しかし"誰かの日常"とは少し様子がちがう
主人はいつも考え事していて、ほとんど若妻に構う事がない
しかも帰りがいつも遅い、日曜でも仕事に行く
3日4日外泊する事も増えた
若妻は外に女が出来たと思った
しかし怒りは、湧かない
主人が自分に興味を示さなく成った事にホッとする自分が居た
なんなら離婚する時には、慰謝料がガッポリ貰えるのではないかと、考えたりもする
そして何よりも、主人が居ない時の屋敷の主は自分なのだ!と云う優越感に浸れた
と言っても、屋敷には女中ひとり
やることは別に無い
その女中と同じテーブルで、お茶を飲みながら気楽にお喋り
そんな時間も日に日に増えて行くと
なんだか何年かぶりに"自分の日常"が帰って来たような
そんな気がして嬉しかった
しかしある日を境に、一変した
夜遅く主人が帰宅
ベロベロに泥酔している、威厳もへったくれも有ったものではない
そんな主人を見るのは初めてだ!
慌てて若妻が駆け寄ると「酒を持ってこい
」と言う
若妻がたしなめた瞬間!
パシン
と頬を平手打ちされた、こんな事は今まで一度も無かった
呆然とする若妻に対して「ワシの言うことが聞けんのか
」
ばせいを浴びせる主人
そこに正座させられ、説教が始まった
男を部屋に呼び込んだ事から、ささいな日常の事まで
しかも、感情むき出しの、ののしりの言葉ばかり
そこにはかつて人格者と言われた主人は居ない
何時間も続く地獄様な時間、それでも耐えなけれならない
服従させられ飼われて居る、それがこの屋敷での若妻の日常なのだから
その日のから主人は長期の休暇に入ってしまった
更に、新聞を止め、ラジヲ、テレビ、電話さえも処分した
そしてルールが加わった
若妻は屋敷の真ん中にある、居間から一歩も出てはいけない
女中とは口を聞いたり、目を合わせてもいけない
風呂トイレは主人の付き添いが無ければ行けない
完璧な軟禁常態である
主人は狂人に成ってしまったのか?若妻は恐怖におののいた
その日常は、あまりにも無惨、地獄そのもの
居間に布団を引き、夫婦は常に一緒だった
食事は膳に盛って女中に運ばせた
主人は常に酒を飲み、若妻をののしった
そして性のはけ口にした
それが昼夜問わず延々と繰り返される
そんな生活が一週間も続くと
もはや若妻は正常な精神を保てなく成っていた
そしてついに、発狂して全裸で庭に駆け出した…
若妻が我に帰ると、ある精神病棟に入院していた
主人はと云うと、若妻の入院手続きを済ませると
しばらくして
花街に通い始め
気に入った情婦を見つけ入れあげた
そして屋敷の女中を辞めさせ、替わりになんと!!
気に入った花街の女を、女中として屋敷に迎え入れた
女は、掃除も洗濯も食事の用意も何もしなかった
食事は決まった時間に、近くの食堂から出前してもらった
もはや女は女中では無かった
しかし主人は怒る事もなく、常に酒を飲み
女とイチャイチャしたりジャレあったり
逆に主人が女にののしられる事さえあった
屋敷は手入れする者ものも無くドンドン荒れていった
やがて女は屋敷にある隠し金庫を見つけ
酔った主人をそそのかし、金庫を開けさせた
金庫の中には現金しか無かったが、それなりに大金だった
女は大金を金庫から出そとした、慌てて主人が女を押さえ込もうとする
しかし酒を飲み続けた主人の体はボロボロに成っていた
女に弾き飛ばされ、でんぐり返って柱に後頭部を打ち付け、気絶した
女は優々と金庫から金を持ち出しバックに詰め、身支度を整え屋敷から出ようとした
後ろから、ずるずると音がするので振り返ると
頭を打った影響か?主人は四つん這いにはって女を追いかけて来た
主人は必死に女に訴えた「この金を取られたらワシは活きていけん
返してくれ~このとうりだ」
女が上から主人を見下ろすと、ヨダレ鼻水をたらし、顔をクシャクシャにして
オイオイと泣いて居る、しかも小便まで漏らしている
「きったないじじいだね~(笑)
今度はあんたが地面を這いつくばって生きてく番だよ
」
そう捨て台詞を吐くと、呆気なく屋敷を後にした…
しばらくして
若妻は屋敷の大きな閉じられた門の前に立っていた
病気は発作的なもので慢性的なものではないと診なされ
病院から退院許可が降りたのだ
正直、屋敷に帰るのは怖かった、今でも鬼の形相で若妻をののしる、主人の顔は目に焼き付いている
でもあれからどうなったのか気になる
取り合えず屋敷の様子を自分で確かめてから判断しようと思った
しかし屋敷の門は、きつく閉ざされている
なぜか?いばった様に飾られた立派な表札が消えている
そして門の真ん中辺りに、紙が張られ文字が書いてある
『差し押さえ物件にて、立ち入り禁止』
若妻は戸惑う、自分の家なのに入れない
らちが明かないので、はすむかいの食堂のオバチャンに事情を聞いてみた
オバチャンは、若妻をたいそう心配してくれていた
そして色々話してくれた
主人の経営する同族会社が倒産して
一時、マスコミが屋敷の回りに押し寄せて大変だった
一週間ほどして、救急車が屋敷に入っていった
若奥様が心労で倒れたらしい!?
(面向きは)
マスコミが屋敷の回りから居なくなると
しばらくして主人が素性の分からない女と暮らし始めた
出前を持って行くと、屋敷は荒れ放題!
いつも主人は酔っぱらって女とイチャイチャしていた
あの名家の威厳ある主人と同一人物とは思えなかった
それからほどなくして債務処理物件(借金のかた)として、屋敷も差し押さえられた
若妻はがく然とした

