仏滅:友引:先負これらは暦上不吉な日として避けられているがなぜ1人の人が逝去すると毎日のように立て続けに逝去するのだろうかそんな事今まで考えてもいなかったし人は遅かれ早かれいずれ亡くなるのだから考えたからって何もならないそう思っていた(アナウンサーの声)[昨夜21:20頃碧星市で20代男性が空き物置で首を吊って死亡している所を通行人が発見しました死亡していたのは事業所契約社員簗瀬史也さん(25)簗瀬さんの経緯はまだ解っていませんが事件と自殺の両面で捜査する模様です]と言うのを上の空で聞き流し左手でリモコンを持ちそして電源ボタンを押すとテレビ画面が切れる音が少し小さく聞こえ画面が真っ黒になりうっすらとぼやけて少し幼さが残る人物の顔が映し出された見る限りでは女性であるそろりとベッドの上で立ち上がりこじんまりとした部屋を出るドアには木製で出来たプレートにテプラで勘解由簾琳という名前が貼ってありリビングに向かうと背後から[おはよう]と眠そうな声で起きてきた1人の女性が後を付いて行く彼女は恐らく簾琳の同居人である人物だしかし簾琳はそんな声も聞かないふりをして朝食を食べ進めたというのは今日の簾琳は早番でいつもより早いバスに乗らなくてはならないのだが今朝は運悪く居間の掃除という一番手が掛かる場所に当たってしまっているかと言ってやらなきゃ何を噂されるか解りゃあしないなのだからここはひとまず軽く掃除して遣り過ごそうじゃないと両方遅刻になってしまうと1人心の中で呟いていると再び1人の女性が簾琳の前に現れた同じく簾琳の同居人かもしれないちょこんと簾琳の前に座り[今日は何時までに出掛けるの?]と訊いてきた簾琳は近くに見える時計を見て[大体7時21分位かな]と答えると[解った]と言って再び自分の部屋に戻って行ったプレートにはテプラで湊谷怜歩と貼ってある怜歩はかなりの寝坊助で出勤前ギリギリまで眠っている[頂きます]とさっきの眠そうな声で起きてきたのは間宮朱夏だった今顔を洗って来て一旦部屋に戻って行ったが朝食を食べに再びリビングに戻って来たのだその他にも色々居そうだがそれらは後回しにしてその頃突然自殺の現場となってしまった空き物置では所轄の捜査員などが忙しく動き回りその中で1人立ち尽くした青年が居りその横に仰向けでかなり冷たいコンクリートの上に横たわる青年が居る[本当に俺死んだんだまだ実感は無いけれどもうこの世界に未練は無いんだからきっとこれで良かったんだ今度は何に生まれ変わっても良いけれども人間以外なら…]と立ち竦む青年は独り言のように言い残してうっすらと消えコンクリートに横たわる青年はすでに死後硬直が進み石の様に固まってしまっていたその時どこからか女性の声で何度も[史也!史也!]と叫び続けているそれはこの青年の母親である簗瀬琴弥の声だったそうであるこの青年は昨夜21:20頃この物置で首を吊って死亡している所を通行人に発見された事業所の契約社員であった簗瀬史也っていう人なのだそしてさっき消えたのは幽体となった簗瀬史也となるでもこの後彼に想いもよらない言葉が出るんなんて誰も予想していませんしかしたった1人知っているのは雲の上に居る神様だけその神様もまた自分自身に降り掛かる出来事を知らずにいたのだ<県内バスの中>今日は自棄に時間が遅く感じるいつもだったら[もう降りなきゃ]と急いでIDカードを鞄から探すのに何となく余裕を持って料金箱の上の機械でスキャン出来そうだと思いながら数十分後に最寄りのバス停に到着しそこから数歩歩いたら会社に到着した簾琳の職業は鉄道客室乗務員である航空客室乗務員よりは少し華やかでは無いが遣り甲斐は感じられる仕事だと思っている[おはようございます]といつもの様に挨拶をし事務所に入って更衣室で制服に着替えるそして軽くメイクを直しスカーフは指定通りに結んだらもう一度事務所に行き隅っこの方で鏡の前で笑顔を練習して発声練習もして接客基本用語を読み上げる[いらっしゃいませお待たせ致しました]とかであるそれが終わったら指示事項