永遠に止まっていた時間は、再び動き始めた
「ごめんなさい…」
そう言い残すと、泣きながら岩田の元を走り去った
結局、高木は岩田の告白を断ってしまった
その岩田が今、何とも言えぬヤりきれぬ表情で、皆が高木を攻め立てる選手控え室のなか
ただただ、高木を見つめて立ち尽くしていた
高木は、居たたまれない気持ちになった
自分のことを好きだった岩田からすれば
こんな告白など、聞きたくは無かったで在ろうことは、やすやすと想像出来た
と同時に毒気抜け熱が冷める様に少し正気に戻ってしまった
今の自分が、恥ずかしい気持ちになり下をむく、高木
シーンと静まりかえる、選手控え室
依然として空気は腐り切ったままである
しかし誰かがその静寂を破った
「イワタセンパイ、コンナ、クソオンナ、カバウ、ヒツヨウナイデスヨ!イワタセンパイハ、ヤサシーヵラ」
すると何処からか?又、激しい高木バッシングが始まった
「そうですよ、この糞たれ女に騙されちゃダメですよ!」
「このドブスめ!!」
今回ばかりは、高木はただ黙って石像のように下を向き、皆に言われほうだいである
岩田も黙っている
「一回死んでこいよ!ブス」
「おめ~の面、鏡で見たことあんのかよ?」
「一緒に歩きたくないわ!!恥ずかしい」
「オナP覚えたての猿か!?」
「うんこ女」(笑)
高木への集中砲火は鳴り止まないが、少し間が開いた
その一瞬
聞き慣れない声がした
「ま~ま~、その辺で勘弁してやれんかね?もし」
罵声が止み、その声の主に、皆の視線がむく
?
思わず高木や岩田も目をやった
?
この控え室には、監督、選手、マネジャー合わせて14名しか居ないはずである
しかし確かに居るのである15人目が!?
しかも女性♀どこか甘く清々し声で在った
控え室の、皆から見て死角とも言える隅の方
影に為っていて、皆からはよく見えなかったのである
その女性が、皆の方にゆっくりと進み出て来た
モデルの様な体型に、美しさと愛くるしさを兼ね備えた顔
キャプテンと岩田が、ハッ!となり
一年生がポカーンと見とれていた
条件反射なのか!?サントスが思わず叫んだ
「セニョリ~タ
」
高木は死神にでも魅いられた様な、うらめしそうな目で見ている
フリーズしたはずの監督が、急に再起動を果たした
監督「あ
そうそう
皆に紹介が遅れたが
去年、我が服飾@学園高校を卒業した、亜希くんだ
二三年生の生徒は知ってる者も多いよな!?
昨年の文化祭のミスコン
では人気投票断トツの1位だったものな!
現在は、アパレル関係の仕事で海外で活躍中だ
本来サッカー部とは縁もゆかりも無いんだが!?
今回はタイミング良く帰国してたので
特別に皆の士気を高める為、応援に来てもらった!」
「おー
」歓声が飛ぶ、控え室
亜希は高木とは反対側の監督の隣に立ち、皆に挨拶した
亜希「オハよ
荒井亜希です
皆さんとは、多分直接話した事は無いと思うけど?
見かけたことのある人は、何名か!?居るみたい」
そう言って、ニコっと笑いながらキャプテンと岩田の方を見る
キャプテンと岩田は、明らかに照れて目が泳いでいる
亜希「市立舟端はかなりの強敵だけど、皆さん玉砕覚悟で頑張って下さい
シ・ヌ・キ・デ・ネ
」ニコ
「おー
」
盛り上がる部員一同
「ヒーハー
」
「命捨ててやるぜ
」
亜希の登場により、腐り切って死臭の漂う空気は、一瞬にして
高木の半径3センチをのぞいて、全て浄化され
常夏の国ハイビスカスの咲き乱れる、ハワイの様に為っていた