自分にはなにも知らされて無かった
"自分の日常"はここには無かったのだと改めて、思い知らされた
オバチャンの話しと照らし合わしたら、確かに思い当たる
若妻が植木職人を、部屋に呼び込んだ日辺りから
主人の会社は、傾いていたのだ
主人が「今日の一件は不問にする」
ああもアッサリ許したのは?
家族にかまってる場合では無かったから
主人の外泊が多かったのは、外に女が居たのではなく?
会社を何とかしようと、ふん闘してたから
酔って私を殴ったりののしったのは?
会社が倒産した、精神的ショックから
軟禁したのは私をマスコミから守る為?
いやちがう、主人は"主人の日常""を守ろうとしたのだ
それが狂人となり、あのようなイビツな形で表れたのだ
若妻はオバチャンに礼を言って、また屋敷の門の前に戻った
そして、今では住む主を失った屋敷を見上げ
物思いにふけった
(なん百年も続いた、名門家族がこうもアッサリ潰れてしまった
人とは、弱くむなしいものだ
でも、立派な屋敷だけは今もここにあり続ける
この屋敷での自分とは何だったのか?
結果としては
この屋敷に支配された奴隷だったのでわ!?
そして主人も…)
人は人を支配する、しかし支配する人ですら環境や空間に支配される
会社では会社員を演じるように、恋人の前では優しい恋人を演じる様に
家族の前では父や母を演じる様に
与えられた役を必死で演じる事を、教育され育てられる
ほとんどの人はその支配から、逃れる事は出来ない
だから人は、自分の演じたい役の環境や空間をそこに作る、又はその場所に行く…
人間には欲望がある
子供が野球選手に憧れるように、誰かの恋人になりたいと告白するように、金持ちに成りたいと必死で働くように
欲望を満たすには、演じ続けなければならない
若妻は門を見なおし「は~」とため息をついた
主人を探すつもりは無い、見てはいないがオバチャンが言っていた
酒を飲み、全てを忘れて女とヘラヘラしていた主人が
本来の主人の姿"本当の自分"なのだろう
主人も又、屋敷の主人を辞めどこかで違うものを
好きに演じて生きて行けばいい
若妻は屋敷に向かって「や~めた」そうつぶやくと
屋敷を二度と振り替えることなく、軽々とした足取りで
一歩一歩、歩き始めた
おわり
主人はいつも考え事していて、ほとんど若妻に構う事がない
しかも帰りがいつも遅い、日曜でも仕事に行く
3日4日外泊する事も増えた
若妻は外に女が出来たと思った
しかし怒りは、湧かない
主人が自分に興味を示さなく成った事にホッとする自分が居た
なんなら離婚する時には、慰謝料がガッポリ貰えるのではないかと、考えたりもする
そして何よりも、主人が居ない時の屋敷の主は自分なのだ!と云う優越感に浸れた
と言っても、屋敷には女中ひとり
やることは別に無い
その女中と同じテーブルで、お茶を飲みながら気楽にお喋り
そんな時間も日に日に増えて行くと
なんだか何年かぶりに"自分の日常"が帰って来たような
そんな気がして嬉しかった