を訊き指定通りのお金を持って駅のホームにワゴンを用意し事前に予約されたお弁当を受け取ったら準備万端で到着した列車を出迎える毎日その繰り返し[本日は特急6800系にご利用頂き誠に有難う御座いますこの列車は終点東鷗橋駅となっております快適な列車の旅をお過ごし下さいます様私達従業員一同務めて参ります]と言い終えると1人の客が客室乗務員室に入って来て[大変だ自由席に指名手配犯人らしき人物が乗っているすぐになんとかしてくれ]と伝えて来た同乗している鉄道客室乗務員が思わず大きな声を出し慌てて自分の手で口を塞ぎ震えているのだが簾琳は至って冷静にその鉄道客室乗務員に対し[絢ちゃん…絢ちゃん!落ち着いて他のお客様が不安がるわ良い警察が到着するまで私達が出来る事は慎重に業務を進める事よいつも通りに業務をしお客様の快適な列車の旅を邪魔をしてはいけないの良いわね]と簾琳が言うと絢ちゃんと呼ばれた鉄道客室乗務員はコクコクと頷きようやく手を離しその客に質問した[本当にお客様が何回かお見かけした指名手配中の犯人で間違い無いですか?]と訊くと[う~んそれを言われると曖昧だけど間違い無いと思う名前は確か栗高裕典だったかな]と応えた[そうですかあっ特徴は覚えていますか?]と訊くと[左目の下と横に小さな疣が2つと唇の右横に小さな黶あとは顔の割には極めてアンバランスな顔立ちあの指名手配写真を見たら喩え自分みたいに曖昧だとしても忘れられない顔だと思うよ]と言われ[解りました直ちに輸送指令室や各乗務員などに報告させて頂きますあと他の駅にも連絡を致しますので申し訳無いんですが少しの間何も気付かなかった様にして頂けませんでしょうか?]と言うと渋った表情を浮かべてその客は戻って行った[絢ちゃん…絢ちゃん!今すぐ輸送指令室と次の駅の方に連絡してくれる?私は車掌の湍水さんと運転士の日暮さんに知らせて来るから]と指示したのだが同期の霜原は未だに怖がってしまっているのを見て仕方が無く1人で行動する羽目になった先ずは持っていた携帯電話で次の停車駅に報告する事にした<発信音が鳴る>[あっお疲れ様です客室乗務員の勘解由です]と言うと送話口から[あぁどうかしましたか?]と訊ねる声に聞き覚えがあった駅務係の養老臣司だ[実は私達が乗っている特急6800系に指名手配中の栗高裕典容疑者が乗車している様で…]と伝えると[指名手配犯?そんな馬鹿な]と言われ簾琳は[とにかく今すぐにでも輸送指令室の連絡と鉄道警察隊の方をご用意願い出来ますか?]と言うと[解った解った]と言って一方的に切られてしまった簾琳はろくに内容も聞かない事にしばらく驚きを隠せずにいたがそのまま乗務員室に連絡をした[緊急緊急只今乗車なされている方からのご報告がありまして2号車のA側通路に指名手配中の栗高裕典容疑者が乗車しているみたいなんです]と言うと車掌の湍水さんが[なんだって?それで次に停車する駅の事務所の方には報告したのか?]と訊かれ[えぇ次に停車する駅には報告しましたが相手が養老さんで一方的にすぐ切られてしまいました]と言うと[すぐに切られただと?それで輸送指令室には?]と訊かれ[自らの連絡はまだ]と言うと[今すぐ連絡しなさい]と言われ[分かりました]と言ってすぐに輸送指令室の方に電話をした[緊急緊急こちら特急6800系です只今乗車なされている方からのご報告なんですが指名手配中の栗高裕典容疑者と思われる人物が乗車しているもよう至急最寄り駅3ヶ所に連絡して頂けませんでしょうか?]と伝えると[分かりました直ちに最寄りの駅3ヶ所と連携を取り素早く鉄道警察隊を向かわせますですのでこちらからの指示を待っていてください]と言われ電話を切り輸送指令室の連絡指示のもと警察官を最寄りの駅3ヶ所に振り分けられたその間指名手配犯や乗客全員に気付かれない様に運転手の日暮さんにも報告し出来る範囲で事を終わらせた簾琳は同期の霜原絢実と一緒に車内販売準備室で再度ワゴン車の最終設備点検の準備をし只今より車内販売を致します順にお客様のお席を通りますのでご面倒かもしれませんがご注文が御座いましたらその都度お申し付け下さいますようお願い申し上げます]とアナウンスをした<ワゴンを移動させ自動ドアが開き再びワゴンを移動させる>[失礼致します本日は御乗車頂き誠に有り難う御座います車内販売です各地からお取り寄せ致しましたお弁当サンドイッチ常温で温かい珈琲等は如何でしょうか?]