しかし高木からすれば、監督を軸にして余りにも酷い、亜希との対比で在った
それはまさに、お花畑の様な天国と、糞貯め地獄の紙一重の対比である
直ぐに誰かが亜希に質問した
高木の存在は、皆の記憶から既に消去されている
「カントクトハ、ドウイウ、カンケイナンデスカ?」
亜希「実はね~」
亜希はいたずらっ子の様に、ニンマリ笑いながら
監督を横目で見やると、監督は少し慌てた風に動揺した
亜希「私が卒業してから、どういうルートか知らないけど?
海外に住んでる私の連絡先を調べて
帰国したらデートしようって、何度も誘われたのよ(笑)
でもデートしたいって思わなかったし、断ってたら
だったら今度、顧問してるサッカー部の試合が有るから応援にきてよ?て誘われて
それだったら行きます
て事に為ったのよ」ニヤリ
監督、冷や汗を流す
キャプテン「監督
やりますね♪」
思わずキャプテンが、ニヤケながら監督に突っ込む
「ヒューヒュー
」
「監督もすみに置けないな~」(笑)
「マルガリータ
」
控え室全体が和んだ空気になる、高木の半径3センチを除いて
監督が誤魔化す様な早口で「そうだ

亜希くんが今日の為に皆に、手作りのお守りを用意してくれてるぞ
皆
亜希くんの所に集まれ
」
キャプテン「それは有難いです
でも監督、皆控え室に入る時に、マネジャーの高木から、1人づつお守り貰ってるんですよ
お守りが2つ有ると、神様どうしが喧嘩するっていいませんかね?」
高木は自分の話題が出で、下を向きながらも、ビクッ!となった
すると誰かが「クソノ、ノロイフダナンテ!ステレバイイデショウ!?」
亜希「そんなこと言ってはダメよ、お守りには罪は無いもの
お守りが喧嘩するって言うのも嘘よ
お守りは、有れば有るほど御利益があるんだから皆、仲良くしましょ
」ニコ
キャプテン「それもそうですね
」
そう言いながら、皆、亜希の方へ集まり始めた
亜希は1人1人に、笑顔で話しかけながらお守りを、渡していく
「ウヒョ~
小さくて可愛お守りだな
」
「ありがとうございます
亜希先輩
」
皆、大喜びだ
自然と亜希の周りに、和気あいあいとした人の和が出来て行った
しかし高木は見のがざなかった

皆、タバコのポイ捨ての様に、高木から貰ったお守りを捨てている

自分のお守りは、亜希の急造品と違い
何ヵ月も前からコツコツとこしらえた思いを込めたモノである
生地にしても、亜紀のカラフルで可愛だけの
安くて加工のしやすいケルト生地と違って
わざわざ京都まで出向いて買い付けた
西陣織の金刺繍のあしらった、高価で華やかな生地である
中に入れている、御札は戦勝の神様と言われる
四国、金剛山のガトリンク阿弥陀仏に参らないと手に入らないかなりのレアモノである
亜希のお守りに、戦勝の御札なと入っているはずはない?
きっと『頑張って
』などと書かれたメモが折り畳まれて入っているのが、せきの山だ
そんな安物のお守りを、皆、有難たがって受け取り、子供の様にはしゃいでいる

