昼過ぎなのに 薄暗い景色を見ながら倒したシートに身体を埋めて 17時30分に仕事を終える女房を彼女の働く店の 立体駐車場の屋上で待っている。仕事明けの1日は相変わらず 送迎を続けている。いつもは送り届けたあとはすぐに帰宅して仮眠を取るのだが本日は どうしても帰る気にならず もう3時間も
空の表情の移り行く様を目を開けたり閉じたりして見ている。

一度だけ窓を開けてみたけど 風が冷たすぎて すぐに閉めた。

ラジオを聴いていたけど馴染めない曲ばかりが続いたので ニュースばかりを選んでいる。

少しばかり 眠ってしまい 目を開ければ 先程まで頭上で俺を睨んでいた雲は何処か遠くの街で 君を 捜している。

ああ どんなに抵抗したところで 今は冬なんだ
間違いない。

(俺の中で)冬の始まりを告げる九州場所も序盤戦を終えて 多分に洩れずに関取衆も 客として乗せた。
降りる時は 期待通りに(ごっつぁんです)と云ってもらい少し嬉しくなった。

そんな事などを考えていたら もうリミットは近づいていた。
満たされない 不完全な1日が もうすっかり闇と同化した街と共に暮れていく。

視線をネオンから商業施設の入口に移したら 見馴れたシルエットが 小走りで 近づいてきた。
ドアを開けて (今日は寒かねえ!)屈託ない笑顔で 俺に語りかけてきた。

この笑顔を見る為だけに俺は生かされているのだと改めて そう思った。

娘たちの待つ 最高のおんぼろアパートへ さあ帰ろうか。

今年も あとわずかで 終わるけど 俺たちは 何一つ終わらないし また 何一つ変わる事も無い。

肉体的に衰えていくのは仕方ない。子供たちが その代わりに 逞しく成長してるんだからな。


(今日の夕食は 鍋で良かったかしら。 )
助手席から 嬉しいセリフが 流れてきた。


そして 後二時間に 仕事を控えて 二日酔いの 今を迎えている。
アルコール検知器大丈夫かしら。

さあ 薄くなりつつあるハゲ茶瓶を整えて 街へと繰り出すか。