しかしある日を境に、一変した
夜遅く主人が帰宅
ベロベロに泥酔している、威厳もへったくれも有ったものではない
そんな主人を見るのは初めてだ!
慌てて若妻が駆け寄ると「酒を持ってこい
」と言う若妻がたしなめた瞬間!
パシン
と頬を平手打ちされた、こんな事は今まで一度も無かった呆然とする若妻に対して「ワシの言うことが聞けんのか

」ばせいを浴びせる主人
そこに正座させられ、説教が始まった
男を部屋に呼び込んだ事から、ささいな日常の事まで
しかも、感情むき出しの、ののしりの言葉ばかり
そこにはかつて人格者と言われた主人は居ない
何時間も続く地獄様な時間、それでも耐えなけれならない
服従させられ飼われて居る、それがこの屋敷での若妻の日常なのだから
その日のから主人は長期の休暇に入ってしまった
更に、新聞を止め、ラジヲ、テレビ、電話さえも処分した
そしてルールが加わった
若妻は屋敷の真ん中にある、居間から一歩も出てはいけない
女中とは口を聞いたり、目を合わせてもいけない
風呂トイレは主人の付き添いが無ければ行けない
完璧な軟禁常態である
主人は狂人に成ってしまったのか?若妻は恐怖におののいた
その日常は、あまりにも無惨、地獄そのもの
居間に布団を引き、夫婦は常に一緒だった
食事は膳に盛って女中に運ばせた
主人は常に酒を飲み、若妻をののしった
そして性のはけ口にした
それが昼夜問わず延々と繰り返される
そんな生活が一週間も続くと
もはや若妻は正常な精神を保てなく成っていた
そしてついに、発狂して全裸で庭に駆け出した…
若妻が我に帰ると、ある精神病棟に入院していた
主人はと云うと、若妻の入院手続きを済ませると
しばらくして
花街に通い始め
気に入った情婦を見つけ入れあげた
そして屋敷の女中を辞めさせ、替わりになんと!!
気に入った花街の女を、女中として屋敷に迎え入れた
女は、掃除も洗濯も食事の用意も何もしなかった
食事は決まった時間に、近くの食堂から出前してもらった
もはや女は女中では無かった
しかし主人は怒る事もなく、常に酒を飲み
女とイチャイチャしたりジャレあったり

