思い出した。
何故、忘れていたんだろう。
あんなに優しかった僕の1番目のお母さんを。
僕は産まれてから2ヶ月でお母さんのところにやって来た。ペットショップという、色々な動物がいるところから。
だから猫のお母さんは覚えていない。ペットショップのこともあまり覚えてないんだけど、とっても不安だった。
でもすぐに、お母さんが僕を見つけて家に連れて帰ってくれたんだ。
ペットショップに慣れる時間もなく、また新しいところに来た。
でも連れて帰ってくれた人間は「これからずっと一緒に暮らすんだよ」と言って笑った。太陽の様な、明るくて眩しい笑顔だった。
この家には人間は一人しかいない。それが僕の初めての人間のお母さんだった。
僕はまだまだ赤ちゃんで、固いものは食べられなかったから、お母さんはいつもカリカリをお湯に浸して柔らかくして食べさせてくれた。
夜はお母さんが自分のお布団の中に入れて僕を暖めながら一緒に寝た。とっても暖かくて気持ちよくて、僕はすぐに寝てしまった。緊張とか不安とかいう気持ちで大変だったんだ。
それから僕とお母さんの2人っきりの毎日が始まった。それは実はあまり長い時間ではなかったけれど……。
いつもお母さんは僕を守ってくれて、美味しいご飯も食べさせてくれて、暖かいお母さんと一緒に寝る、そんな素敵な毎日だった。お母さんはいつも家にいて、ずっと僕と一緒にだった。お仕事は少しの畑だけ。でもその畑も庭にあったから、縁側から見ていられた。いつも2人で笑っていた。僕とお母さんの心はいつも同じだった。お母さんが笑うと僕も笑った。僕が元気のないときはお母さんは凄く心配していた。お母さんが少し悲しそうなときは、僕はずっとお母さんのそばにいた。心配していることが分かるとお母さんは「心配させてごめんねぇ。大丈夫だから、安心して」と笑った。太陽の様に。
あれはそんな時間が暫く経ったころ、突然にやってきた。お母さんが倒れたんだ。お母さんは入院をした方がいいと言われたみたいだけど、でも、お母さんは僕が一人にならないように、入院はしなかった。それからのお母さんは寝ていることが多くなった。僕は片時もお母さんの側を離れなかった。見張っていないとどこかに行ってしまいそうな気がした。