と言うと早速とばかりに1人の乗客が[すみません清涼飲料水ありますか?]と訊いて来た[はいございますがどちらに致しますか?]と手元に有ったご案内を手に取りそのページを見せるとボトル缶に入った物を選んだ[こちらですね畏まりました]と言いボトル缶を手に取りその後に片手を手に添え乗客に差し出して[お待たせ致しました140円になります]と言うと乗客は150円を渡し簾琳は10円を渡して[ありがとうございました]と軽く会釈をして再びワゴン車を動かすさっき指名手配中の犯人を見付け報告してくれた人はイライラと不安が募っているのか落ち着きが無くその空気は徐々に周りにも漂っている様に感じこっちにまで緊張感が走る霜原は1つ前の車両でワゴンを押しているしかし表情は分からないがきちんと仕事をしているのだろうと信じる事にしたのだが[やっぱり無理だ]と判断し[すみませんちょっと失礼致します]と言い大きなワゴンの小さな隙間を無理矢理にすり抜け1つ前の車両まで着くと[霜原さんやっぱり今日は休んでいて後の事は私がやっておくから]と小声でいうと霜原の表情は死神に連れ拐われた様に引き吊っており[すみませんありがとうございます]と言いこの車両だけ遣り遂げると客室乗務員控え室で休んでいた[大変申し訳ございません]と再度大きなワゴンの小さな隙間を無理矢理にすり抜けサービスを開始したその頃警察署では死体見分を行われようとしていた[では死体見分を行います宜しくお願い致します]と担当医の大神田誠之が頭を下げ言うと周りの担当警察官らも[宜しくお願い致します]と頭を下げたそして見分は約4時間30分で終わり遺族側の訴えも虚しく結果は自殺と判断し死亡診断書らしき書類を書き始めそれから廊下で待っていた遺族だろうか一人の女性に渡したその女性は先程まであの空き物置で[史也!史也!]と叫び続けていた史也の母親である琴弥だった琴弥はその用紙を見つめていたが次第に感情が込み上げ突然[なんで!]と大声で泣き叫び何度も息子の史也の名前を繰り返して崩れ落ち持っていた書類はクリアファイルに入れられていた為大袈裟にくしゃくしゃにならずに済んだそして死後数時間程経っているのに史也はまだこの世の風に漂っていたとはいえそう長くは居られないそう7日ずつ経てば閻魔大王の裁きを受けなければならないのだがその間史也は特別誰かに再び会いに行く事なんて無くただ通りすがりに地上の人々の行動を眺めていた[あぁ今日から俺はもうあの中に居る事はもう無くなったんだなんて良い気分なんだろう当分の間仕事しなくても良いし周りの事も考えたりしなくても良いまぁ心残りなのは彼女が出来なかった事ぐらい…でもそんな事どうでも良いや少しだけ自由が出来るっていうなら自由で居よう]等と言いながら風が吹く方向と共に浮遊していたしかしこの後の出来事で史也はある体験をする事になるなんて思いも寄らなかったのだ<簗瀬家>車を停め数人の人物が降りてきた警察署で琴弥が泣き崩れ落胆している間にその警察署の霊安室から出て夫か長男のどちらかが早速とばかりに葬儀会社や近くに住む親戚達などに電話を掛けまくり手配したのだろうそして連絡を受けた近くに住む親戚達はこぞって玄関先で待ち構えていたが誰一人涙なんて流してはおらずと言ってもここに着くまでの間に少しぐらいは涙が出ていたのかもしれないがそんな事を見聞きした所でなんの意味も持たない事くらいは誰もが恐らく理解出来ていたそんな時[いやぁ吃驚したよ史也が自殺したんだって?なんでそんな事になったんだ?]