あるところに大きな屋敷が有った
黒の瓦に黒塗りの壁、黒を基調にした要式美をしていた
そこは何百年も続く伝統的な名家の本家で
黒塗りの塀と門構えは戦国時代のお城を思わせた
そこには厳格な主人と優しい奥さんが、つつましく住んでいた
屋敷はでかいが、使用人を何人も置くほど、やることも無いので
女中(じょちゅう)という住み込みで働く女性が1人だけ
主人は同族会社の社長を務めている
このごろ屋敷では長年奉公した、ばあ様女中が辞める事に成った
そこで夫婦は新たに女中を募集した
すると、たまたま若くて綺麗な女がやって来た
主人は大いに気に入り、奥さんはいちまつの不安を覚えたが
主人に押しきられて住み込みで働く女中に成った
その女は昼も夜もよく働いた
しかも立ち振舞いがキビキビとして愛想もよく、誰からも好感が持てた
奥さんもたいへん気に入った
ほどなくして
ある時、奥さんが屋敷の誰も使って居ないはずの
はなれが何となく気になって
覗いて視てみると、昼間っから主人と若い女中が
まぐわって居るではないか!
夫婦には子が無かった
屋敷を引き継ぐ跡継ぎが居ないのだ
(やはり、主人も跡継ぎが欲しいのだ)そう思うと
奥さんはあえて、見て見ぬ振りをした
子供が出来たら、自分達夫婦が引き取って育てようとも思った
主人は「子供は天からの授かり物だから、気にするな
この屋敷を継ぐものは一族の誰かにやらせれば良い」と言ってくれた
だからこそ、よけい自分に引け目を感じていた
しかし厳格だが自分には優しい主人に
裏切られた現実のショックは、相当なものだった
いく月かは、主人と若い女中の色仲を見守った
しかし、子が出来る様子は全くない
(主人は本当に跡継ぎが欲しくて、若い女中とまぐわっているのだろうか?)
疑念が頭をもたげる
(最近の主人は、以前の主人とは違って来てるのも感じる
目は血走り、どこか荒々しい、私を見る目もどこか冷たい
私は捨てられるのでは?)
嫉妬と恐怖から
とうとう心労が祟り、可愛そうに寝込んでしまった
奥さんの世話をする若い女中
奥さんは若い女中にささやいた「あなたには、がっかりしたわ」
この時、初めて若い女中は自分と主人との中
を、奥さんに知られて居た事に気が付いた!
しかし奥さんは数日の内に呆気なく死んでしまった
半年ほどして主人は、奥さんの死から一年の喪が明ける前に
後妻を女取る事にした、相手は若い女中
これには名家の親族も反対した
しかし主人は、その厳格さで周囲を黙らせ、自分の意見を押しきってしまった
若い女中は若妻に成った
前妻には悪いが若妻は正直、嬉しかった
自分がシンデレラにでも成った気がした
自分の替わりに成る女中は何とか主人を言いくるめ
自分よりも、かなり見劣りする女を雇った
しかし時が立つにつれて、見えないプレッシャーが
こんどは若妻に、襲いかかる
前妻を死に追いやったのは自分ではないか!?と云う罪悪感は日に日に強く成る
そして唯一自分の"仕事"である子供が全く出来ない
さらに、元々が女中と主人から始まった関係
支配されているままの関係である
自分の本当に言いたいことは言えず従うのが基本
細々したことを言われれたり、ささいな事を言い合えば「ごめんなさい」
謝るのも常に自分、謝り癖が付いてしまった
女中の時より、窮屈に成っていく束縛感
そして何よりも辛いのが、事ある毎に前妻と比べられる周囲の目
主人は言葉には出さずとも(何故そんなことも知らないのだ?出来ないのだ?)と
目で訴えかけてくる
若妻は屋敷で女中をやる前の"自分の日常"を懐かしんだ
確かにそこには、誰の支配も及ばない"自分の日常"が有ったのだ
しかしここは違う
ここは誰かが作った"誰かの日常"に自分が飼われているに過ぎないのだ
自分のものでは無い日常を活きることが、いかに大変か
気付いた時には抜け出せない、そんな自分が、ここに居た
若妻は徐々にストレスに蝕まれて行った
そして若妻はとうとう"ある事"を実行に移した…
一月ほど経った屋敷の庭では、若い植木職人が
庭の手入れをしていた
若妻はなんと!若い植木職人を自分の部屋に誘い込み誘惑した
若い2人は盛り上がり、抱き合いながら行為に及ぼうとした
その瞬間!
たまたま仕事から帰った主人に、現場を発見されてしまった
主人は激高し若い植木職人を蹴散らし


