事の発端は2014年3月期の決算会見です。同社の豊田章男社長は、ようやく税金を払えるようになったという趣旨の説明を行い、この発言を共産党議員がネット上で取り上げたことから、一気に話が広がりました。同社が法人税を払っていなかったのというのは事実のようですが、問題はその理由です。
同社は2009年以降、法人税を払わなかった詳細な理由は明らかにしていませんが、大きく影響しているのは、2009年に出した約4400億円の赤字です。現在の法人税のルールでは、損失を出した場合には、最大で9年間、翌年以降の利益の80%までを損失額と相殺することができます(2009年当時は現在とは若干基準が異なっています)。しかし2010年以降、同社は2000億円、4000億円、2800億円と利益を出していますから、欠損の繰り越しだけでは、税金をゼロにすることはできません。
おそらく、研究開発費の控除や受取配当金の益金不算入など、いくつかの優遇税制をフル活用したと考えられます。しかし、業績が伸びてくるにつれ、その節税もできなくなり、今期から納税を開始したということでしょう。
確かにトヨタほどの企業が税金を払っていなかったと聞くと、少し腹立たしい気持ちになる人がいるかもしれません。しかし、法人税と個人の所得税や消費税は、その仕組みが違いますので、私たちの生活と直接比較することはあまり意味がありません。またトヨタは脱税をしているわけではなく、あくまで現行のルールにしたがった上での節税ですので、トヨタを批判するのは少々筋違いといってよいでしょう。
原則としてはそうなのですが、トヨタの場合には必ずしもあてはまらない部分があります。自動車業界に対しては、リーマンショック以降、業績立て直しのため、エコカー減税など1兆円を超す巨額の税金が投入されています。同社は世界的な競争力を持つ超優良企業ですが、国民の税金によって支えられているのも事実なのです。ルールを守って極限まで節税するのはまったく問題ない行為ですが、税金を払う水準まで業績が回復したことをむやみに喧伝するのは、一部の納税者の反発を買う可能性があると考えるべきでしょう。
現在、政府では法人減税が議論されていますが、税率を引き下げる代わりにこうした優遇措置を廃止しようという声も上がっています。しかし、優遇措置を受けている企業にとっては手放したくない利権ですから、これらの廃止にはかなりの抵抗が予想されます。法人税改革は、税率をいくらにするのかという問題よりも、こうした優遇措置がどれだけ廃止されるのかの方が、実は重要なテーマなのです。(The Capital Tribune Japan)
≪追加記事≫ 法人税ではない 酒税だけど、
税金対策と商品政策… 企業も生き残りを賭けて四苦八苦の図です。。
サッポロ:第三のビール「極ZERO」 発泡酒で再発売へ
サッポロビールは4日、低価格の「第3のビール」として販売していた「極ZERO(ゴクゼロ)」について、国税庁から「第3のビールではない可能性がある」と指摘を受けたため、5月の製造分で販売を中止すると発表した。製法を一部見直した上で、「第3のビール」より価格が高い「発泡酒」として7月15日に再発売する。
ビール会社が国税当局の指摘で商品の販売を中止し、再発売するのは異例。ビール系飲料は原料の麦芽比率などによって酒税が異なり、税額が高い順に、ビール▽発泡酒▽発泡酒に別のアルコール飲料を混ぜるなどした第3のビールとなっている。「極ZERO」は製法などに問題があった可能性があるが、サッポロは国税庁の指摘の詳しい内容は明らかにしていない。
ビールと似たような味わいを保ちつつ、製法や原料を工夫して酒税を低く抑え、低価格を実現したアルコール飲料。原材料に麦芽を使わず、トウモロコシなどを発酵させる製法もある。酒税額はビールの350ミリリットル当たり77円に対し、発泡酒は47円、第3のビールは28円。第3のビールは低価格を武器に出荷量を伸ばし、昨年はビール類全体の36.5%を占めた。
<サッポロ>ゴクゼロ中止116億円追加で懸念の経営面
毎日新聞 6月4日(水)21時46分配信
サッポロビールは、ヒット商品「極ZERO(ゴクゼロ)」の販売中止に追い込まれたことで、経営への影響が懸念される。「第3のビール」から「発泡酒」に切り替えて再発売するが、税率の適用区分の変更で116億円の追加納付の可能性があるうえ、再発売では価格が上がり、販売が落ち込む恐れもあるためだ。
「極ZERO」は2013年6月の発売後、12月末までに358万ケース(1ケースは大瓶20本換算)を販売。主力の「黒ラベル」(13年は1662万ケース)、「麦とホップ」(1342万ケース)、「エビス」(961万ケース)に次ぐ主力商品に育ちつつあった。少子高齢化や若者のアルコール離れなどでビール類市場全体が縮小する中、サッポロが13年のビール類販売で前年比0.4%増の5208万ケースを売り上げたのも、「極ZERO」の存在が大きい。
「極ZERO」は現在、小売店で350ミリリットル缶140円前後で売られている。しかし、税率が高い発泡酒として再発売すれば、20~30円の値上げは避けられない。発泡酒として再発売後の7~12月は、従来想定より2割程度減少すると見る。ただ5月まで好調だったため、年間目標の550万ケースは変更しない方針だ。しかし、発泡酒は価格が安い第3のビールに押され、市場は年々縮小しており、シナリオ通りに進むかは見通せない。
サッポロの持ち株会社、サッポロホールディングスの13年12月期連結決算は、最終(当期)損益が94億円の黒字だった。もし追加納付となれば、利益は一気に吹き飛んでしまう。サッポロビールの尾賀真城(おが・まさき)社長は4日、東京都内で開いた記者会見で「急な発売中止や再発売で消費者やお取引先にご迷惑をかけ、おわびします」と謝罪。経営への影響については「(業績の下方修正などが)決定すれば、説明したい」と述べるにとどめた。【神崎修一】