と中年男性が歩み寄り話し掛けてきたそんな男性を横目にガチャガチャと家の鍵を探し見付けて鍵を開けようとする青年が[さぁそんな事俺に訊かれても分かる訳無いじゃん]と冷たい声で返され中年男性はぽかんとした表情をしちょっとの間が空いたその後に[そりゃあそうだよな]と言って開いたドアを持ち他の親戚達に手招きをして中に入って行ったこの時点で集まったのは史也家族を入れて19人今話していた人物は叔父の河原﨑嵩廣と史也の兄の簗瀬煌世であるそして背後で[琴さん大丈夫?辛かったね]と琴弥の傍らに寄り添い支えているのは伯母の京極優瑞菜だその後ろにはぞろぞろと残りの人物達が連なって付いて行く史也の遺体が入った柩は奥の和室のクローゼットと箪笥の前に置かれそそくさと必要最低限で質素な祭壇等を組み立てられていくそしてもう一度柩を動かし組み立てた祭壇をつい今しがた柩が置かれていた場所に動かして再度柩を元の場所に設置したまだ幼い従弟の京極亮我や従妹の高田祗茉が物珍しそうに史也の顔を見て[この人本当に死んでいるの?]と叔母の今岡映璃が[止めなさいお兄さんが嫌がっているじゃない]と次々と子供達を柩の前から離した子供達はつまらなそうに大人達が居るキッチンへ行った優瑞菜以外の女性群は手慣れらた手付きで互いの得意料理を作っておりそれを横目に男性群は出された物をつまみながらビールを傾けていた[それにしても史也は良い死に方しなかったな]と叔父の簗瀬嘉巌が言うと[あぁそうだな]と史也の父親である簗瀬嘉崇が呟く様に言ったすると嘉巌所の次男である簗瀬健悠が[史也は小学校の中学年から兎に角無気力な子だったよなぁ誰に対してもぶっきらぼうで冷めていたし愛想もない一体どこであぁいう人間に育ってしまったんだろうな]と呟く様に言うと伯父の簗瀬嘉應が[簗瀬家の一部の人間はそういう所が有るから仕方が無いんだよ]と言いグラスに灌がれたビールを一気に飲み干したその近くで聞いていた煌世が[俺は単純にあいつの言動を嫌で仕方なかったよ]とぼやく様に呟いた時を同じくして史也が眠る和室では琴弥に寄り添う優瑞菜の姿が有り琴弥の背中を擦りながら一緒に涙を流していたそんな事など露程も思っていない史也は神宮の本殿で7日間を過ごす事にした[そこで何をしておる]と誰かの声が聞こえ振り向くと邪鬼のようなかなり大きな人物が既に史也を見下ろしていた史也は[うわぁ]と驚き角の方に後退りをし腰を抜かしているのか上手く立ち上がらない様だったしかも全身の震えも止まらない中[お前死に人か?]と訊かれても史也は未だに声が出ず口は大きく開いたままだったそれを見つめ邪鬼は[だったらここは違う神宮だ死に人は京都か滋賀あたりであろうそこに行けば良かろう]と言い続けて[さっさと出て行くが良い仕事の邪魔だ]と言って門の所を指を指したのだが当の史也は未だに立つ事も声を出す事も出来ずにいた邪鬼は大きく溜め息を付き仕事を始め暫くして全身の震えや恐怖心が消えた史也はすくっと立ち上がり邪鬼があげた地名へと向かおうとしたのだがなぜか境界線が抜けられなかった[どういう事だよ]と言いながら門の扉を何度も揺さぶるのだったその頃簾琳はというとワゴン車を車内販売準備室へと片付け終え小さく蹲る霜原に簾琳はちょっと冷たい視線を配らせて業務を続けていく[どうして…]とか細い声で霜原が呟かれ簾琳が少し膨れっ面で霜原を見た[どうして!勘解由さんはそんなに冷静でいられるの?相手は正真正銘の指名手配犯なんだよ!怖くないの?]とキレ気味で訊かれ簾琳は呆れた表情を浮かべ小さく蹲っている霜原の顔と自らの顔を付き合わせ[そりゃあ内心怖いわよでもまだそうとは決まっていないでしょ?もしかしたら人違いかもしれないっていうかその前に乗客の安全を守るのが最優先な時に私達乗務員が怖がってどうするの?