雨上がりの朝 仕事を終えて帰宅すると 女房と娘たちが 風呂に行く準備を整えていた。

少しばかり眠りたいという欲望を除けば 断る理由は見つからないし それに今 (次の機会にしようぜ。)などと 云うものならば 三人のクレーマー相手に闘争開始は避けられないだろう。

同じ 賛成を表明するにしても 気持ちよくしたほうが こういった展開の時はリズムがかなり良くなるという事は心得ている。

(よし!早く車に乗りな!プロドライバーが 温泉まで送迎するぜ。)

似合わないネクタイを外して腕捲りをして 停めたばかりのエンジンを再始動させて 出発した。

(お客様。どちらまで参りますか?)
冗談めかして カシコマって行く先を聞くと
(決めてない。)とのこと。(えっ!嘘だろ?)
………。

こういった状況を打開するのもプロドライバーの腕の見せどころ。

睡魔を空手チョップでぶちかまして 那珂川方面の山奥目指してアクセルを踏み込んだ。記憶の片隅に温泉の看板が浮かんだというだけなのだが…
数回カーブをやり過ごすなどして 小一時間ほどがドライバーとしての役目となり 無事に温泉施設に到着したのが11時位だった。山奥だということもあり 肌寒い。
捲った腕を元に戻して 入り口をくぐると 自動発券機がある。金額を確認すると小学生より70円の(入湯税)表示が見えたので 家族四人 顔を見合せて (安かばい!よかとこに 来たね!)
などと 笑いながら中に入ると あれ? 受付があるぞ。後ろの壁には 事細かに料金設定表が貼ってある。あらら 一人1500円だと。

こりゃ まるで詐欺だね。巷では 色んな詐欺が紙面などを賑わせているけど 貧乏家族にとってこの設定は当に詐欺そのものだぜ…此処まで来て引き下がる訳には到底なれない。
娘たちは もう 風呂場の入り口を潜ってやがるし覚悟を決めて 温泉を満喫するとするか。

確かに 充実した設備で天然の温泉が贅沢に堪能できたと思う。

電気風呂の浴槽が とても気にいった。
一時間程 色んな浴槽を試して 畳敷きの休憩室で身体を横たえて 目を閉じたら 眠っていた。

トントン。
誰かが 肩を揺すっている。重たい瞼を 開けると娘の姿が瞳に映った。
大枚6千円が女房の財布の中から別れを告げて
流れていった。

どうやら 一時間位 眠っていたらしい。頭の中がスッキリしている。

さあ 我が家の街へと帰ろうか。

温泉での 入湯は結構スタミナを使ったのか それとも 翌日も休日という安心感が そうさせたのか。 我慢してたビールも呑まずに 帰宅するとまた すぐに眠った。

目が醒めたのは 今朝5時。すこぶる体調がいい。
公衆浴場には今まで抵抗があり 敬遠していた感じがあるが これから色んな浴場を探検したくなった1日となった。