高木のお守りはと云うと?
ある者は、すみに有るゴミ箱へ投げ捨て
ある者は床の上に、ポトリと落とし踏みつける

けして言葉には出さない無言の行為
高木は、ひたすら悲しかった
もう自分の居場所はここには無いと思った…
しかし高木は見付けてしまった

岩田だけは、皆の和には入らず、その場に立ち尽くしている
しかも手には、高木のお守りを握りしめているではないか!?
高木は救われた気がした、そして高木は思った
高木「そうなんだわ、岩田先輩は自分と一緒なんだ
岩田先輩も自分も、皆の和に入れないで居るもの
」
「岩田先輩…」そう口走ると
岩田に救いを求め、小走りで駆け寄った
高木「岩田先輩はまだ自分のことを好きで居てくれる
」
その思いだけが、行動の原動力であった
高木は泣いていた、すっと岩田の手をとり、声を絞りだす様に訴えた
高木「岩田先輩!私…もうここには居たくない
サ-カー部なんて…もうどうでもいい
一緒に外に出ましょ…今からホテル行っても良いよ」
今の高木に出来る、精一杯の言葉であった
しかし岩田はボーッと高木を眺めるだけ…
岩田は元来、可哀想なモノをほって置けない性格、自分でも自覚が有った
しかし、なぜ自分はこの目の前にいる
高木という不細工な女子マネジャーが、好きたったのか分からない?
岩田は無意識に、高木の手を振り払い
握り締めていた、高木のお守りを、高木の顔面に
おもいっきり野球のオーバースローで投げつけた
軽いお守りとはいえ、近距離なので
高木は「グエッ!!」とイボガエの様な叫び声を上げて、顔面をのけぞらした
岩田には、自分では自覚していない部分があった
岩田は優しいのではなく、自分より可哀想な者が好きな偽善者であり変体であった
可哀想なモノをほっとけない=助ける=優越感
可哀想なモノ=好きなのである
そんな隠れた自分の一面を、岩田は今まで気付かなかった
そして今日始めて、自分が可哀想な立場になって、岩田の自我は崩壊し
高木の毒で洗われた魂は"本来の岩田"と云うべき性格に再構築されたのだった!!
岩田「高木
俺様に気安く触ってんじゃね~よ
この糞女が
お前とホテル行くぐらいなら、その辺の犬とヤルわ
近寄るな
ドブスやりマン
」
高木は、信じられないと云う表情でお守りの当たった、鼻の真ん中を手で抑えて呆然としている
あの優しい岩田が発した言葉とは、思えない
高木「いや何かの間違いだわ
」
なおも巻くし立てる、岩田「彼氏も絶対出来ないブスマネジャーを可哀想に思った俺様は、一生の記念に、お前に告白してやっただけだわ
マジボケに勘違いしてんじゃねーぞ
コラ
俺様とお前を一緒にしてんじゃね~よ、クソ又女
」
何かの聞き違いでは無い事を、高木は確信した
そしてスローモーションの様に、両膝をつき土下座の格好で、小さく丸まった
そう高木は、無意識に全ての思考を強制停止し貝に成ったのだ
それきり、高木は動かない
しかし、亜希を中心にワイワイ騒いでいる皆は今の2人のやり取りを全く気付かなかった
亜希以外は…
監督が思い出した様に、大声で岩田を呼ぶ
監督「そうそう岩田、お前、試合には出て貰うぞ
サッカーはスタートは11人だけど、途中交代は3人まで出来るんだ
お前は、アレだ
スーパーサブって奴だ
CoCo壱番の勝負所で、必ず出て貰うからな
言うの忘れてたわ
ごめんごめん
」