もう少し自覚有る人物だと思っていたけどとんだ私の思い込みだったんだ貴女本当にこの職種にむいてないと思うわよ他当たったらどぉ弱虫]と言われ霜原はそれ以上なにも言わなくなった[次は鵺月です降り口は左側をご利用下さいますようお願い申し上げます]という車内アナウンスが流れ簾琳は商品の在庫を確認をし始めたその時外側からノックが聞こえた普段だったらここでドアを開ける所だが現在は容疑者らしき人物が息を潜めている真っ最中だという事を踏まえた上でドア越しで会話する事にした[申し訳ございません只今少し取り込んでおりますのでドア越しですがご用件を御申し下さいますか?]と言うとドア越しの人物は[すみません急にアイスが食べたくなったので5個だけでも貰えませんか?]と言われ簾琳は[はい畏まりましたメニュー表では通常販売のアイスと月替わりで販売のアイスがございますがどちらになさいますか?]と訊ねるとその人物は少し間を置いて[月替わり]と小声で言われ専用の冷蔵庫から月替わりのアイスを取り出しながら[合計で1600円になります]と言うとその人物は財布を取り出したのか小銭を荒らすような音を立てていた簾琳はアイスが溶けないように少し冷やした保冷剤を専用の袋に入れ一息を付いて冷静さを装いドアの方へと歩きドアの前に立ったその間自然と袋の持ち手は固く握られた為この短時間でくしゃくしゃになってしまっているが現在はそんな事などで正している場合では無い気がしているのか反対側の手でドアの取手に手を掛け静かにドアをスライドさせ[お待たせ致しましたこちら商品です]と言い袋に入ったアイスの底を掌で軽く添え前に差し出したっていうか伝える程でもないが袋を持った両手は他人でも分かるぐらいかなり震えていたしかしその人物はフードを目深に被っており恐らくだが手の震えにはほとんど気付かれてはいない様だったでも確実に先程見掛けた[指名手配犯人:栗高裕典]に似た人物の身形である簾琳は霜原の目に触れさせない様精一杯その人物を隠しいつものように対応をしたアイスを受け取った人物は[ありがとう]と言いその場を去って行き簾琳はその人物を静かに見届け席で大人しくアイスを食している事を願ってドアを閉めたそして次の停車駅の鵺月に到着をし鉄道警察の捜査員が数名乗り込んで来たが栗高らしき人物は既に客室には居らず乗り込んだ隙を付き素早く降りてしまったのだろうしかしプラットホーム内で待ち構えていた警官達に目を付けられてしまい御用となった後の取り調べ等から御用になった人物はほぼそっくりなだけで全くの別人だった事が判明したしかし着用していた持ち物から犯人の物と思われる指紋が検出された事から取り調べと捜査は未だに続けられたその頃史也はというと未だに邪鬼が住み着いていると思われる神宮の本殿の結界が張られた門の扉を叩き叫んでいた邪鬼達からは鋭い針のような視線を送られ危害を加えそうな邪鬼には残りの邪鬼が総出で抑え付けた一体何時間経ったのだろうか出来るだけ沢山門の扉を叩き付け周囲に気付いて貰える事を必死に願ってしまっていたせいでもうすでに幽霊になっているにも関わらず手が痛く感じ目には涙で滲んだように湿っていた[えっ幽霊にでもこんな事が出来るんだ]と一人で感心しているとここの神主だろうか周りをキョロキョロしながらこっちに歩いてきて俺を見付けたのか門の扉に向かって[お前さんこの結界が破れないのか]と訊かれ大きく頷くと[仕方がないなぁ]と言い小声でお経なのかは分からないが小さな穴を作り[出来たここから出れるから出なさい]と神主っぽい人物に言われ俺は目の前にある光景に[えっ?]と小さな声が出て[ここから脱出なんて絶対に無理だ]と悟り神主っぽい人物に[すみませんもう少し開けられませんか?]と言ってみたが[何言っておるこれ以上開けたら邪鬼達が皆逃げ出すだろう大丈夫今のうちだったらここから抜け出せるからやれるだけやってみろ]と叱られ[はぁ?