溺愛 Deki Ai 〜Maya's eyes〜 | 夢の終わりに・・・

夢の終わりに・・・

哀しいほどの切なさとときめきを


Maya's eyes...


恋人になった速水さんがこんなに甘い人だとは思わなかった。


この前、風邪を拗らせた私を速水さんは自分の麻布のマンションに連れていって、ずっと看病してくれた。

「仕事は部屋でするから大丈夫だよ。」
と言って、ずっとそばについていてくれた。

熱が出て悪寒のする私の背中を夜中じゅう自分の身体で温めてくれた。


錠剤の薬を飲むのが苦手な私のために、水薬を処方してくれるよう頼んでくれたのも速水さん。
何で、錠剤を飲むの苦手なの知ってるのかな。

・・・速水さんがカミングアウトした。
昔、熱にうなされた私に口移しで薬を飲ませてくれたこと・・・。

「マヤのファーストキスは、あの時だよ」って。

「ごめんね・・・キミのファーストキスを奪って。
それをずっと秘密にしてて。」って。

昔は、その想い出だけで生きて行けるって、無理やり自分を納得させてたんだって、切なそうな目をした速水さん。

私もファーストキスの想い出が欲しいよって言ったら、速水は甘く微笑んで、
「いいよ、あげる。」
と、薬を口移しで飲ませてくれた。

「風邪感染っちゃう」
「俺が風邪ひいたら、今度はマヤが薬を飲ませてくれよ。」
って、悪戯っぽく笑う速水さん。


お粥も作ってくれて、野菜スープとかフルーツのゼリーとか、消化に良くて、栄養の高いものをいっぱい用意してくれた。
困ったのは、食べさせてあげるって、聞かなかったところ・・・。
私、恥ずかしくて、余計に熱が出ちゃったかも。


でも、とっても嬉しそうに笑ってくれる速水さんの笑顔が、何よりの良薬だった。
思ったよりも早く治ったのに、せっかく取った休みだから勿体無いよって、私はずっと病人役をさせられた。

俺も風邪ひいたって、朝になってもベッドから出ない速水さん。

「寒いから、マヤが温めて・・・」

って、私から離れない。


でも速水さんも疲れていたよね。
すうっと、眠ってしまった。
穏やかな寝息を立ててる。


時々、私の胸に頬を摺り寄せて、安心するみたいに微笑む速水さんは、どんなスイーツよりも甘くて、可愛いかった・・・


〜Fin〜