逆に主人が女にののしられる事さえあった

屋敷は手入れする者ものも無くドンドン荒れていった
やがて女は屋敷にある隠し金庫を見つけ
酔った主人をそそのかし、金庫を開けさせた
金庫の中には現金しか無かったが、それなりに大金だった
女は大金を金庫から出そとした、慌てて主人が女を押さえ込もうとする
しかし酒を飲み続けた主人の体はボロボロに成っていた
女に弾き飛ばされ、でんぐり返って柱に後頭部を打ち付け、気絶した
女は優々と金庫から金を持ち出しバックに詰め、身支度を整え屋敷から出ようとした
後ろから、ずるずると音がするので振り返ると
頭を打った影響か?主人は四つん這いにはって女を追いかけて来た
主人は必死に女に訴えた「この金を取られたらワシは活きていけん
返してくれ~このとうりだ」
女が上から主人を見下ろすと、ヨダレ鼻水をたらし、顔をクシャクシャにして
オイオイと泣いて居る、しかも小便まで漏らしている
「きったないじじいだね~(笑)
今度はあんたが地面を這いつくばって生きてく番だよ
」そう捨て台詞を吐くと、呆気なく屋敷を後にした…
しばらくして
若妻は屋敷の大きな閉じられた門の前に立っていた
病気は発作的なもので慢性的なものではないと診なされ
病院から退院許可が降りたのだ
正直、屋敷に帰るのは怖かった、今でも鬼の形相で若妻をののしる、主人の顔は目に焼き付いている
でもあれからどうなったのか気になる
取り合えず屋敷の様子を自分で確かめてから判断しようと思った
しかし屋敷の門は、きつく閉ざされている
なぜか?いばった様に飾られた立派な表札が消えている
そして門の真ん中辺りに、紙が張られ文字が書いてある
『差し押さえ物件にて、立ち入り禁止』
若妻は戸惑う、自分の家なのに入れない
らちが明かないので、はすむかいの食堂のオバチャンに事情を聞いてみた
オバチャンは、若妻をたいそう心配してくれていた
そして色々話してくれた
主人の経営する同族会社が倒産して
一時、マスコミが屋敷の回りに押し寄せて大変だった
一週間ほどして、救急車が屋敷に入っていった
若奥様が心労で倒れたらしい!?
(面向きは)
マスコミが屋敷の回りから居なくなると
しばらくして主人が素性の分からない女と暮らし始めた
出前を持って行くと、屋敷は荒れ放題!
いつも主人は酔っぱらって女とイチャイチャしていた
あの名家の威厳ある主人と同一人物とは思えなかった
それからほどなくして債務処理物件(借金のかた)として、屋敷も差し押さえられた
若妻はがく然とした


自分にはなにも知らされて無かった
"自分の日常"はここには無かったのだと改めて、思い知らされた
オバチャンの話しと照らし合わしたら、確かに思い当たる
若妻が植木職人を、部屋に呼び込んだ日辺りから
主人の会社は、傾いていたのだ

主人が「今日の一件は不問にする」
ああもアッサリ許したのは?
家族にかまってる場合では無かったから

主人の外泊が多かったのは、外に女が居たのではなく?
会社を何とかしようと、ふん闘してたから

酔って私を殴ったりののしったのは?
会社が倒産した、精神的ショックから

軟禁したのは私をマスコミから守る為?
いやちがう、主人は"主人の日常""を守ろうとしたのだ

それが狂人となり、あのようなイビツな形で表れたのだ
若妻はオバチャンに礼を言って、また屋敷の門の前に戻った
そして、今では住む主を失った屋敷を見上げ
物思いにふけった

(なん百年も続いた、名門家族がこうもアッサリ潰れてしまった
人とは、弱くむなしいものだ
でも、立派な屋敷だけは今もここにあり続ける
この屋敷での自分とは何だったのか?
結果としては
この屋敷に支配された奴隷だったのでわ!?
そして主人も…)
人は人を支配する、しかし支配する人ですら環境や空間に支配される
会社では会社員を演じるように、恋人の前では優しい恋人を演じる様に
家族の前では父や母を演じる様に
与えられた役を必死で演じる事を、教育され育てられる
ほとんどの人はその支配から、逃れる事は出来ない
だから人は、自分の演じたい役の環境や空間をそこに作る、又はその場所に行く…
人間には欲望がある
子供が野球選手に憧れるように、誰かの恋人になりたいと告白するように、金持ちに成りたいと必死で働くように
欲望を満たすには、演じ続けなければならない
若妻は門を見なおし「は~」とため息をついた
主人を探すつもりは無い、見てはいないがオバチャンが言っていた
酒を飲み、全てを忘れて女とヘラヘラしていた主人が
本来の主人の姿"本当の自分"なのだろう
主人も又、屋敷の主人を辞めどこかで違うものを
好きに演じて生きて行けばいい
若妻は屋敷に向かって「や~めた」そうつぶやくと
屋敷を二度と振り替えることなく、軽々とした足取りで
一歩一歩、歩き始めた
おわり