激しく若妻を責め立てた
余りの言われ様に、若妻はとうとうキレてしまった
「あなたに子種が無いからよ!!」叫び終わると、伏して激しく泣いた
主人は呆然としていた
そして主人は若妻をさとしながら事情を聞くと
一月ほど前、秘密に主人の精子を採取し、病院に持ち込んで検査すると
子種が全く無いのが分かったのだ
医者が言うには「おそらくご主人が子供の頃、激しい発熱を伴う病気を
人よりも長く患って、その結果、精子が死滅したのでしょう!?」
若妻はその結果を踏まえ、
この屋敷において自分の存在意義を示す為に
子供さえ生めば、主人も回りの親戚、みんなに自分を認めて貰えると考え
今回の事を計画したのだ
それほどまでに若妻は精神的に追い込まれていた
主人は、若妻から事情を聞き終わると
疲れた顔をして「なんてバカなことを」と言い残すと
若妻を残して、その場を去ってしまった
その日の夕食、夫婦が食卓に付くと、主人が「今日の一件は不問にする」
実にアッサリしていた、若妻はホッとした
同然、屋敷からたたき出される事を覚悟していたのだ
一時はいつもの"誰かの日常"が帰って来るかと思われた
つづく
黒の瓦に黒塗りの壁、黒を基調にした要式美をしていた
そこは何百年も続く伝統的な名家の本家で
黒塗りの塀と門構えは戦国時代のお城を思わせた
そこには厳格な主人と優しい奥さんが、つつましく住んでいた
屋敷はでかいが、使用人を何人も置くほど、やることも無いので
女中(じょちゅう)という住み込みで働く女性が1人だけ
主人は同族会社の社長を務めている
このごろ屋敷では長年奉公した、ばあ様女中が辞める事に成った
そこで夫婦は新たに女中を募集した
すると、たまたま若くて綺麗な女がやって来た
主人は大いに気に入り、奥さんはいちまつの不安を覚えたが
主人に押しきられて住み込みで働く女中に成った
その女は昼も夜もよく働いた
しかも立ち振舞いがキビキビとして愛想もよく、誰からも好感が持てた
奥さんもたいへん気に入った
ほどなくして
ある時、奥さんが屋敷の誰も使って居ないはずの
はなれが何となく気になって

覗いて視てみると、昼間っから主人と若い女中が
まぐわって居るではないか!

