FRIDAYDIGITALより転載させて頂きました。
ジャニーズの落日についても触れてます。
どうぞ!
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【SMAP×SMAP公開処刑事件の裏側】ジャニーズが直面したSMAP解散という終わりの始まり
SMAPは「叩きつぶされた」
ジャニーズ事務所の落日から話を始めてみたい。
『ローマ帝国衰亡史』(ギボン)は、繁栄した古代ローマ帝国の滅亡へと至る歴史を記述した古典大作だ。
我が国にも『平家物語』がある。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理あらはす。
奢れるものも久からず、ただ春の夜の夢のごとし。
この世の栄華をきわめた巨大帝国が滅んでゆく物語に、なぜか人は強くひきつけられるものである。
するとジャニーズ事務所は、いつ落日を迎えたのか?
ジャニー喜多川の性加害問題が、海外メディアの報道を発端に広く世に知られたからだろうか? いや、それ以前に創業者のジャニーが、さらには姉のメリー喜多川が相次いで亡くなったからか? あるいはジャニーの意志を継いで副社長となった滝沢秀明が、事務所を退所したからだろうか?
いずれでもない、と思う。私の考えを伝えたい。
そう、ジャニーズ事務所が落日を迎えたのは、SMAPが解散したからだ。
ただの解散ではない。およそ信じられない形で無惨に解体した。さながら叩きつぶされたように見えたものである。
SMAPは偉大なアイドルグループだった。あれほど長いあいだトップ人気を保ったスタ―集団はいない。戦後最高のアイドルグループだった、と言って間違いないだろう。それが木っ端微塵に砕け散った。
2016年1月18日夜――。
フジテレビの『SMAP×SMAP』では急遽、冒頭に生中継で5人のメンバーが出演することになった。スポーツ紙などで報じられていた「解散」問題について彼ら自身が見解を表明するという。
それは異様な光景だった。濃紺のカーテンをバックに5人が並んで立つ。ネクタイに黒いスーツ姿だった。
◆SMAPを襲った「公開処刑」
センターに立つ木村拓哉が口火を切る。
「……このままだとSMAPが空中分解になりかねない状態だと思いましたので、今日は自分たち5人がしっかり顔をそろえて、皆さんに報告することが何よりも大切だと思いましたので、本当に勝手だったんですが、このような時間をいただきました」
堂々としているのは木村だけだった。続く4人のメンバーはみな沈痛な表情で「お騒がせしてしまった」「申し訳ありません」「これからもがんばっていきます」と繰り返し、深々と頭を下げる。
「最後に、これから自分たちは何があっても前を見て、ただ前を見て進みたいと思いますので、皆さん、よろしくお願いします」と木村が締めた。
まったく不可解な会見である。彼らはいったい何をどうして謝罪しているのか?
草彅剛の「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村くんが作ってくれて、今、僕らはここに立てています」という言葉がすべてを暗示していた。木村と他のメンバーは分裂している。4人は事務所を独立しようと画策し、結局、ジャニー喜多川に謝罪して、思いとどまったのだろう。しかし、それにしても……。
『SMAP×SMAP』は1996年から20年も続いている。月曜のゴールデンタイムの人気番組だ。歌があり、コントがある。ビストロ・スマップがある。多彩なゲストを迎えたショウタイムがある。軽快なトークがある。SMAPのホームタウンのような心楽しい場所で、まさかあんな惨めでむごたらしい彼らの姿を見せられることになろうとは。およそ信じ難い。
〈公開処刑〉――と、それは呼ばれた。
おそらくその時、そう、SMAPは「死んだ」のだ。
『SMAP×SMAP』の放送作家・鈴木おさむは、この日のことを小説に書いた(「文藝春秋」2023年1月号)。「20160118」と問題の日付をタイトルとするもの。しかし、掲載誌の目次には、こんな大見出しが躍っていた。
〈SMAPのいちばん長い日〉
これは『日本のいちばん長い日』の引用だろう。映画化された大宅壮一によるドキュメントだ。昭和20年8月15日を描いている。そう、つまり日本が太平洋戦争で敗戦した日のこと。すると〈SMAPのいちばん長い日〉に、彼らはいったい何に敗戦したのだろう?
◆ジャニーズを襲った「SMAPの呪い」
その後、同年8月14日に解散が正式発表され、年内いっぱいまでSMAPの活動は続けられた。しかし……。
ロックンロールのキング、エルビス・プレスリーが亡くなった時、ジョン・レノンがコメントしている。
「エルビスは軍隊に入った時、死んだよ」
反抗的な若者の代表だったプレスリーが、兵役に応じ、優等生的な軍人となったその時、〈象徴的に死んだ〉と言いたかったのだろう。
すると、あれほど自由で溌剌としていた、SMAPという輝かしい国民的アイドルグループは、2016年1月18日夜に同じく〈象徴的に死んだ〉ように見えるのだ。
ジャニーズ事務所は、SMAPという戦後日本最高の偉大なアイドルグループを生んだ。そうして無惨にも叩きつぶした。大スターの彼らに看板番組の生中継で大恥をかかせた。
多くの視聴者、いや、国民を驚かせ、SMAPのファンを絶望の淵に叩き落とした。
解散コンサートどころか、記者会見もやらない。メンバーらは口をつぐんだまま、SMAPは崩壊、空中分解してしまったのだ。
さて、その後、いったい何が起こったか?
簡潔に記してみよう。
2016年=SMAP、解散。
2018年=TOKIO、音楽活動休止(山口達也、脱退。2021年=長瀬智也、脱退)
2018年=タッキー&翼、解散。
2020年=錦織一清、植草一秀、退所。少年隊、(事実上)解散。
2020年=嵐、活動休止。
2021年=V6、解散。
なんということだろう。最古参の少年隊から、TOKIO、タッキー&翼、V6、そして嵐……と、ジャニーズ事務所の中核となるトップグループが次々と解散、あるいは活動休止へと追い込まれている。
そうだ。これはもう、SMAPの解散が一つの引き金となっているとしか思えない。栄華をきわめたジャニーズ帝国が一気に落日を迎えている。それこそは、あの偉大なグループを無惨にも叩きつぶしたことのむくいではないか?
明言しよう。今、ジャニーズ事務所は、SMAPの「呪い」によって崩壊しようとしているのである。
取材・文:中森明夫