岩田「だと思いましたよ、監督
」
キャンプ「良かったな~岩田~」(泣)
岩田は元気よく、皆の和の中に駆け込んで行く
皆、大喜びで岩田を迎え入れる
岩田「キャプテン
泣くのはまだ早いぜ
俺様に任せとけって、手向かう奴は全員地獄を見せてやるぜ
」
監督「何か岩田!キャラ変わったか
」
皆の笑い声が、控え室にこだまする…
こうして試合は始まった、誰もいなくなった選手控え室には
試合の歓声が、小さく漏れてくる
そこには貝だけが、取り残されていた
そしてもう1人…
亜希はしばらくの間、優しく貝を見つめていた
試合はと云うと、試合開始3分でサントスが、足を吊ってしまい
そうそうに岩田は試合には出た、何とか岩田の個人技で、1点はもぎ取ったが
それが限界であった
市立舟端高校の選手は、最初こそ相手高校のマンマークに
気持ち悪がったが、徐々に平常心を取り戻し
気がつけば、1人を除いて試合に出た全員が2~3点は決めていた
何しろゴールキーパーにまで点を入れられるしまつ
しかし何故か?高校屈指のストライカー、岩清水君は
試合中、しゅうし頬を赤らめ、冴えの無いプレーを繰り返し
相手チームの選手とジャレ合ったり、ボールを渡して上げたりもしていた
そして、けして点を決める事もなかったと云う
試合が終わって、控え室に帰ってきた服飾@学園の選手達は
悔し涙を流したり、叫んだりしたが
監督は、ウンウンとうなずきながら腕組みして選手達を見守った
着替えとキャプテンと岩田の部活引退ミーティングが終わり
解散する頃には、負傷したサントスを含め
皆、爽やかな笑顔になって帰路についた
貝を除いて…
つづく
「ごめんなさい…」
そう言い残すと、泣きながら岩田の元を走り去った
結局、高木は岩田の告白を断ってしまった
その岩田が今、何とも言えぬヤりきれぬ表情で、皆が高木を攻め立てる選手控え室のなか
ただただ、高木を見つめて立ち尽くしていた
高木は、居たたまれない気持ちになった
自分のことを好きだった岩田からすれば
こんな告白など、聞きたくは無かったで在ろうことは、やすやすと想像出来た
と同時に毒気抜け熱が冷める様に少し正気に戻ってしまった
今の自分が、恥ずかしい気持ちになり下をむく、高木
シーンと静まりかえる、選手控え室
依然として空気は腐り切ったままである
しかし誰かがその静寂を破った
「イワタセンパイ、コンナ、クソオンナ、カバウ、ヒツヨウナイデスヨ!イワタセンパイハ、ヤサシーヵラ」
すると何処からか?又、激しい高木バッシングが始まった
「そうですよ、この糞たれ女に騙されちゃダメですよ!」
「このドブスめ!!」
今回ばかりは、高木はただ黙って石像のように下を向き、皆に言われほうだいである
岩田も黙っている
「一回死んでこいよ!ブス」
「おめ~の面、鏡で見たことあんのかよ?」
「一緒に歩きたくないわ!!恥ずかしい」
「オナP覚えたての猿か!?」
「うんこ女」(笑)
高木への集中砲火は鳴り止まないが、少し間が開いた
その一瞬
聞き慣れない声がした「ま~ま~、その辺で勘弁してやれんかね?もし」
罵声が止み、その声の主に、皆の視線がむく
?思わず高木や岩田も目をやった
?この控え室には、監督、選手、マネジャー合わせて14名しか居ないはずである
しかし確かに居るのである15人目が!?
しかも女性♀どこか甘く清々し声で在った
控え室の、皆から見て死角とも言える隅の方
影に為っていて、皆からはよく見えなかったのである
その女性が、皆の方にゆっくりと進み出て来た
モデルの様な体型に、美しさと愛くるしさを兼ね備えた顔
キャプテンと岩田が、ハッ!となり
一年生がポカーンと見とれていた

条件反射なのか!?サントスが思わず叫んだ
「セニョリ~タ
」
高木は死神にでも魅いられた様な、うらめしそうな目で見ている
フリーズしたはずの監督が、急に再起動を果たした
監督「あ
そうそう
皆に紹介が遅れたが
去年、我が服飾@学園高校を卒業した、亜希くんだ
二三年生の生徒は知ってる者も多いよな!?
昨年の文化祭のミスコン
では人気投票断トツの1位だったものな!
現在は、アパレル関係の仕事で海外で活躍中だ
本来サッカー部とは縁もゆかりも無いんだが!?
今回はタイミング良く帰国してたので
特別に皆の士気を高める為、応援に来てもらった!」
「おー
」歓声が飛ぶ、控え室亜希は高木とは反対側の監督の隣に立ち、皆に挨拶した
亜希「オハよ
荒井亜希です皆さんとは、多分直接話した事は無いと思うけど?
見かけたことのある人は、何名か!?居るみたい」
そう言って、ニコっと笑いながらキャプテンと岩田の方を見る
キャプテンと岩田は、明らかに照れて目が泳いでいる
亜希「市立舟端はかなりの強敵だけど、皆さん玉砕覚悟で頑張って下さい
シ・ヌ・キ・デ・ネ
」ニコ「おー
」
盛り上がる部員一同「ヒーハー
」
「命捨ててやるぜ
」亜希の登場により、腐り切って死臭の漂う空気は、一瞬にして

高木の半径3センチをのぞいて、全て浄化され
常夏の国ハイビスカスの咲き乱れる、ハワイの様に為っていた


しかし高木からすれば、監督を軸にして余りにも酷い、亜希との対比で在った
それはまさに、お花畑の様な天国と、糞貯め地獄の紙一重の対比である
直ぐに誰かが亜希に質問した
高木の存在は、皆の記憶から既に消去されている
「カントクトハ、ドウイウ、カンケイナンデスカ?」
亜希「実はね~」
亜希はいたずらっ子の様に、ニンマリ笑いながら
監督を横目で見やると、監督は少し慌てた風に動揺した
亜希「私が卒業してから、どういうルートか知らないけど?
海外に住んでる私の連絡先を調べて
帰国したらデートしようって、何度も誘われたのよ(笑)
でもデートしたいって思わなかったし、断ってたら