夫婦には子が無かった
屋敷を引き継ぐ跡継ぎが居ないのだ
(やはり、主人も跡継ぎが欲しいのだ)そう思うと
奥さんはあえて、見て見ぬ振りをした
子供が出来たら、自分達夫婦が引き取って育てようとも思った
主人は「子供は天からの授かり物だから、気にするな
この屋敷を継ぐものは一族の誰かにやらせれば良い」と言ってくれた
だからこそ、よけい自分に引け目を感じていた
しかし厳格だが自分には優しい主人に
裏切られた現実のショックは、相当なものだった
いく月かは、主人と若い女中の色仲を見守った
しかし、子が出来る様子は全くない
(主人は本当に跡継ぎが欲しくて、若い女中とまぐわっているのだろうか?)
疑念が頭をもたげる
(最近の主人は、以前の主人とは違って来てるのも感じる
目は血走り、どこか荒々しい、私を見る目もどこか冷たい
私は捨てられるのでは?)
嫉妬と恐怖から
とうとう心労が祟り、可愛そうに寝込んでしまった
奥さんの世話をする若い女中
奥さんは若い女中にささやいた「あなたには、がっかりしたわ」
この時、初めて若い女中は自分と主人との中
を、奥さんに知られて居た事に気が付いた!しかし奥さんは数日の内に呆気なく死んでしまった
半年ほどして主人は、奥さんの死から一年の喪が明ける前に
後妻を女取る事にした、相手は若い女中
これには名家の親族も反対した
しかし主人は、その厳格さで周囲を黙らせ、自分の意見を押しきってしまった
若い女中は若妻に成った
前妻には悪いが若妻は正直、嬉しかった
自分がシンデレラにでも成った気がした

自分の替わりに成る女中は何とか主人を言いくるめ
自分よりも、かなり見劣りする女を雇った
しかし時が立つにつれて、見えないプレッシャーが
こんどは若妻に、襲いかかる
前妻を死に追いやったのは自分ではないか!?と云う罪悪感は日に日に強く成る
そして唯一自分の"仕事"である子供が全く出来ない
さらに、元々が女中と主人から始まった関係
支配されているままの関係である
自分の本当に言いたいことは言えず従うのが基本
細々したことを言われれたり、ささいな事を言い合えば「ごめんなさい」
謝るのも常に自分、謝り癖が付いてしまった
女中の時より、窮屈に成っていく束縛感
そして何よりも辛いのが、事ある毎に前妻と比べられる周囲の目
主人は言葉には出さずとも(何故そんなことも知らないのだ?出来ないのだ?)と
目で訴えかけてくる
若妻は屋敷で女中をやる前の"自分の日常"を懐かしんだ
確かにそこには、誰の支配も及ばない"自分の日常"が有ったのだ
しかしここは違う
ここは誰かが作った"誰かの日常"に自分が飼われているに過ぎないのだ
自分のものでは無い日常を活きることが、いかに大変か
気付いた時には抜け出せない、そんな自分が、ここに居た
若妻は徐々にストレスに蝕まれて行った
そして若妻はとうとう"ある事"を実行に移した…
一月ほど経った屋敷の庭では、若い植木職人が
庭の手入れをしていた
若妻はなんと!若い植木職人を自分の部屋に誘い込み誘惑した
若い2人は盛り上がり、抱き合いながら行為に及ぼうとした

その瞬間!
たまたま仕事から帰った主人に、現場を発見されてしまった
主人は激高し若い植木職人を蹴散らし



激しく若妻を責め立てた

余りの言われ様に、若妻はとうとうキレてしまった
「あなたに子種が無いからよ!!」叫び終わると、伏して激しく泣いた
主人は呆然としていた
そして主人は若妻をさとしながら事情を聞くと
一月ほど前、秘密に主人の精子を採取し、病院に持ち込んで検査すると
子種が全く無いのが分かったのだ
医者が言うには「おそらくご主人が子供の頃、激しい発熱を伴う病気を
人よりも長く患って、その結果、精子が死滅したのでしょう!?」
若妻はその結果を踏まえ、
この屋敷において自分の存在意義を示す為に
子供さえ生めば、主人も回りの親戚、みんなに自分を認めて貰えると考え
今回の事を計画したのだ
それほどまでに若妻は精神的に追い込まれていた
主人は、若妻から事情を聞き終わると
疲れた顔をして「なんてバカなことを」と言い残すと
若妻を残して、その場を去ってしまった
その日の夕食、夫婦が食卓に付くと、主人が「今日の一件は不問にする」
実にアッサリしていた、若妻はホッとした
同然、屋敷からたたき出される事を覚悟していたのだ
一時はいつもの"誰かの日常"が帰って来るかと思われた
つづく