不条理な…]と心の中で突っ込んだのだが状況が状況な為神主の言う事を聞く事にし小さく開けられた穴からの脱出する事に成功した想像した依も痛み等は無くスルッとあっさり抜けられた事がとてつもなく不思議でキョトンとした顔しか出来ずにいると[さっさと向かうが良い時間は待って貰えんぞ]と言われてもあまりにも衝撃過ぎてすぐには動けなかった<簗瀬家>柩に入った史也が居る部屋には琴弥だけが残って居り絶えず線香を確認し横たわる史也の顔を見詰め微笑んでいる書斎では嘉崇が明日以降の仕事の内容整理と振り分け等をして忙しくしていた長男の煌世は机の前で何やら参考書の様な本に目を通しながらノートに書き写している一方一旦帰った親戚達は遠くに居る親戚達の日程調整をしていた余り史也に面識の無い親戚達の多くは欠席をしたかったのだが[質素な葬式になる出て来てほしい]と懇願され渋々了承せざるを得なかったそれから2日後全親戚を交えて通夜葬儀を済ませたのだが遠方の親戚達が居ても居なくても質素な物となり調整係の親戚達は文句ばかりを唱える事になったその2日間の琴弥は[まぁ其処ら辺の人達が盛り上がれば私は関係は無いわ]と思っていてやはり琴弥の方があっさりとしていた微かアナウンサーの声が聴こえ23年前の失踪事件について進展が有ったらしい23年前当時男子高校生だった子がアルバイトの講習先で忽然と姿を消したという物だ確か午後1時にアルバイト先で講習を行うはずだったのが電車の中で居眠りしていたのか何かで最寄りの駅には降りず遠く離れた百貨店がある駅周辺で時間を潰した後に午後2時前後位に最寄りの駅に着いてアルバイトの講習先の前で忽然と姿を消したっていう流れだった当時そこの店主さん達が物凄く叩かれ挙げ句果てには店を畳んで其々新しく細々と生活を送っている噂を何処かの風の便りで聞いた事があったその事件が進展した一体何が有ったのだろう?真犯人でも見付かったというのだろうか?それとも男子高校生本人が現れたのだろうか?と頭の中で探っている間に思わずテレビのリモコンに手を伸ばし音量を大きくしたのだがちょっと年期の入った物なのか次々と流れる映像に付いては行けず結局終盤の映像までに辿り着き(アナウンサーの声)[…当時の交際相手だったと思われる会社員の各務柚深香容疑者40歳元アルバイト従業員で現在は飲食店オーナーの葭葉杲很容疑者43歳元従業員で現在は自営業の入野浪籌鵺容疑者55歳の3人は当時高校2年生だった鳳月大惺さんが忽然と姿を消した3月上旬以前から鳳月さんの殺害計画を其々で考えていたらしく結託しての犯行だった事が一昨日判明し今朝7時58分頃から捜査員は逮捕状を持参し家宅捜査に踏み切ったもよう捜査関係者に依ると当時高校2年生だった鳳月大惺さんが忽然と姿を消した3月上旬以前から鳳月さんの殺害計画を其々で考えていたらしく結託しての犯行だった事が一昨日判明しましたそこから慎重に準備を始め事件内容など再び洗い直した結果この3人に間違いないと見て犯行時に使われたと思われる押収物等が見付かった為3人を逮捕し取り調べでは一部否認しているもようです]と言ってアナウンサーは次の原稿を読み勧めて行ってしまったタイミングで琴弥は画面を消したこれ以上聴くのがなんか嫌だったらしいそして未だに栗高裕典が逃走して2週間が経過していたもちろんあの特急の2号車には指紋が残っていて体液も採取されていった本当に栗高裕典という人間はまるで本物のスパイのように他人を欺き逃げ回っているこれがなにかのドラマであってどこかの政府かはたまた世界かのどちらかの正義の為に仕事をしているのならば素直に格好良いと思えるのだが決してそうではない唯の犯罪者いや最上級の凶悪犯なのだから世話無さ過ぎると物思いに簾琳が高い天井を見つめて深い溜め息を吐き部屋中にはラジオの音声が流れているそこへ階段の下階の方からだろうか住人の誰かが簾琳に対して声を掛けて来る[簾ちゃん今日買い物とか行ったりする?]