大音量の音楽と、けたたましいファンファーレの中で同じ作業を繰り返す。
この空間で聞こえるのは、目の前の癒しを与えてくれる機械の動作音だけ。
ひたすらコインを入れ、レバーを叩き、ボタンを押す。そんな作業を2時間以上繰り返している。
ちょうどお昼を過ぎた頃、タケシがやって来た。
『またお前さぼり?』
横に座り、財布から千円を取り出しながら言った。
カタカタとメダルが払い出され、彼も同じ作業に加わる。
タケシは、同じ大学の同じ学部で同じ部活の同級生。
『お前もさぼりじゃん。』
そう言うと席を立ち缶コーヒーを2本を買ってきた。
『サンキュー。おっ那智の台入ってるじゃん。』
煙草に火を付け、テンポ良く【777】を揃える。
≪35番台 ボーナスゲームスタート≫
アナウンスと共にファンファーレが鳴り響く。
周りが一斉に振り返り、全ての視線は那智に集まる。
この瞬間だけ、彼が微笑み、唯一満足できる。
『今日は調子いいぜ。』
23:00 2人は馴染みの居酒屋≪東雲≫でグラスを合せていた。
『那智 大丈夫か? 出席足りなくないか?』
『ん?計算しているからさ。お前こそ単位大丈夫かよ?点数取れてないだろ?』
『追試待ち。今度は大丈夫だよ。お前の丸秘ノートのおかげだよ。』
『そっか。それより明日どうするよ?今日の台追いかけるのか?』
『えっ?明日・・・。またサボり?俺は・・・考えておくよ。』
『じゃ8:45集合!作戦練ろうぜ!』
19歳の2人には充実した日々であった。