「そういうモノなのか!?

「はい」

猪狩矢は少し恥ずかしそうにしながら、救われた様な表情になる

「あやまり次いでに何だが…高木ビックリマーク失踪してしばらく気付かなくて、ごめんな(笑)

行方不明の責任取らされる事になってから、ずいぶん心配したぞ

どこで何してたかかは興味も無いので聞かないが、ここで会ったのも何かの縁だ

一緒に亜希のサポートやらないか!?昔からお前のファッションセンスだけはかってたんだ、今から鍛えればサポートメンバーに成れるぞ

いちよを元サッカー部の連中にも声掛けたんだけどな、あいつらのファッションセンスじゃ予備選も通らない事は、分かり切ってる事だし

大会準備の為、奴隷としてコキ使ってやろうと思ってる、高木、お前なら貴重なサポートメンバーとして行けそうな気がする」(笑)ウンウン

「クックックックック」

不気味な笑声と共に高木はカッと顔をあげ、異様な殺気を放ちながら、ようやく重い口を開いた

「クック…お久しぶりです、カ・ン・ト・ク

アタイがここに居る本当の理由も知らなくて、そんな事、言って良いんですかい!?

ここに居る誰もが高木の豹変ぶりに驚いた、悪意の塊の様な雰囲気で口元を歪めたブサイクな笑顔

皆が思った、せっかくの美貌が台無しだ!、残念な高木…

猪狩矢は心配そうに

「どうした高木!?姿形も変わったがキャラも変わったな…いや性格は変わってないのかな!?…」

高木は全ての過去を断ち切り、別の人間に成っていた、根幹的な人間性はそのままに

「あれからアタイはある組織によって救われ、忠誠を誓い、ある目的を持ってここに送り込まれた

その組織の名は!?…グリーンピープル!!

「……」誰もが知らない名前であった、そして誰も聞いてもいないのに勝手にしゃべる、高木

「グリーンピープルはフッションの規制概念に囚われず、自然に帰る事を旗印に掲げる団体」クローバー

猪狩矢は少し興奮し高木の話に食い付いた

「服を着ないヌーディスト団体なのか!?

「違う!!アタイらはフッァション業界に新たな価値観を作り出す

例を上げると森ガールはアタイらグリーンピープルが提唱したと"自負"している」

雅は落ち着いていた

「グリーンピースだかグリーンピ~ピャラだか知らないけれども、あくまでも"自負"なのね、あくまでもビックリマーク

かなりのマイナーインディーズ団体のようね?」

「今はどう認識されようともかまわない、アタイ達のボス、クイーンは言った

『行け高木ビックリマーク神聖なファッションを地に落としめる商業主義の権化、バコワンをぶっ潰すのよ!!』…そしてアタイはここに居る」

「で!どうぶっ潰すおつもりかしら!?」冷ややかに聞く雅

「……汗」しまったビックリマークと言う顔をする高木

「あらビックリマークまさかのノープラン!?

その場はビミョーな空気に支配された

店の外では、いつもまにやら風が吹き初め、どしゃぶりの雨が降っていた、雨風の音だけが聞こえる

「…それは…汗

焦る高木、追い打ちを掛ける雅

「さしずめ、あなたの様な小者は、私が来る予定のこのお店に潜入して

スパイでもしてろって事なんでしょうけど亜希さんや猪狩矢の話しを聞いてるうちに触発されて

我慢出来なく成り、ついつい自慢気に自分の正体を明かしてみようと思った訳ね、高木のぶんざいで!違うかしら!?」

「くっ…汗」図星だった

「貴女って、やっぱり後先考えないバカなのね」フッ

高木は卑屈な元の高木に戻ってしまった

そこに突然ゴーっと雨風の大きな音と共に、店の扉がバタン開け放たれた

ピカッと雷光りが怪しい影を映しだすドカドカーンと雷音が鳴り響く店内

濡れた影に皆が怖した



つづく