だったら今度、顧問してるサッカー部の試合が有るから応援にきてよ?て誘われて
それだったら行きます

て事に為ったのよ」ニヤリ監督、冷や汗を流す
キャプテン「監督
やりますね♪」思わずキャプテンが、ニヤケながら監督に突っ込む
「ヒューヒュー
」「監督もすみに置けないな~」(笑)
「マルガリータ
」
控え室全体が和んだ空気になる、高木の半径3センチを除いて
監督が誤魔化す様な早口で「そうだ


亜希くんが今日の為に皆に、手作りのお守りを用意してくれてるぞ
皆
亜希くんの所に集まれ
」キャプテン「それは有難いです

でも監督、皆控え室に入る時に、マネジャーの高木から、1人づつお守り貰ってるんですよ
お守りが2つ有ると、神様どうしが喧嘩するっていいませんかね?」

高木は自分の話題が出で、下を向きながらも、ビクッ!となった
すると誰かが「クソノ、ノロイフダナンテ!ステレバイイデショウ!?」
亜希「そんなこと言ってはダメよ、お守りには罪は無いもの
お守りが喧嘩するって言うのも嘘よ
お守りは、有れば有るほど御利益があるんだから皆、仲良くしましょ
」ニコキャプテン「それもそうですね
」そう言いながら、皆、亜希の方へ集まり始めた
亜希は1人1人に、笑顔で話しかけながらお守りを、渡していく
「ウヒョ~
小さくて可愛お守りだな
」「ありがとうございます
亜希先輩
」皆、大喜びだ

自然と亜希の周りに、和気あいあいとした人の和が出来て行った
しかし高木は見のがざなかった


皆、タバコのポイ捨ての様に、高木から貰ったお守りを捨てている


自分のお守りは、亜希の急造品と違い
何ヵ月も前からコツコツとこしらえた思いを込めたモノである
生地にしても、亜紀のカラフルで可愛だけの
安くて加工のしやすいケルト生地と違って
わざわざ京都まで出向いて買い付けた
西陣織の金刺繍のあしらった、高価で華やかな生地である
中に入れている、御札は戦勝の神様と言われる
四国、金剛山のガトリンク阿弥陀仏に参らないと手に入らないかなりのレアモノである
亜希のお守りに、戦勝の御札なと入っているはずはない?
きっと『頑張って
』などと書かれたメモが折り畳まれて入っているのが、せきの山だ
そんな安物のお守りを、皆、有難たがって受け取り、子供の様にはしゃいでいる


高木のお守りはと云うと?
ある者は、すみに有るゴミ箱へ投げ捨て

ある者は床の上に、ポトリと落とし踏みつける


けして言葉には出さない無言の行為
高木は、ひたすら悲しかった

もう自分の居場所はここには無いと思った…
しかし高木は見付けてしまった


岩田だけは、皆の和には入らず、その場に立ち尽くしている
しかも手には、高木のお守りを握りしめているではないか!?
高木は救われた気がした、そして高木は思った
高木「そうなんだわ、岩田先輩は自分と一緒なんだ
岩田先輩も自分も、皆の和に入れないで居るもの
」
「岩田先輩…」そう口走ると
岩田に救いを求め、小走りで駆け寄った

高木「岩田先輩はまだ自分のことを好きで居てくれる
」その思いだけが、行動の原動力であった
高木は泣いていた、すっと岩田の手をとり、声を絞りだす様に訴えた
高木「岩田先輩!私…もうここには居たくない