と簾琳は顔を顰めドアを睨みつけた後ドアの前に立ち扉を開け直ぐ傍の階段の踊り場にある腰壁に近寄り声を掛けてきた人物の方に視線を落として顔の方を見たそこに居たのは尾髙彩葵で職業は掛け持ち派遣社員をしている今日も簾琳が見る限り仕事なのだろういつものように控えめなスーツを着こなしちょっと崩したようなメイクが綺麗に見える[とてもじゃないがここまで出来ないなぁ私]と簾琳は思いながら彩葵に[もうなにか買ってきて欲しかったら事前にお金を預けておいて下さいよあとメモ帳も]と言うと彩葵は[固い事は言わないでよちょっと前に思いついたんだから]とはにかんだ笑い顔で言われてしまっても簾琳の気持ち的には[いやいやそれあってでも事前にしてくれなくてはお互いに困るのでは]と心の中で彩葵を窘めてしまっていたそんな事も知らずなのか彩葵は[で買ってきてくれるの]とまだ悪びれる事も無く訊いてきたので簾琳は仕方が無さそうに彩葵の居る下段の玄関先まで降りて行き彩葵の目の前で手を差し出し[条件はメモ帳とお金]と言うと観念したように鞄から財布を取り出したがもう時間切れだったのか逃げるように外へ飛び出して行ってしまった[あっちょっと]と簾琳は言ったのだが時すでに遅しであっけに不意を突かれて膝から崩れ落ちた[あぁもう良いや適当に必需品らしき物を買って彩葵が帰ってきたら支払って貰おう]と呟きスクっと立ち上がり階段をトボトボと上段へと上り切り再び自分の部屋へと戻ってラジオの音声に耳を欹てたCMが入っていなかったら多分3時間45分位の番組は終わりでは早速と言わんばかりにコートを羽織り部屋を出たここの住人は簾琳を含め7人居るたまたま7人が入れる物件を見つけた飯岡荏罹が募集期間を決めてシェア出来る人物を募った結果湊谷怜歩 間宮朱夏 萩尾栞梨 尾髙彩葵 簸山陽沙菜となりそれなりの距離感を取りつつ暮らしている相関図そんな物は必要が無い簾琳自身の観点ではあるが自分自身が入れる隙など与えてはくれない程全員仲が良いのだつまりは自分はパシリか或いは避けられているんではないかと密かに思っているたとえもしもその事を知ってしまった6人は恐らくだが[そんな事は無いよ]と否定するだろう<交差点の雑踏音>自然と聞こえる交差点の雑踏音を聞きながら歩く街並みは五月蠅く映え眩しい[今日も暑いなぁ…]と呟き目的地であるアウトレットショッピングモールセンター揚羽橋店へと向い[来たぁ]と小声で言い中に入ったまずは書店で予約していたアンソロジー小説を買う[あの…勘解由っていう者なんですが予約していた小説置いていますか]と簾琳が訊ねると男性店員は直ぐ様予約専用棚を開き沢山の本の列から簾琳の名前を見付け[あぁ入荷していますよこちらで宜しかったですか]と男性店員が簾琳に小説本の表紙を見せ訊ねられ簾琳は[あっ…はい]と戸惑いながらも男性店員に対して返事をし5000円を財布から取り出しカルトンに置くと男性店員はにこやかに[お預かりします]と丁寧に言い自動レジに入れお釣りとレシートが出てきた後簾琳の前でお札を数えザラ錢も軽くだが数えて[こちらお釣りになりますお確かめ下さい]と言いカルトンに納めた簾琳はそのお釣りとレシートを手に取り財布に入れ予約した本と財布と一緒に専用バックに入れ[有難う御座いました]と男性店員の相手に聞こえるぐらいの小声で言い小さく会釈すると男性店員も[有難う御座いました]と言って作業を始めた次に斜め向かいの文房具店で備品を探し歩きレジ籠に入れていく1番多いのはやはりポストイット付箋とポストカードのようで絵柄は子供受けしそうな可愛らしく面白みも残したセンスであるそしてレジカウンターの女性店員が次々と商品をバーコードスキャンしていきレジ画面に金額が表示されていく[合計で3500円になります]と女性店員に言われ簾琳は4000円をカルトンに置くと直ぐに500円がカルトンの上に乗っていてその後に申し訳程度のようにレシートを挟められ簾琳は表情を少し曇らせたが[まぁ良い強ち間違えた事をしていないのだから]と自分に言い聞かせつつ女性店員に[有難う御座いました]と言い歩きながら[でもなぁ残念なんだよなぁ出し方が]と呟き1階までエスカレーターで乗って行くと大型スーパーマーケットが顔を覗かせてくれた全体を見渡しても沢山の人々でごった返している[さぁてと彩葵の日用品でも買うとしますか]と頭の中で呟き各コーナを見て歩くほぼ簾琳が選ぶ物は纏めてお得商品の方が多く災害時の備蓄としても役立つ程である[これで良し!