サ-カー部なんて…もうどうでもいい
一緒に外に出ましょ…今からホテル行っても良いよ」
今の高木に出来る、精一杯の言葉であった
しかし岩田はボーッと高木を眺めるだけ…
岩田は元来、可哀想なモノをほって置けない性格、自分でも自覚が有った
しかし、なぜ自分はこの目の前にいる
高木という不細工な女子マネジャーが、好きたったのか分からない?
岩田は無意識に、高木の手を振り払い
握り締めていた、高木のお守りを、高木の顔面に
おもいっきり野球のオーバースローで投げつけた

軽いお守りとはいえ、近距離なので
高木は「グエッ!!」とイボガエの様な叫び声を上げて、顔面をのけぞらした

岩田には、自分では自覚していない部分があった
岩田は優しいのではなく、自分より可哀想な者が好きな偽善者であり変体であった
可哀想なモノをほっとけない=助ける=優越感
可哀想なモノ=好きなのである
そんな隠れた自分の一面を、岩田は今まで気付かなかった
そして今日始めて、自分が可哀想な立場になって、岩田の自我は崩壊し
高木の毒で洗われた魂は"本来の岩田"と云うべき性格に再構築されたのだった!!

岩田「高木
俺様に気安く触ってんじゃね~よ
この糞女が

お前とホテル行くぐらいなら、その辺の犬とヤルわ

近寄るな
ドブスやりマン
」高木は、信じられないと云う表情でお守りの当たった、鼻の真ん中を手で抑えて呆然としている
あの優しい岩田が発した言葉とは、思えない
高木「いや何かの間違いだわ
」
なおも巻くし立てる、岩田「彼氏も絶対出来ないブスマネジャーを可哀想に思った俺様は、一生の記念に、お前に告白してやっただけだわ

マジボケに勘違いしてんじゃねーぞ
コラ俺様とお前を一緒にしてんじゃね~よ、クソ又女
」何かの聞き違いでは無い事を、高木は確信した
そしてスローモーションの様に、両膝をつき土下座の格好で、小さく丸まった
そう高木は、無意識に全ての思考を強制停止し貝に成ったのだ
それきり、高木は動かない
しかし、亜希を中心にワイワイ騒いでいる皆は今の2人のやり取りを全く気付かなかった
亜希以外は…
監督が思い出した様に、大声で岩田を呼ぶ
監督「そうそう岩田、お前、試合には出て貰うぞ

サッカーはスタートは11人だけど、途中交代は3人まで出来るんだ
お前は、アレだ
スーパーサブって奴だ
CoCo壱番の勝負所で、必ず出て貰うからな
言うの忘れてたわ
ごめんごめん
」

岩田「だと思いましたよ、監督
」キャンプ「良かったな~岩田~」(泣)
岩田は元気よく、皆の和の中に駆け込んで行く

皆、大喜びで岩田を迎え入れる
岩田「キャプテン
泣くのはまだ早いぜ俺様に任せとけって、手向かう奴は全員地獄を見せてやるぜ
」
監督「何か岩田!キャラ変わったか
」
皆の笑い声が、控え室にこだまする…
こうして試合は始まった、誰もいなくなった選手控え室には
試合の歓声が、小さく漏れてくる
そこには貝だけが、取り残されていた
そしてもう1人…
亜希はしばらくの間、優しく貝を見つめていた
試合はと云うと、試合開始3分でサントスが、足を吊ってしまい
そうそうに岩田は試合には出た、何とか岩田の個人技で、1点はもぎ取ったが
それが限界であった
市立舟端高校の選手は、最初こそ相手高校のマンマークに
気持ち悪がったが、徐々に平常心を取り戻し
気がつけば、1人を除いて試合に出た全員が2~3点は決めていた
何しろゴールキーパーにまで点を入れられるしまつ
しかし何故か?高校屈指のストライカー、岩清水君は
試合中、しゅうし頬を赤らめ、冴えの無いプレーを繰り返し
相手チームの選手とジャレ合ったり、ボールを渡して上げたりもしていた
そして、けして点を決める事もなかったと云う
試合が終わって、控え室に帰ってきた服飾@学園の選手達は
悔し涙を流したり、叫んだりしたが
監督は、ウンウンとうなずきながら腕組みして選手達を見守った
着替えとキャプテンと岩田の部活引退ミーティングが終わり
解散する頃には、負傷したサントスを含め
皆、爽やかな笑顔になって帰路についた
貝を除いて…
つづく