なんとか終わったぁ]と言い少し大きな荷物を持ち3階までエレベーターで行く事にしたその時一緒に乗ってきた人物と目が合ったがお互いに見知った人物ではないので会釈程度はした後にこの2人は想像も付かぬそれこそ思わぬ形で再会いや顔合わせをする事になるがそれはまだまだ先が長い(エレベーターの到着音)俺が自殺して7日が経った先日近くの神宮の邪鬼に教えて貰った通りに滋賀や京都などを手当たり次第探し周り結局の所だが京都を選んでまったりと過ごしていたすると途端に身体全体力が抜けボーとした表情に変化したのが分かる位無気力になり吸い込まれるように川の近くまで行かされた俺は青ざめた表情を浮かべ[まさかこの川を渡れってか?冗談だろう]とうっすらとした意識がまだ残っているまま呟いたのだが言う事聞かそうな足がその川へ赴いてしまうやはり流れが早いでもまだ足をすくわれるっていうような早さでは無く緩やかって言った方が良さそうであるそれでもこれからどこかで流されるかもしれないと思うと心の準備が出来ないどれぐらい流されているんだろうか急に辺りは真っ暗になり一体どこに着いたのか全く分からない状況になったその時かなり遠くの方で誰かが[おぉーい客が来たぞぉー浅瀬に引き寄せろぉー]と言う声が聞こえ俺は[こんなに流れが早いのに引き寄せる事なんて出来ないだろう]と思い鼻で笑ってしまったしかしどうだろう急に方向転換をし始め本当に引き寄せられるように浅瀬に向かって行く感覚がしたのであるそして岸辺に辿り着くと全身が青で塗り潰された人型が居て[結構時間がかかりましたねもう大丈夫ですよ]と言って手を差し伸べた俺はその手を取り引き上げて貰え辺りを見渡して[ここは?]と訊ねると青で塗り潰された人型の人物は[ここですか?ここは案内所入り口ですよ]と言って軽く俺の手を引い行く俺は[一体どういう事なのか]と目を白黒させていると徐々に沢山の色とりどりの人型が右往左往と動き回りごった返している[ここでは多くの部署や課が有って其々案内しているんですよ]と青で塗り潰された人型に言われても[ふーん]としか返答出来ず1箇所1箇所の人通りを目で追ったすると[烽鷯院信士がここでの貴方の名前です]と誰かがそう告げたでも誰に対してなのか全く分からず俺は未だにキョロキョロと辺りを見渡しているのに気付いた青で塗り潰された人型に[貴方の事だよ]と肩を軽く叩かれ我に返り振り向くと額に大きな赤い痣が残った青紫で塗り潰された人型が立って居り上に掲げられたプレートには自害損失課と書かれていてその下を見下ろすと1体の額に大きな赤い痣が残った青紫で塗り潰された人型っていうよりも歪にガタガタと変形した物体と言った方が良いくらいに不気味でその場で何度も嘔吐を模様しそうだった[ようこそ自害損失課へこちらに必要事項をお書き願います]と言いサラッと机の上に全各地共通の区役所に置かれている処届出らしい用紙を置かれた俺は[必要事項って…]と呟き目を泳がせ深く息を吐くほぼほぼの内容が今後の黄泉返りについての事柄で俺的には黄泉返りなんて全く持って望んではいない所でまぁ例外な出来事が起きた場合なら考えなくもないがそんな事決して起きる訳ないと完全に思えたそれから適当に書き進め額に大きな赤い痣が残った青紫で塗り潰されたかなり歪過ぎる人型に渡すと[では承りましたこれからの30日余り色々と大変だとは思いますが地獄に立ち寄らない限りきっと来世は訪れますよ]と言われ俺は思わず顔を上げあまりにも驚いたせいで小さく驚いた声を出していた[えっ30日余りどういう事なんだえーと確か49日まであと42日もあるはずなのに30日って計算が合わないじゃないか]と言うと[それは現世と黄泉の中間地点では時間差が微妙にズレるんです]と言われても俺はピーンと来なかった[時間差って生じる物なのか]としかし額に大きな赤い痣が残った青紫で塗り潰されたかなり歪過ぎる人型はまだ話を続けるように[まぁ人によって早くなったり遅くなったりはするんですけど平等にそれぐらいです]と言われ納得せざるを得なかった